『半沢直樹 アルルカンと道化師』あらすじと感想【バンカー探偵半沢直樹が絵画の謎を追う!】

『半沢直樹 アルルカンと道化師』あらすじと感想【バンカー探偵半沢直樹が絵画の謎を追う!】

半沢直樹(はんざわ なおき)。

このバンカーの名前を知らない人はいるだろうか。

2013年に放送されたドラマも、2020年に放送された続編も好評で、「倍返し」や「おしまいDeath」など、ドラマを発端とする流行語が生まれ、主演の堺雅人さんやライバル・大和田暁(おおわだ あきら)を演じた香川照之さんを始め、出演した役者にも注目が集まった。

近年これほどまでに世間が注目したドラマがあっただろうか。

続編ドラマの放送が終わる頃、「半沢ロス」を軽減させるかのように、新しい物語が登場した。

タイトルは『半沢直樹 アルルカンと道化師』。

半沢直樹が大阪西支店融資課長時代、つまり第1巻『オレたちバブル入行組』の前日譚となっている。

こんな人におすすめ!

  • 半沢直樹シリーズが好きな人
  • ドラマが終了し、半沢ロスになっている人
  • 上司に倍返ししたいが、実行には移せないので、小説を読んですっきりしたい人

あらすじ・内容紹介

時は21世紀になったばかり。

半沢直樹は大阪西支店融資課長として赴任して1ヶ月が経った9月の初旬、支店長の浅野匡(あさの ただす)を通じて、大阪営業本部より、老舗美術系雑誌出版社・仙波工藝社(せんばこうげいしゃ)の買収案件が持ち込まれた。

半沢は、大阪営業本部の調査役・伴野篤(ばんの あつし)と共に仙波工藝社を訪れたが、伴野の買収ありきで案件を進めようとする態度に、仙波工藝社社長・仙波友之(せんば ともゆき)の怒りを買う。

しかし、仙波工藝社は今期決算の赤字が見込まれていることもあり、経営は決して楽ではない。

そこで、大阪営業本部側は秘密保持契約をもって、買収相手がIT企業のジャッカルだということを明かす。

それでも買収に反対する仙波の意志を組み、半沢は融資で稟議書を上司に提出するが、買収案件を成立させたい大阪営業本部や支店長から横やりが入る。

なぜ、宝田たちは強引にでも、M&Aを推し進めようとするのか。

そして、なぜIT企業ジャッカルは、老舗とはいえ斜陽産業である出版社を買収しようとしているのか。

その鍵を握るのは、画家・仁科譲(にしな じょう)の「アルルカンとピエロ」の絵であった。

『半沢直樹 アルルカンと道化師』の感想・特徴(ネタバレなし)

半沢に立ちはだかる敵

半沢直樹シリーズというと、敵への倍返しが有名だが、今回の敵は業務統括部長・宝田信介(たからだ しんすけ)になる。

宝田は東京の本部の人間であるが、かつて半沢に言いくるめられ、半沢を大阪へ異動させた人間である。

この因縁がある相手は、IT企業ジャッカルによる、美術系雑誌出版社・仙波工藝社のM&Aを強引にでも推し進めようとする。

しかも、M&Aを推進する立場にある大阪営業本部副部長・和泉康二(いずみ こうじ)や調査役・伴野は、宝田の同期と部下。

半沢の上司にあたる大阪西支店長の浅野は、和泉の大学の先輩・後輩の間柄だ。

半沢の周りは敵だらけなのだ。

 

では、なぜここまで宝田たちはM&Aを押し進めるのだろうか。

その理由の1つは、巨額不良債権に苦しむ銀行の新たな収益の柱として打ち出されたのが、M&Aだからである。

東京中央銀行では、頭取がM&Aを事業の目玉にすると発信したことで、頭取に気に入られたい宝田が飛びついたのだった。

銀行内でポイントを稼ぐために、何が何でもM&Aを推し進める宝田だが、半沢は顧客の意向を基に、経営が上手くいくように金融分野で助けようとするため、信念が異なる。

宝田は自分の人脈を使い、半沢を阻害しようと根回しするが、顧客に寄り添う半沢の信念がぶれることはない。

これだけ敵が多いと、不都合な面も出てくると思うが、半沢には味方も多い。

敵も多いが味方も多い―――。半沢課長のことを本部にいる奴がそういってました。(中略)だけど、味方は圧倒的なシンパばかりなんだそうです。

本書でも、思わぬ形でお祭り委員会が味方となってくれる。

大阪西支店の主要取引先の集まり:お祭り委員会

大阪西支店のビルの屋上には、稲荷神社がある。

名前は東京中央稲荷で、大阪に東京の名前が付いたものがあって良いのかと思うが、大阪の大社・土佐稲荷神社の分祀で由緒正しい神社だ。

ここでは毎年11月、お祭りを催していて、大阪西支店の主要取引先十数社であり、土佐稲荷神社の氏子たちが、祭りの準備、通称:お祭り委員会を銀行と開いている。

取引先は会社代表が出席するほど重要な会で、大阪西支店側は支店長が出席することになっている。

ところが、大阪への異動に不満を持つ浅野は、このお祭り委員会に出席したがらない。

浅野は取引先との会食と称して、お祭り委員会の出席を半沢へ押し付け、半沢はいつも謝罪に回っている。

お祭り委員会がなぜ重要かというと、ただのお祭り準備委員会ではないからだ。

大阪西支店では、いつからかこの神社のお祭りと称して、毎年十一月、預金や融資などを取引先から集めて業績向上に結び付けるキャンペーンを行うことをしてきた。つまり、お祭り委員会という名前はついているものの、実態は、支店と取引先が一体となった営業支援だ。あくまで取引先の厚意があって成立する性質のもので、これに代々の支店長が出席して、需要取引先との信頼関係を築くとともに、地域経済や経営に関して情報交換してきた経緯がある。

地域のつながりが強い大阪ならではの重要な会なのだ。

大阪で商売を行う会社の代表者たちは、時に厳しく拒否したり、追及したりするが、一度腹を割って話すと、味方になってくれる。

詳細は本書を読んでほしいが、お祭り委員会を軽視した浅野支店長は足元をすくわれる。

一方、謝罪回りだけでなく、土佐稲荷神社の掃除ボランティアにも顔を出した半沢は、ピンチの時に助けられるのだ。

これも半沢が取引先と正面から向かい合った結果である。

探偵半沢、「アルルカンと道化師」の謎を追う

取引先と共に困難に立ち向かう姿はこれまでの「半沢直樹シリーズ」でも見られた光景だが、今回は探偵となって謎を追いかけている場面も描写されている。

では、半沢が追いかけている仁科譲の「アルルカンとピエロ」とは何だろうか?

アルルカンとは、ピエロとともに伝統的なイタリア喜劇に登場する人気のキャラクターである。ずる賢いアルルカンと純粋なピエロの対比は、画家たちが好んで取り上げるテーマのひとつになっている。

仁科譲は、現代アートで大成功を収めた世界的な画家で、その名を一気に高めると同時に生涯のテーマとなったのが、「アルルカンとピエロ」である。ポップなタッチで、絵画というよりマンガのキャラクター風に描かれた絵は、仁科譲の代名詞になった。

実は、仙波工藝社を買収しようとしているIT企業ジャッカルの社長・田沼時矢(たぬま ときや)は、画家・仁科譲のコレクターなのである。

しかも、画家として有名になる前の仁科譲は、一時期、仙波工藝社に勤めていたことも判明する。

両社は仁科譲を通じて、接点があったのだ。

ここから先は物語の根幹に関わってしまうため、読んでからのお楽しみである。

まとめ

「アルルカンとピエロ」は「ずるがしこさ」と「純粋さ」の象徴である。

そこで、私は本書の登場人物たちを「アルルカンとピエロ」に当てはめてみようと考えたが、上手く当てはめることができなかった。

ある人物はアルルカン寄りだが、ずるがしこくなり切れていないし、ある人物はピエロだと思うが、ずるがしこい面があるという感じで、決定的なものがない。

もしかすると、人間は両面を持っているかもしれない。

それは、「ずるがしこさ」と「純粋さ」が対比する言葉でないこともあるだろう。

西洋絵画ではよく題材にされる「アルルカンとピエロ」は一緒に並ぶことで、人間そのものを表しているのではないだろうか。

本書の人間関係を見ていると、不思議とそう思えてくるのである。

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