血沸き胸躍る大河ドラマは好きだろうか?
事実は小説より奇なり。
波乱万丈のストーリー展開が醍醐味の歴史ものには、不屈の闘志でその時代を生き抜き、あるいは礎として散っていた人々の、けっして古びない情熱が凝縮されている。
今回はそんなおすすめ歴史漫画30選をジャンルごとのランキング形式でご紹介!
目次
初心者におすすめの歴史漫画3選
歴史好きな漫画初心者も、漫画好きな歴史初心者にもおすすめする王道中の王道、まずはこれから読み始めるべき歴史漫画を3つ紹介する。
1位『無限の住人』
江戸幕府からも追われる危険な剣客集団、逸刀流に両親を殺された少女凛は、不老不死の肉体を持つ百人切り、万次に用心棒を依頼する。かくして万次・凛、逸刀流、幕府の三つ巴の戦いが繰り広げられる。
2019年にアニメ化された他、木村拓哉主演で実写映画化もされている本作。
何種類もの武器と不老不死の肉体を駆使する戦いを見せる万次は、時に脳や心臓を犠牲にしてでも相手を倒す。が、そんな彼よりキャラが立っているのが敵の剣士達だ。
個性的すぎる出で立ちにまともではない武器を使うキャラクター同士が繰り広げる戦闘シーンは、もはや超能力バトル物と言っても良い程で、作者の高い画力も相まって、迫力は圧巻の一言。
そんな剣士達が多数登場し、敵・味方それぞれの思惑が交錯するストーリーは、中盤以降一気に加速し完結まで怒涛の展開を見せる。
2位『封神演義』
中国四大奇書の一つ『封神演義』に、大胆な解釈と独自の世界観をプラスした藤崎竜の長編歴史漫画。紀元前11世紀、中国古代に起きた殷周革命の裏で進む仙人同士の戦いの様子を描いている。
2度もアニメ化されている本作のキャラクターは、主人公の太公望、楊戩や哪吒といった彼の仲間たち、敵である妲己・聞仲、趙公明など、皆個性的で魅力的。
そんな彼らの熱いバトルは、各々が持つ超兵器”宝具”のチートっぷりと藤崎竜のデザインセンスも相まって今まで見たことも無いレベルで独創性が詰まっている。
しかし、この漫画の本当の魅力はそのストーリーにある。
1巻の最初から丁寧に張り巡らされた伏線とその回収、終盤で明らかになる真の結末は、初見で予想できる人はゼロであると確信をもって言える程で、原作を知っていれば知っている程衝撃を受けることうけあいだ。
3位『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』
古代より受け継がれる最強の格闘術「陸奥圓明流」歴代の伝承者達と、宮本武蔵や源義経、果てはワイヤットアープといった歴史的人物との出会いや友情、戦いを通して、彼らの生き様、そしてその裏で活躍する陸奥圓明流の姿を描く。
「宮本武蔵編」「坂本龍馬・新選組編」「柳生十兵衛編」がアニメ化されている本作は、彼ら歴史的偉人達と歴代陸奥達の活躍を史実へ落とし込むのが見事。
歴史的なあの事件、実はその裏で活躍していた陸奥達、そして彼らが圧倒的な強さで無双する、という構図はどの話も共通なのだが、あの事件、実は本当にこうだったんじゃ、、、、と思えてしまう程、歴史考証・考察が専門家もびっくりなレベルで行われている。
しかしこの漫画の真の主人公は、彼ら陸奥では無い。
各話で好敵手として出てくる偉人達は、人としての魅力と実力に溢れており、読んだ後は彼らのファンになること間違いなし。
漫画的にも歴史的転換点となる信長編と、「無双力士」雷電為右衛門編は必読!
超能力バトル歴史漫画2選
史実?歴史考証?そんなもんよりド派手に戦おうぜ!歴史を下敷きにした超人たち同士のバトルを描いた漫画を2つ紹介する。
1位『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』
山田風太郎原作、せがわまさきによる漫画。アニメ化もされた。
慶長19年4月、徳川家康に呼び出された甲賀・伊賀両派の首領は、徳川家第3代将軍となる後継者を竹千代と国千代どちらにするか、忍者の対決によって決めると告げられる。これにより因縁の戦いの火蓋が切って落とされた。
いずれ劣らぬ超人ぞろいの伊賀と甲賀、奇想天外な忍法バトルにテンションが上がる。
相思相愛の婚約者同士でありながら、家とお上の事情によって引き裂かれた悲劇の恋人たち、弦之介と朧の最後の選択に涙した読者も多そうだ。
2位『龍狼伝』
現代の中学生・士郎が三国志時代へタイムスリップ。「竜の子」と呼ばれ、劉備軍の一員として曹操軍と戦いながら、次第に武人としての強さに目覚めていく。
当初は軍師として劉備軍を支えていた主人公が、段々と力を身に付け、仙人の持つ気のコントロールや念といった概念が出てきた辺りから雲行きが怪しくなり始め、次第に三国志を舞台にした超人バトル物へとシフトチェンジ。
それ以降、超人化した実在の人物やオリジナルキャラクターとの能力バトルを繰り広げ、スーパーサイヤ人もびっくりな人知を超えたスーパーパワー同士がぶつかり合う様になると、もはや三国志はどこへ、、、というくらい大幅に路線が変わってしまった本作。
それでも不思議な魅力で20年以上連載が続いている人気作だ。
三国志が好きで、つまらない歴史より荒唐無稽なフィクションを楽しみたい方にオススメの劇薬である。
リアル寄りバトル歴史漫画3選
歴史上のあの人物が戦っているところ、見たくない?史実にエンタメをプラス!最高に燃えるバトル物歴史漫画を3つ紹介。
1位『キングダム』
原泰久による漫画。実写映画、及びアニメもヒットした。紀元前3世紀の中国、覇権を競って国々が衝突する戦乱の世を舞台に、戦災孤児の奴隷である信の成り上がりを描く。
主人公・信の断じて不正を許さない一本気な性格と篤い男気、のちの始皇帝となる政との友情が感動的。
軍の万勢が騎馬を駆り、火花散る剣戟をくり広げる戦闘シーンは圧巻。
敵味方問わずキャラの立ちまくった武将の魅力も底知れず、読むほどに感情移入が捗る。
2位『蒼天航路』
三国志の時代、魏の基礎を築いた曹操を主人公に、彼の子供時代から老年期までを描いた曹操一代記。大仰なセリフ廻しと、劇画調の作画で魅せる武将同士の信念・哲学のぶつかり合いは必見。
2009年にアニメ化もされている本作だが、漫画版を見るとそのド迫力の作画こそが本作最大の魅力であるとハッキリわかる。
コマに収まりきらない程ダイナミックに動き回るキャラクター、圧倒的な背景画の数々を見せられると、全編クライマックスの様な本作こそが間違いなく劇画漫画の極致と断言出来る。
そして本作は戦場で武将同士が戦っている時も、文官が城で業務にあたっている時も、絶えず己の信念・哲学を口にし、それを相手の哲学と戦わせている。
漫画のどこを切り取っても名場面と言っても過言ではない、三国志物の超名作だ。
3位『ハーン ‐草と鉄と羊‐』
古来より日本にある都市伝説、「源義経=チンギスハーン説」をベースに、人類史上最大の領土を得た偉人、チンギスハーンこと源義経のユーラシア大陸を股にかけた活躍を描く。
チンギスハーンの史実は、ユーラシア大陸全土を巻き込んだ大変スケールの大きな話なのだが、こちらはむしろ主人公テムジン(義経)を中心に据えて、少人数の人間たちによる人間模様を丁寧に描いているので、魅力的なキャラクター同士の掛け合いを楽しみたい人にオススメの一作だ。
戦闘描写も迫力があり、引き込まれる。
チンギスハーン=義経説はいくら何でもモンゴルの人々に失礼過ぎるだろ、と思う方も一度読んでみると、また違った印象を持つはず。
ギャク満載、笑える歴史漫画2選
歴史の授業はつまらないけど、そこで習ってきた人々がつまらないとは限らない。最高に笑える歴史漫画と言えばこちらの2作。
1位『ゴールデンカムイ』
野田サトルによる漫画。アニメ化もされている。明治末期の北海道及び樺太を舞台に、アイヌが隠した莫大な金塊を追い、錯綜する人々を描く。
当時の北海道周辺の情勢を押さえた読みごたえばっちりの歴史ものでありながら、B級グルメ要素や下ネタギャグもカバーしているのが高得点。
主人公の杉元や顔芸が愉快なアシリパをはじめ、出てくるキャラが皆変態的ともいえる強烈な個性を持ち、それぞれの譲れない信念から埋蔵金を手に入れようと奔走する姿にひきこまれた。

2位『へうげもの』
実在の戦国武将、古田織部を主人公に、「茶の湯」と「物欲」に焦点をあてた歴史長編ギャグ漫画。武士としての成功と趣味の間に葛藤する姿をコミカルに描く。
2011年にアニメ化もされている本作を読むと、「茶の湯」という文化的な側面から描く戦国時代は、我々が知っているものとはまた違った魅力に詰まった時代だったのだろうな、と思える。
千利休、豊臣秀吉、徳川家康ら偉人達も魅力的なのだが、本作において圧倒的な存在感を放つのが、主人公織部の君主、織田信長だ。
芸術を好み、新しい物を取り入れ、文化的な教養や素養も持っていた信長は、我々が知る天下人まであと一歩まで行った戦国大名だけではない、文化人としても魅力に溢れた人物だったのだと、改めて偉大さを思い知らされる。
そんな信長や千利休、家康や秀吉といった偉人達と主人公との絡みも大きな見どころだ。
ヨーロッパを舞台にした歴史漫画5選
華やかなヨーロッパの歴史。文化・芸術から血で血を洗う陰謀劇まで、歴史を彩ってきたヨーロッパ史を舞台にした漫画と言えばこちらの5作。
1位『アルテ』
大久保圭による漫画。アニメ化もしている。16世紀初頭にあたるルネサンス後期。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなどの巨匠の記憶も新しい芸術の都フィレンツェに、絵を描くことが大好きな少女・アルテが生を受ける。貧乏貴族の子女であるアルテは政略結婚を強制されるものの、画家になる夢を諦めきれず逃げ出すのだった……。
実在の女流画家をモデルにした歴史ロマン。
女性芸術家への風当たりが強かった時代、心ない偏見にさらされながらも絵画への情熱を失わず、ひたすらに描き続けて夢を叶えたアルテの姿に元気を分けてもらえる。
2位『イノサン』
18世紀、フランス国王ルイ16世の首を刎ねた実在の死刑執行人、シャルル・アンリ・サンソンとその妹マリー・ジョセフを主人公に、時代に翻弄されていくフランスの旧体制の人々を描く。
圧倒的な画力で描く18世紀フランスの描写は、さながら絵画の様な美しさ。
処刑人の話なので拷問や処刑、解剖シーンも当然出てくるが、グロテスクな描写すらも美しい。
純粋な性格から、処刑人の一族として生まれた運命に苦悩するシャルルと、積極的に処刑執行に取り組むマリーの兄妹の対比、
そして彼らとルイ16世、マリー・アントワネットと言ったフランス革命に関わる人物達との絡みも見どころで、人間心理を独特な比喩表現で描くストーリー展開に引き込まれる。
3位『ベルサイユのばら』
池田理代子による漫画。ベルばらの愛称で今に至るまで親しまれる傑作。
フランス革命前から革命前期のベルサイユを舞台に、貴族の跡取りとして男装を余儀なくされた麗人オスカルと、悲劇の王妃マリー・アントワネットの人生を描く。
元祖男装の麗人、オスカルの凛々しさにうっとり。彼女を取り巻くドラマチックな恋模様にときめいた読者も多いのでは?
華やかなドレスで着飾った貴族が舞い踊る宮廷劇として楽しめる一方、貧困に喘ぐ庶民の暮らしもまざまざと描かれており、やがて革命に至る当時のフランスの状況がよくわかる。
4位『7人のシェイクスピア』
ハロルド作石による漫画。1600年のイギリス・ロンドンを舞台に、実在の劇作家シェイクスピアの謎に迫る。
7人のシェイクスピアとタイトルにもある通り、激動の運命に翻弄される人々が結集する、群像劇の側面が魅力をいや増す。
当時イギリスで表面化していた宗教間の対立も余さず描いており、物語に幅を持たせている。
貧困や暴力、迫害に負けじと底辺で生きてきた人々の逆転劇としても痛快な面白さ。
5位『薔薇王の葬列』
イギリスの薔薇戦争をテーマにした菅野文による漫画。アニメ化もしている。
何世代にもわたって続く白薔薇ヨーク家と赤薔薇ランカスター家の王位争奪戦戦争の中、両性具有の秘密を生まれ持った主人公・リチャード三世の苦悩を描く。
主人公のリチャードを両性具有にした、奇抜な設定が見所。
男性と女性、どちらでもありどちらでもないが故の孤独を抱えたリチャードの時に狂気さえ仄めかす複雑なキャラクター性と、その秘密がのちに生み出す悲劇に魅了される。
激動のヨーロッパ戦争を描いた漫画5選
広大なヨーロッパ大陸は、いつでもどこでも誰とでも、絶え間ない戦いを続けている。そんなスケールの大きなヨーロッパ戦争を描いた漫画といえばこちらの5作。
1位『ヴィンランド・サガ』
幸村誠による漫画。アニメ化もしている。11世紀初頭の北ヨーロッパ及びその周辺を舞台に、私掠船を駆って商人から略奪し、傭兵として戦争にも参加した海の男たち、ヴァイキングの生き様を描く漫画。
ヴァイキングの首領に父を殺された少年・トルフィンの復讐劇であり、彼の成長と葛藤が大きな見所。
トルフィンの父の仇にして育ての親、さらには戦いの師匠でもあるアシェラッドの、アンチヒーローを地でいく渋い魅力にも注目。
2位『ヒストリエ』
紀元前4世紀、ヨーロッパ・アフリカ・アジアにわたる大帝国を作り上げたアレクサンドロス大王の書記官、エウメネスの波乱に満ちた生涯を描く。
主人公エウメネスの転落と成り上がり人生がとにかく面白い。
父の死をきっかけに一度は奴隷に落とされても、持ち前の頭の良さと知識を駆使し、出会った人々に認められ、アレクサンドロス大王の書記官として優れた手腕を発揮していく様は、一種の成り上がりストーリーの様でもあり、エウメネスの魅力的な人物描写と相まってカタルシスを感じずにはいられない。
丁寧に書き込まれたコマの隅々まで張り巡らされた伏線の数々は、何度読んでも新しい発見があり、いくら読んでも読み尽くす事の出来ない歴史書の様な唯一無二の漫画だ。
3位『NeuN』
ナチスによりひそかに作られた、ヒトラーのDNAを受け継ぐ13人の子供達。彼らはドイツ各地に預けられ、何も知らないまま育てられていた。
何者かによって抹殺命令が下った12名、その9番目、ノインは護衛であるテオに守られながら、ナチス親衛隊からの逃亡劇を繰り広げる。
ナチス政権下のドイツで繰り広げられる、シリアスで緊迫した逃亡劇、そして現れる最強最悪の追跡者、徐々に明らかになっていく13人の子供たちの能力。
なぜ12人に抹殺命令が下されたのか、それを下したのは誰なのか、そして、主人公ノインはどうなってしまうのか。
戦時中の荒廃した世界観にマッチした作画と重厚なストーリー展開は読みごたえたっぷり。
4位『イサック』
17世紀、神聖ローマ帝国を舞台に、プロテスタント・カトリックが血で血を洗う激戦を繰り広げた30年戦争、その戦いに、火縄銃を片手に傭兵として参加した1人の東洋人、名はイサック。目的の男を追い、遠くヨーロッパまで来た男の戦いの物語。
フィクションを織り交ぜながら描く30年戦争、そこで活躍するのは鎧兜も日本式な、火縄銃を持った日本人だ。
まずその絵に引き込まれ、次いでストーリーに魅了される。
馴染みの薄いヨーロッパの戦いを描きながら、これ程引き込まれる話が未だかつてあっただろうか。
戦況を一発の狙撃で激変させてしまうイサックの活躍は見ていて爽快で、「火縄銃ってかっこいい!」と思わず唸ってしまうほど。
イサックの追う因縁の男、ロレンツォの目的は何なのか?
ヨーロッパの戦争の勝敗を左右する2人の日本人の激突は必見!
5位『狼の口』
久慈光久による漫画。14世紀初頭アルプス、ハプスブルク家によって築かれたザンクト・ゴットハルト峠の砦、通称「狼の口(ヴォルフスムント)」では、厳しい検閲にもかかわらず密行者が後を絶たなかった。
狼の口の代表者ヴォルフラムは、捕まえた密行者やレジスタンスに見せしめとして様々な拷問を加えていく。
真性のサディストであるヴォルフラムと、彼の圧政に抗い立ち上がる、レジスタンスの人々の戦いが熱い。
ヴォルフラムが嬉々として執行する拷問や処刑はトラウマになりそうなグロさで、引き裂かれる家族や恋人たちの慟哭に胸に痛む。
日本の歴史を楽しむ歴史漫画2選
島国故に他国から影響をあまり受けず進化してきた日本。世界でも独特な日本の歴史を合描いた漫画といえばこちらの2作。
1位『陰陽師』
夢枕獏の小説『陰陽師』が原作の岡野玲子の漫画。
平安時代に実在したとされる陰陽師・安倍晴明が、京の都を騒がす様々な怪異を渡り合い、調伏していく姿を描く。
妖怪のおどろおどろしさと清明の儚げな美しさ、清濁を両立する美しい絵柄に注目。
清明の相棒である博雅の人徳も読後感をよくしている。
雅やかな平安時代の雰囲気とともに、貴族の蹴落とし合いが日常化し、陰謀渦巻く宮廷劇としても楽しめた。
2位『月明星稀 – さよなら新選組』
新選組の鬼の副長こと土方俊三を主人公に、新選組結成前の若き日から第一次長州征討までを描く。
作者である盛田賢司はそれまでの作品でも陰のあるストーリー展開が多く、悲惨で儚いラストを迎えるキャラクター描写が多かった。
本作においても新選組の持つ強さの裏の儚さや、ギリギリのバランスで成り立っていた隊内の軋轢・人間模様の部分を強調し、華々しい活躍の裏で、確実に忍び寄っている破滅的な未来を暗示させながらストーリーは進む。
そんな破滅に向かう隊士同士の絆は、滅びる運命に共に立ち向かう者同士にしかこれ程の絆は生まれないのでは、と思える程固く結ばれており、だからこそ切なく心に残る。
影武者の活躍を描いた歴史漫画2選
大切な人の為、国の為、時に身代わりとして、時に有力者の代わりに権力を振るう。影武者の活躍が楽しめる漫画はこちらの2作。
1位『王国の子』
びっけによる漫画。場末の芝居小屋で役者をしていた少年・ロバートは、王位継承権を有する王女・エリザベスの影武者としてスカウトされ宮廷に招かれるものの、そこは貴族の権謀術数が渦巻く伏魔殿だった。
ロバートは生き別れた弟との再会を誓い、エリザベスの協力を得て戦いに挑むのだが……。
架空の王国が舞台という建前だが、王族の名前をヘンリー8世の周辺になぞらえている事からわかるとおり、その時代を下敷きにしていると見ていい。
気高く優しいエリザベスと意志の強いロバート、主従をこえたバディシップから目を離せない。
2位『レイリ』
武田軍が織田・徳川軍に惨敗した長篠の戦いから4年後、百姓の子、少女レイリはひょんな事から武田勝頼の子・信勝の影武者となる。滅びゆく運命にある武田家において、奔走する少女の物語。
主人公のレイリは、「武士道とは死ぬ事と見つけたり候」を体現した様な存在。
剣も強くて頭も切れる天才児だが、人を殺すことに躊躇無く、恩人の為に戦場で命を賭けて戦って、最後は戦死する事を望んでいる“死にたがり”だ。
そんな彼女が影武者として仕える信勝は、信長に匹敵する才能と称される天才児で、レイリと信勝、二人の天才が、圧倒的戦力の織田家を相手に謀略で必死に抗うストーリー展開に注目。
そして成長していくレイリが、”死にたがり”からどう変化し成長していくのか、”レイリ”という名前に作者が込めた意味も、この漫画の大きな見どころとなっている。
異世界転生の元祖、タイムスリップを描いた歴史漫画2選
昨今流行りの異世界転生、もちろん歴史漫画と相性が良くない訳がない。と言うことで異世界転生物の名作歴史漫画を2つ紹介する。
1位『信長協奏曲』
戦国時代にタイムスリップした高校生のサブローは、自分と瓜二つである織田信長と入れ替わり、戦国武将として乱世を生きる。
2014年にアニメ化・テレビドラマ化され、2016年に実写映画化された本作最大の見どころは主人公の信長(サブロー)だ。
勉強嫌いで日本史に全く興味が無かった高校生が戦国時代にタイムスリップ。
誰もが知っている信長像すら知らないサブローが、戦国で信長としてどう生き、どう歴史を動かしていくのか。
サブローを囲む登場人物もみな魅力的で、特に女性陣は皆チャーミング。
そして本物の信長は、まさかの“あの人”として生きていくことに。
ちょっと待て、そしたらあの事件、信長の信長による信長の為の事件ってことに?
「一体どうなる?」なラストまで目が離せないストーリーに注目。
2位『JIN‐仁』
現代から幕末の日本へタイムスリップした医師が、運命を変えていくことに苦悩しつつ、当時の医学では救えない人々の為に奮闘する姿を描く。
主人公が、現代とは比べ物にならない劣悪な環境から、工夫を凝らして現代の医療現場・技術に近づける発想が面白い。
しかしそれによって、本来死ぬはずだった人々が死なず、歴史が変わってしまう事に葛藤を抱えながら、それでも人々を救うために奮闘する主人公には心を打たれる。
また、途中で挟まる医学・幕末史・風俗の雑学は大変勉強になる。
そしてラストの展開、それまで苦悩していたタイムパラドックスの問題にも答えを出しながら、予想を良い意味で裏切り、感動する結末に着地させたのは、見事としか言いようがない不朽の名作だ。
少女が主人公の歴史漫画4選
歴史の陰にも日向にも、いつだって健気に可憐に頑張る少女の姿がある。そんな少女たちの姿を描いた歴史漫画がこちらの4作。
1位『この世界の片隅に』
こうの史代による漫画。アニメ映画もヒットした。ドラマも記憶に新しい。
第二次世界大戦下の広島・呉に嫁いだ18歳の新妻・すずと、その周辺の人々の目から庶民の生活を描く。
昭和40年代の暮らしをまざまざと描いた歴史もの。
ほぼ日課と化した防災訓練や煮炊きの様子など、どこまでも平々凡々に、庶民に寄り添った眼差しが温かく愛おしい。
だからこそ終盤の悲劇は痛ましく、すずの慟哭が胸を引き裂く。
戦争を知らない世代にぜひ読んでほしい。
2位『アシガール』
『ごくせん』で有名な森本梢子による漫画。戦国時代にタイムスリップした女子高生が若き武将に一目惚れし、彼の傘下の足軽として活躍する姿を描く。
女子高生ならではの発想で戦況を覆す主人公・唯の、転んでもただでは起き上がらない逞しさと、彼女を取り巻く戦国時代の人々のとぼけたやりとりがしみじみおかしい。
織田信長をはじめとする歴史上の偉人も数多く登場し、物語に華を添えてくれている。
3位『辺獄のシュヴェスタ』
竹良実による漫画。完結済み。魔女狩りの嵐吹き荒れる16世紀の神聖ローマ帝国を舞台に、薬師の義母を処刑され孤児となった少女・エラの復讐劇を描く。
魔女の娘(とされた魔女狩り遺族の少女たち)が集められた森の奥の修道院、という設定にまず惹かれる。
しかもそこは恐ろしい陰謀渦巻く場所で裏切り出し抜き当たり前、虐待や洗脳も行われている。
年端もいかぬ少女に対する目も覆わんばかりの壮絶な拷問・処刑シーンが出てくるので苦手な方にはお勧めしないが、グロ鬱耐性があるならぜひ読んでほしい。
過酷な環境下でも仲間と団結し、知恵を絞って生き残りを画策するエラの信念と、試練を克服して育んでいく友情が尊い。ラスボスである修道院長のカリスマ性にも戦慄。
4位『乙女戦争』
大西巷一による漫画。1420年、フス戦争勃発翌年のボヘミア王国が舞台。カトリック派聖ヨハネ騎士団のフス派狩りで家族を虐殺された末、陵辱によって処女を散らされた12歳の少女・シャールカの戦いを描く。
女子供が犠牲になる戦争の暗部を容赦なく抉りだす隠れた傑作。
性暴力描写が結構な比重を占めるので読んでいて辛くなるが、世界史の中でもマイナーなフス戦争を扱っており、当時の生活様式や戦争様式がリアリティを持って描かれているのがポイント。
おわりに
以上、おすすめ歴史漫画30選を紹介した。
歴史漫画の魅力は、その時代に生きる人々の息遣いがリアルに感じられるところだ。
変革の荒波に揉まれながらも信念を貫き通すキャラクターの生き様は、熱い感動をもたらす。
長さと密度が比例するせいか結構な長編が多いのも特徴で、時間がある時にでもぜひ一気読みしてほしい。
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