時は平成の19年。西暦2007年。
その年、音楽界に突如あらわれ、大ブームを巻き起こした、とある音楽ジャンルがあった。
その名も、『ボカロ』。
『VOCALOID(ボーカロイド)』と呼ばれる機械音声を合成し、歌を歌わせる、いわゆるパソコン打ち込み型音楽ソフトを用いて歌を歌わせる音楽ジャンルのことで、ボカロとはこのVOCALOIDの略称を含めた呼び名だ。
『初音ミク』と呼ばれるキャラクターを筆頭に、様々なキャラクター性をつけられ、『音楽』としてだけではなく、『キャラクター』という面からも人気を誇り、その人気は新元号『令和』を迎えた現在もなお、残り続けている。
そしてその枠は音楽だけにはとどまらず、小説に漫画、アニメや歌舞伎、と様々なサブカルチャーにおいても絶賛活躍中だ。
今回は、そんな平成の世で生まれたこの音楽ジャンルに乗せて、同じく平成の世にてその名を轟かせるようになった小説ジャンル、『ライトノベル』をいくつか紹介させて頂こうと思う。
平成の世において、音楽と小説という二つのジャンルで旋風を巻き起こした二大ジャンルの夢のようなコラボ。
ボカロやライトノベルを知っている人から知らない人まで。
ぜひとも今一度、この令和の年にて、平成二大旋風ジャンルに注目してほしい。
目次
黒うさP feat.初音ミク『千本桜』
千本桜 夜ニ紛レ 君が歌い僕は踊る
此処は宴 鋼の檻 さあ光線銃を撃ちまくれ(作詞:黒うさP)
ボカロと言えば、やはり真っ先に浮かぶのはこの曲。
黒うさP制作、『千本桜』。
2011年にリリースされて以降、現在も尚、ニコニコ動画のボカロ総合ランキングにて上位に入り続けてる一曲だ。
大正浪漫溢れる世界観を舞台とした楽曲でありつつ、その歌詞、ロックなメロディーは正しく平成のミュージックカルチャーだ。
小説・漫画・ミュージカル化もはたされており、ニコニコ動画主催の大型イベント『超会議』にても、『超歌舞伎』と呼ばれる歌舞伎ものとして、千本桜をモチーフにした話を中村獅童らと共に初音ミク自身も参加し披露している。
今後もボカロ界を代表する一曲としてその名を馳せ続けていくこと間違いなしの一曲だ。
千本桜×瘤久保慎司『錆喰いビスコ』
楽曲中の明記はないが、小説や舞台では世の平和を守る為『影憑』という敵と戦う物語が描かれている。
世界観は違うが、このラノベもまた大事なものを助ける為に戦う物語。
そこにかぶるものを感じ、この一冊を選択。
瘤久保慎司『錆喰いビスコ』のあらすじ
すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる“錆び風”の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ“錆喰い”を求め旅をしていた。美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構でできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線―。過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く。しかし、その先には邪悪県知事の奸計が―。第24回電撃小説大賞“銀賞”に輝いた、疾風怒涛の冒険譚!
(BOOKデータベースより引用)
すこっぷ feat.初音ミクsoft『アイロニ』
少し歩き疲れたんだ 少し歩き疲れたんだ
月並みの表現だけど人生とかいう長い道を
少し休みたいんだ 少し休みたいんだけど
時間は刻一刻残酷と 私を引っぱっていくんだ(作詞:すこっぷ)
初音ミクと一口に言っても、実際は様々な声の初音ミクが存在している。
初音ミクというソフトそのものに、実はいくつか種類があるのだ。定期的に新しい形のソフトを出しており、ボカロそのものが年々進化を遂げていたりするのである。
この曲は、その中でも『soft』と呼ばれるタイプを使った楽曲だ。
その名の通り、全体的に物腰が柔らかい声の初音ミクで、ゆったりとした曲調のものに似合うボイスのものとなっている。
柔らかな声で歌われる歌詞の内容は、生きることの苦しみ、悲しみについて。
主コメ(動画をアップした者からのコメントのこと)にも『上手に生きるのは難しい』との言葉があり、全体的にセンチメンタルな雰囲気のあるバラードソングだ。
MVも、可愛い絵柄でありながら、切なく情緒的なものとなっている。
アイロニ×時雨沢恵一『キノの旅 the Beautiful World』
短編連作であるキノの旅(一部例外あり)は、その短さの中に『人間』の魅力、残酷さ、といったものを凝縮させている作品だ。
そこに、人間の生き方について歌う曲を加えれば、よいスパイスになるだろうと思い、選択。
時雨沢恵一『キノの旅』のあらすじ
「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ―――短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。今までにない新感覚ノベルが登場!
(Amazonより引用)
*Luna feat.IA『僕らの夏はまた巡って』
「変わりたい自分がまだ君の中にいるのなら、
飛び出してみてよ、汗だくになって走ってみてよ」(作詞:*Luna)
近年のボカロ曲から一曲。
制作者は*Luna。ここ数年になって、ニコニコのランキングにてよく見かけるようになったボカロPだ。
今回紹介する曲は、2018年に殿堂入りした『8.32』と対になる曲と言われている。
MVは一枚絵で、背景は対曲のMVと同じものが使用されている。青い空には入道雲。それを写す地の空と同じ色をした水面、そこに佇む鳥居。
ただし、そこに描かれる人物は8.32の時とは違う。
8.32では少女が描かれていたが、こちらでは、白い猫と戯れる少年、それを見ている同一人物と思われる青年が描かれている。
爽やかな夏の風のようなメロディー。けれど歌われる歌詞の内容は、どこか切なく、胸を締め付けられるようなものがある。
それでも、最後は背中を押されて前向きになれる、まるで一つの物語を見せつけられているような一曲だ。
僕らの夏はまた巡って×赤城大空『二度めの夏、二度と会えない君』
同じ『夏』を題材にした作品として選択。
タイムリープという『巡り』を体験し、大事なもの為に奮闘する主人公の姿に応援したくなると同時に切なくなる。
この曲を合わせるのはもうこの一冊しかないと思い、選択した。
赤城大空『二度めの夏、二度と会えない君』のあらすじ
突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし…そして、燐は死んだ。俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔―決して伝えてはいけなかった言葉。俺があんなことを言いさえしなければ、きっと、燐は最後まで笑顔でいられたのに…。―二度めの夏。タイムリープ。俺はもう一度燐と出会う。あの眩しい笑顔に再び。ひと夏がくれた、この奇跡のなかで、俺は自分に嘘をつこう。彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますように…
(BOOKデータベースより引用)
骨太な記事で読み応えがあった。
カラオケで友達がよく、ボーカロイドを歌う。けれど俺はボーカロイドをぜんぜん知らないので、このようなちょっとした紹介はうれしい。
文章も読みやすい。
気になって過去の記事を見ていたら、三浦しをん著の「風が強く吹いている」のレビューがあって、うれしくなった。
暇なときや時間の空いたときに、勝哉さんの記事を読むのはいいなと思えた。
ご感想をくださり、ありがとうございます!
ボカロは私が音楽にハマるきっかけをくれたジャンルですので、この記事にてそのようなお言葉を頂けてとても嬉しく思います!
他の記事にも目を向けてくださり、感謝の言葉しかありません。
もしこれを機に、ボカロという音楽ジャンルにご興味を持って頂けたならば、これ以上のことはありません。