バンド、吹奏楽、ジャズ、クラシック……私たちの人生は音楽に彩られているといっても過言ではない。
街を歩いている時やカフェに入った時、あるいはドライブ中だってラジオからは素敵な曲が流れてくる。
音楽と生活が切り離せず結び付いた世界において、キャラクター達はどんな思いで自分の心を歌い奏でているのだろうか。
今回は音楽をテーマにした漫画をメジャーマイナー問わず15本紹介したい。
目次
- 『ピアノの森』【捨てられたピアノから生まれる奇跡】
- 『青のオーケストラ』【シンフォニックオーケストラ部の青春群像】
- 『少年ノート』【変わっていくハーモニー】
- 『この音とまれ!』【箏曲部に集え!】
- 『ぼっち・ざ・ろっく!』【ぼっちだっていいじゃない】
- 『四月は君の嘘』【珠玉のボーイミーツガール】
- 『水晶の響』【実在のヴァイオリニストがモデル】
- 『四弦のエレジー』【音楽と幻想の融合】
- 『天にひびき』【指揮者の卵が司る】
- 『ハレルヤオーバードライブ!』【きっかけは失恋?】
- 『ロッキンユ-!!!』【ロック×陰キャの化学反応】
- 『マエストロ』【偉大にして奇矯な巨匠】
- 『左手のための二重奏』【不良少年の逆転劇】
- 『覆面系ノイズ』【覆面の向こうで叫ぶ、本当の気持ち】
- 『デイズ・オン・フェス』【一体化する連帯感】
- おわりに
『ピアノの森』【捨てられたピアノから生まれる奇跡】
一色まことによる青年漫画。アニメ化もされている。
森の端と呼ばれる治安の悪い歓楽街で生まれ育った小学生・一ノ瀬海(カイ)が、森に捨てられたピアノとの出会いによって音楽の才能に目覚め、徐々に頭角を現していく姿を描く。
偏見や逆境を跳ね返し逞しく生きるカイが、様々なライバルや師との出会いや別れをくり返し、一流のピアニストとして開花する姿が美しい。
森の中のピアノを一心不乱に弾く演奏シーンも非常に幻想的で目が離せない。
ピアノを巡る群像劇としても読みごたえたっぷりだ。
『青のオーケストラ』【シンフォニックオーケストラ部の青春群像】
プロのヴァイオリニストを父に持ち、ヴァイオリンの天才として脚光を浴びていた主人公・青野一。
両親の離婚をきっかけにヴァイオリンから離れた彼を再び音楽の道に引き戻したのは、1人の少女との出会いだった……。
ある高校のシンフォニックオーケストラ部を舞台にした青春群像劇で、信頼し合える仲間と織り成す音楽の魅力がぎゅっと詰まっている。
主人公と切磋琢磨するライバルの関係も爽やかで、こんな青春送りたかった……と悶えた。
恋と友情と音楽と、あの頃の気持ちを追体験できる漫画だ。
『少年ノート』【変わっていくハーモニー】
天使の声と称されるボーイソプラノの持ち主、蒼井由多香。
彼の入部によって中学の合唱部に波乱が巻き起こり……。
感受性が豊かで時に繊細すぎる由多香と、良くも悪くも彼に刺激を受け変化していく、部活の面々の心理描写が見所。
互いに違うからこそ認め合える、尊重し合える関係が生み出す極上のハーモニーにはうっとりする。
唄うことが大好きな気持ちがストレートに伝わってくる、天真爛漫な由多香の表情にも注目だ。
『この音とまれ!』【箏曲部に集え!】
ある高校の箏曲部(そうきょくぶ)。
部室は不良の巣窟と化しており、廃部も秒読みとされたそこへ入部してきたのは、問題児の久遠愛をはじめとする個性的な面々だった。
ぱっと見不良のイケメンが、実は祖父の起ち上げた箏曲部を立て直す為に入部してきた……というはじまりから胸熱。
他の部員もそれぞれ問題やコンプレックスを抱えており、最初はギスギス不協和音を奏でていたのが、衝突を繰り返して理解を深め合い、美しいハーモニーを紡ぎ出す部活ものの王道展開がたまらない。
『ぼっち・ざ・ろっく!』【ぼっちだっていいじゃない】
はまじあきによる漫画。アニメ化も決定した人気作。
主人公はぼっちちゃんこと後藤ひとり。
脱ぼっちを目標にギターを練習し文化祭デビューを企てていたものの、気付けば中学三年間が終わっておりあ然。
ある日、公園でたそがれていたひとりは、伊地知虹夏が率いる結束バンドのピンチヒッターとして勧誘されて……。
鉄板ぼっちがガールズバンドに入り、個性的なメンバーとのコミュニケーションに右往左往しながらも、ロック魂に目覚めていく。
萌え萌え美少女たちがキャッキャッウフフするユルい雰囲気の四コマと見せかけて、ステージに上がる時の緊張や弾ける楽しさ、陰キャが輝くロックの魅力をきちんと押さえているのがポイント。
『四月は君の嘘』【珠玉のボーイミーツガール】
幼少時より母の特訓に耐え続け、ヒューマンメトロノームと呼ばれるほど正確を期した演奏が称賛された天才少年・有馬公生は、母の死後ピアノが弾けなくなってしまった。
しかし、ある春の日にヴァイオリニスト・宮園かをりと出会った事で、公生の運命は再び動きだす。
珠玉のボーイミーツガールにして、ピアノとヴァイオリンのアンサンブルを描いた青春ストーリー。
母の死にトラウマを抱えた公生が、かをりとの演奏を通して再生していく姿が感動的だ。
底抜けにポジティブな言動で公生を引っ張っていくかをり自身にも大きな秘密があり、それがタイトルに関係している。
『水晶の響』【実在のヴァイオリニストがモデル】
実在のヴァイオリニスト、式町水晶をモデルにした漫画。
脳性まひの式町水晶は特別支援学級で耳の不自由な少年、なっちゃんと出会い友達になる。
彼にバイオリンの演奏を聴かせたい水晶は一生懸命腕を磨くのだが……。
言葉よりもなお雄弁なヴァイオリンの響きに乗せて思いを届けんとする水晶の純粋さと、それにこたえて生き生きとダンスを披露する、なっちゃんの友情に涙。
障害を抱えながら生きる上で、コミュニケーションツールとしての音楽がどれほど支えになるか考えさせられる。
『四弦のエレジー』【音楽と幻想の融合】
19世紀末ドイツ。
音楽界の巨匠を自認する義父ユリウス・ブロイアーのもとで抑圧されていたヴァイオリニスト・エンリコは、彼の実子にして自らの義弟にあたるアリョーシャと自由を求めて逃げ出すのだが……。
音楽が視覚的な映像として見える特殊能力を持ったアリョーシャと、エンリコの旅路がロマンチック。
エンリコの激情とリンクした演奏はアリョーシャの目に天使や花、はびこる茨などといったふうにイメージ化されて見え、豊饒な想像力と結び付くアカデミックな表現力にうっとりする。
彼らを巻き込む過酷な運命と美しい兄弟愛に涙してほしい。
『天にひびき』【指揮者の卵が司る】
やまむらはじめによる漫画。
ヴァイオリンを習いながらも理想と現実の壁に衝突する久住秋央と、若くして指揮の才能を開花させた曽成ひびきを中心に、音大生たちの青春を描く。
オーケストラのハーモニーを司る指揮者の重要性に焦点をあてた話で、自分の音を掴むために無音の空間で瞑想するなど、奏者とは一線を画すひびきの特訓の仕方が面白い。
突出した同年代の才能に圧倒される若者の苦悩も掘り下げており、ひりひりするような熱を感じた。
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