「大切にしていたのに、なくしてしまった」
「どこかに落としてしまった」
「探したけれどみつからない」
そんな小さい頃のちょっぴり苦い思い出、ありませんか?
今回はその悲しい思い出をちょっぴり幸せな思い出に変えてくれる「なくしたものたちの国」を紹介します!
あらすじ・内容紹介
雉田成子は8歳のころまで、動物や自然、いろいろなものと話ができた。
山羊のゆきちゃんもその中の一人。
毎日お互いの話をし、お互いの大切なものの話をした。
しかしある時を境に、成子はあらゆるものの話が聞こえなくなってしまう。
最初はその事実に戸惑う成子だったが、大人になるにつれ世界のすべてが話しかけてこないことに慣れていく。
そして彼女の「山羊のゆきちゃんとの思い出」は、段々と彼女の記憶から消えていった。
ある時、突然なくしてしまっていたカメラを見つけ出した成子は、写真の現像に向かう。
そして現像された写真を見て彼女はあることに気づく。
「これは、すべて私が幼いころに無くしたものたちだ」
そしてついに、彼女は山羊のゆきちゃんとの思い出も思い出す。
なくしたものたちの国の感想(ネタバレ)
「なくしたものたちの国」を信じたい
この本を読んだ後に、「あぁ、私のなくしたものたちはすべてなくしたものたちの国にいるんだなぁ」と思いました。
何か大切なものをなくすことは、とても辛いこと。
やってはいけないこと。
そう考えていた私でしたが、私にも大切なものを失った経験があります。
例えば小さいころ大切にしていたリスのぬいぐるみ。
「ポケットちゃん」という名前をつけてとっても大事にしていました。
ですがある時、ポケットちゃんがいきなりいなくなってしまったのです。
泣きながら部屋の中を隅々まで探し回りましたが、とうとうポケットちゃんは出てきませんでした。
当時はなんでいなくなっちゃったの!とポケットちゃんを責めたりしました。
けれど今思うと、ポケットちゃんは自らなくしたものたちの国にいったのかなとも思います。
そんな「なくしたものたちの国」があるんじゃないかと思わせてくれる、素敵な本でした。
心に残った言葉
ヤギのゆきちゃんが成子ちゃんに向かってこう話す部分があります。
でもねナリちゃん、いつかきっと、なつかしくなる日がくるわ
この言葉がすごく印象に残りました。
「なつかしくなる」っていうのはとても素敵なんだと思います。
やっぱり生きていると、いろんな感情がせめぎあったりします。
怒ったり悲しんだり喜んだり、どうしようもなくなったり。
自分を不甲斐なく感じることもあるし、自分に自信がなくなるときもある。
でも、そうやって感じる一つ一つの感情も、いつかなつかしくなるんだろうなと思います。
プラスの感情だけでなくマイナスな感情も、あとで「なつかしいなぁ」と思えるのなら必ずしも悪いものではないのかもしれません。
そうやって感情や思い出をあとで振り返って、
「あぁ、なつかしいなぁ」
と心から思える人生を歩みたいなと思いました。
小説×絵
この本はイラストレーターである松尾たいこさんとの共同著書になっています。
以下に簡単なプロフィールを載せます。
松尾たいこさんの絵は鮮やかで、どこか懐かしさを感じます。
色の使い方ははっきりとしているのに、どこか優しさを感じる。
そんな松尾たいこさんの本はこの角田光代さんの本にぴったりだと思います。
絵を味わうために、この本を読まれるのも素敵かもしれません。
まとめ
「大切にしていたのに、なくしてしまった」
「どこかに落としてしまった」
「探したけれどみつからない」
そんな小さい頃のちょっぴり苦い思い出、素敵な思い出に変えませんか?
ぜひ、松尾さんと一緒に「なくしたものの国」へと旅立ってみてください!
主題歌:奥華子/変わらないもの
この本を読んだときにまっさきにこの歌が頭に流れました。
奥華子さんの「変わらないもの」です。
時を越えていく思いがある。
どんなになくしたように思えても、「そのなくしたもの」に対する「思い」は、永遠に残り続けるのではないでしょうか?
この記事を読んだあなたにおすすめ!
角田光代おすすめ小説10選!【心をえぐる作品群!】
書き手にコメントを届ける