連載終了後も人気が絶えない漫画『鬼滅の刃』。
今作は「劇場版 鬼滅の刃」のノベライズ(小説版)です。
物語の主役は炎の呼吸を操る「炎柱」こと煉獄杏寿郎。
炎のような髪と眼光鋭い瞳、燃え盛る闘志を持った鬼殺隊の剣士です。
無限列車に乗車した炭治郎一行は、先に乗り合わせていた煉獄と合流。
被害状況を確認します。
「誰も死なせたくない」
「どいつもこいつも俺が助けてやるぜ!」
「禰豆子ちゃんは俺が守る」
強力な鬼の能力に翻弄されながら懸命に戦う炭治郎たち。
無事に鬼を倒しきれるのでしょうか。
目次
こんな人におすすめ!
- 物語の力を信じたい人
- 劇場版の名シーンを小説で楽しみたい人
- 魂を熱くさせる戦闘や感情を揺さぶられるお話を読みたい人
- 心をわしづかみにする名言や、読み返したくなる金言に出会いたい人
あらすじ・内容紹介
心優しい炭売りの少年竈門炭治郎(かまど たんじろう)は、ある日家族を鬼に惨殺されてしまう。
唯一生き残った妹の禰豆子(ねずこ)も、鬼の始祖・鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)によって人喰い鬼に変貌してしまった。
彼女を鬼から人に戻す方法を見つけて無惨を討伐すべく、炭治郎は鬼を狩る政府非公式の組織『鬼殺隊』に入隊し吾妻善逸(あがつま ぜんいつ)、嘴平伊之助(はしびら いのすけ)をはじめとした仲間と出会い、絆を深めてゆく。
次なる任務の地、無限列車に到着した炭治郎・禰豆子・善逸・伊之助の4人。
そこでは短時間に40名ほどの乗客が行方不明になっている。
状況を把握するために数名の隊員を送り込んだが、全員が消息を絶ってしまう。
一行は鬼殺隊最強の剣士の一人、煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)と合流。
ひときわ無惨の血が濃い直属の配下である十二鬼月の下弦の壱、厭夢(えんむ)に立ち向かう。
※正確には禰豆子の「禰」は「ネ」のしめすへん、煉獄の「煉」は火に「東」、厭夢の「厭」は「魘」。
『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の感想・特徴(ネタバレなし)
ユーモアと過去の記憶が入り混じる「夢の世界」
鬼の術にはまってしまった一行は、それぞれ夢を見始めます。
善逸は桃の木が生い茂る山で禰豆子と手を繋いでデートをする夢を。
伊之助は、狸のポン治郎、ネズミのチュウ逸、うさぎのピョン子とともに探検隊を結成し、暗い洞窟で楽しい冒険をする夢を。
煉獄は柱になったことを父に報告します。
そして炭治郎は、家族と平穏な毎日を過ごす夢を見るのですが……。
この術の恐ろしさは、人の心の弱い部分を的確に狙うところにあります。
炭治郎は、家族を鬼に殺されたことがきっかけで鬼殺隊に入りました。
当然ながら鬼には強い憎しみを抱いています。
一方で、大切に育ててくれた家族や関わった人に対しては、深い慈愛の心で接する優しい少年です。
日常を壊した全ての元凶を持ち込んでいると踏まえると、いかに狡猾なのかが分かります。
ただの日常にすぎないはずのすべてが、あたたかくて悲しくて、切なくて幸せで仕方なかった。
母親も弟妹も生きていて、禰豆子が太陽のもとで山菜狩りをしている姿。
炭治郎にとって「どんなに欲しくても、決して手に入らない理想の生活」です。
現実の家族は殺され、妹は人喰い鬼に姿を変えられているのですから。
(本当なら。本当なら……俺は今日もここで炭を焼いていた。刀なんて触ることもなかった)
毎日毎日、炭を焼き、竹雄が初めて炭を売りに行くのを、心配と喜びのないまぜになった思いで家族とともに見送り、禰豆子が叩いて伸ばしてくれた餅を焼いて煎餅にする。春には美しく色づいた山を弟たちと歩く。
そんな平凡で幸せな生活が、この先もずっと続いていくはずだった。
炭治郎は懸命に目覚めようとしますが、どうしても起きられません。
今まで戦ってきたどの鬼とも異なる攻撃方法に一行は苦戦を強いられます。
夢の世界から覚醒せよ!醒めない夢の恐怖
列車の上で輝く青緑の瞳。長い髪の先端は浅緋(あさあけ)色。
そして、左目に刻まれた「下壱」の文字。
炭次郎たちが戦う相手は、下弦の壱の厭夢(えんむ)。
体を使って戦うタイプではなく、悪夢を意味する名の通り「夢」を操る鬼です。
瞳と口が一つずつついた不気味な左手を使い、甘い夢を見せます。
一見、風変わりな髪の長い青年に見えますが、性格は極めて残忍です。
心が弱った人に甘い言葉をかけて手助けさせるよう仕向け、自身は列車の外で見張りをするなど、一筋縄ではいかない執念深さを持つ強敵です。
柱や鬼殺隊を一掃してから食事を行うなど、用意周到な面がうかがえます。
(本当は、幸せな夢を見せたあとで悪夢を見せてやるのが大好きなんだ。
人間の歪んだ顔が大好物だよ)たまらないよね、と厭夢が唇を歪めて笑う。不幸に打ちひしがれて苦しんでもがいている奴をながめていると、楽しくて仕方がない。
彼が見せる夢は、見ている人を中心に円状に形成されています。
そのなかでも特に重要なのは「精神の核」。
壊されてしまうと、人は廃人になってしまいます。
作中では精神の核を壊される寸前の煉獄と、おさげ髪の少女が膠着するシーンがあります。
少女は現実から与えられる苦痛で動けない。
人を殺すわけにはいかない煉獄もまた、これ以上は動けない。
両者はまさしく膠着状態にあった。
核を破壊するために使用する錐は、厭夢の骨と歯から出来ています。
非常に鋭利で固く、場合によっては凶器にもなりうる危険な代物です。
寝ている間に核を破壊されたらひとたまりもありません。
恐怖から逃れるには、夢から目覚める必要があります。
上弦の参、猗窩座乱入。死闘の末、物語はクライマックスへ
手負いの炭治郎を看取る煉獄の近くに、突如として現れる謎の人影。
紅色の短髪に鋭く光る金色の瞳。
それぞれ「上弦」「参」の文字が刻まれています。
全身を覆う特徴的な鉄紺。
鬼の文様はさながら刺青です。
ただならぬ威圧感を漂わせた人物が、二人の前に姿を見せます。
彼の名は猗窩座(あかざ)。
上弦の参。十二鬼月の中でも特に優れた能力を持つ鬼です。
炭治郎に先制攻撃を仕掛けますが、煉獄の炎の呼吸で阻止されます。
「初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ」
「そうか……俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る」
弱者を蔑ろにする者を嫌う煉獄。
弱者を切り捨て、唾棄する猗窩座。
同じ武の道を究めてはいますが、双方の価値観は重なりません。
鬼の甘い勧誘にも乗らず、煉獄は一対一の決闘に挑みます。
「炎の呼吸 参の型」
猗窩座の手前で高く跳躍した煉獄が、その頭上に赤い刃を振り下ろす。
「気炎万象!」
煮えたぎるようなその斬撃は、猗窩座の右肩から脇腹までを大きく袈裟切りにした。
鬼の傷口から血が噴き出す。
まとめ
両者の実力はほぼ互角。
どちらが勝つのか分からない状況です。
咆哮する獅子のごとく闘志をむきだしにする二人の結末を、そして鬼に立ち向かう炭治郎たちの決意を受け取ってください。
無限列車編は原作の7巻と8巻にあたります。
物語の序盤です。これから新たな登場人物が加わり、さらなる加速をはじめます。
強くなるのは鬼も同じです。
種類豊富な血鬼術を操り、性格も一筋縄ではいかない強敵の数々。
なかには、柱たちの家族を殺害した因縁の相手も……。
ますますこの先の展開が見逃せませんね。
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