人の意思とは何か。
人が、次世代に残していくものは何なのか。
アメリカを裏から操る「愛国者達」とは?
作られた英雄が、真の英雄になるまでの物語。
目次
こんな人におすすめ!
- 戦争、バトル作品が好きな人
- ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズが好きな人
- 『メタルギアソリッド サブスタンス1 シャドー・モセス』を読了済みの人
あらすじ・内容紹介
シャドー・モセス島での事件(詳細は『メタルギアソリッド サブスタンス1 シャドー・モセス』を参照)から2年。
戦術核弾頭を搭載した移動兵器、「メタルギア」の設計データが流出し、世界中でメタルギアの亜種が生まれ続けていた。
シャドー・モセスでの戦いを経た伝説の英雄、ソリッド・スネークは、オタコンことハル・エメリッヒと共に反メタルギア財団「フィランソロピー」を設立し、各地でメタルギアの撲滅を続けていた。
しかし彼らは、マンハッタン沖でのタンカー沈没事件の後に忽然と姿を消す。
そしてタンカー沈没事件から2年後。
タンカーから漏れ出た重油による汚染を隔離していた巨大海上除染施設「ビッグ・シェル」が、「サンズ・オブ・リバディ」を名乗るテロリスト集団に占拠された。
テロリストたちのボスの名は「ソリダス・スネーク」。
かつてない規模のテロ事件を相手に、ハイテク特殊部隊FOXHOUNDの新人隊員、雷電は単身でビック・シェルに乗り込む。
残酷な真実に向き合うことになるとは知らず…。
「真の自由」の意味を問う、メタルギアサーガ第2弾!
『メタルギアソリッド サブスタンスII マンハッタン』の感想・特徴(ネタバレなし)
其々の思惑を持つ、新たなキャラクターたち
きみをこれから“雷電”と呼ぶ
「メタルギアシリーズ」の大きな魅力は、各々が自らの信念に則って戦うキャラクターが織りなす人間模様だろう。
前作主人公にして伝説の傭兵、ソリッド・スネークは何故か「プリスキン中尉」を名乗り雷電と行動を共にする。
そしてソリッド・スネークのサポートにあたるハル・エメリッヒもまた、ビッグ・シェルに囚われた異母兄妹のエマ・エメリッヒを救うために躍起になる。
そしてゲーム版同様に物語を彩るのは、個性豊かな敵キャラクター達だ。
前巻で暗躍を重ね、正体不明の何かに仕えているような素振りを見せていたリボルバー・オセロットも、引き続き登場。
今回もテロリストの味方をしながらも、やはり裏で何か動いている様子だ。
また、演習仮想敵部隊「デッドセル」のメンバーの1人「フォーチュン」は、何故かソリッド・スネークに激しい憎しみを向ける。
彼女に向かった弾丸は全て外れ、グレネードすらも不発になるという「幸運の女神」との敵対は、物語に緊張感を齎す。
また同じく「デッドセル」の元隊員である「ヴァンプ」は、水の上を走り、垂直の壁を駆け上がり、更には頭を打たれても死なないという超人的な敵だ。
彼はゲーム版と同様、不死の存在が襲いかかってくるという恐怖を、プレイヤーならぬ読者に襲いくるという恐怖を与えてくれる。
そしてテロリスト集団「サンズ・オブ・リバディ」のボス、「ソリダス・スネーク」。
彼は、米国を陰から操る謎の存在「愛国者達」と戦うため、テロリストという道を選んだ。
主人公の雷電とも浅からぬ因縁を持つ彼の存在は、戦いの中で雷電に大きな影響を与える。
その他、爆弾魔の「ファットマン」や彼を止めようとする「スティルマン」、旧ソ連軍の元大佐「セルゲイ・ゴルルコビッチ」とその娘「オルガ・ゴルルコビッチ」など、魅力的なキャラクターに事欠かない。
本作の主人公・雷電はそれらの人物と、時に戦い、時に導かれ、自身の過去に苦悩しながらも信じるものや生きる道を見つけていく。
大勢の死人が出る作品でありながら美しい光を放つのは、今作に登場するキャラクター達が魅力的だからに他ならない。
SSS計画と、愛国者達
われわれの計画は、われわれのためにあるのではない。きみたちのためにあるのだよ
雷電やプリスキン中尉ことソリッド・スネークがサンズ・オブ・リバディと戦いを繰り広げる背後で、不穏に蠢く謎の存在「愛国者達」。
ソリダス・スネークが敵視し、リボルバー・オセロットとの繋がりをも匂わせる愛国者達が秘密裏に進めている「SSS計画」の謎もまた、本作の魅力を際立たせる。
テロリストと敵対しながら、決して雷電やソリッド・スネークの味方ではないその存在は、「メタルギアサーガ」全編を覆う暗雲だ。
米国の歴史を揺るがしかねないほどに強大なその存在が、果たして何を目指し、何を語るのかも目が離せない。
「ぼく」の物語
だからこそ、ぼくは雷電と呼ばれた彼のことを伝えよう
本書のゲーム版との大きな違い。
それは雷電やソリダス・スネーク、ソリッド・スネークやハル・エメリッヒ達の戦いを俯瞰で眺める「ぼく」の存在だろう。
前巻から登場した「ぼく」は、シャドー・モセス島でのソリッド・スネークの戦い、そしてビッグ・シェルでの雷電の戦いを俯瞰して把握する存在だ。
ある意味で我々読者と1番近い位置にいる「ぼく」が、彼ら「英雄」達の戦いを知り何を思うのか。
9.11のテロで足の自由を失った「ぼく」が、戦いの記録を通して何を決断するのか。
そして、「ぼく」に戦いの記録を送り続けた者の正体とは?
最後に訪れる、「ぼく」と「彼ら」の出会いも、本書の注目ポイントだ。
まとめ
大人気ゲーム「メタルギアシリーズ」のノベライズ第2巻である本書。
オリジナルのゲーム版「メタルギアソリッド2」では、「雷電」という新主人公の存在や、彼と「愛国者達」との対話に込められた強いメッセージ性が波紋を呼んだ。
プレイヤーに強い衝撃を与えたその物語のメッセージ性は、小説という新たな肉体を手に入れたことで更に強くなり、読者にも新たな感慨を与えてくれる。
かつてゲームをプレイした人だけでなく、興味はあれど「ゲームという媒体」故に手が出せなかった人にこそ、ぜひ読んでもらいたい1冊だ。
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