あの時、ウルトラマンは確かにいた…。
平成の時代に蘇ったウルトラマンの3作目にして、SFとしても強い魅力を放っていた『ウルトラマンガイア』。
その劇場版、『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空大決戦』の放映から20年を経て、新たな戦いが今始まる。
あの時少年だったファンに向けた、新たな〈ウルトラマンガイア〉の物語。
目次
こんな人におすすめ!
- 怪獣が好きな人
- 特撮ヒーローが好きな人
- 『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空大決戦』を見たことがある人
あらすじ・内容紹介
『ウルトラマン』がテレビ放映されている世界。
かつて〈赤い玉〉の力を借りて、自分たちの世界へと〈ウルトラマンガイア/高山我夢(たかやま がむ)〉を自らの世界へと招いた少年、〈新星勉(にいぼし つとむ)〉。
当時9歳の少年だった彼も、今では29歳。
交番に務める巡査として街を守る彼は、現実の厳しさに打ちのめされつつあった。
そんなある日、彼は20年ぶりに〈赤い玉〉の夢を見る。
かつては〈赤い玉〉の魔力に取り憑かれ、〈キングオブモンス〉〈スキューラ〉〈バジリス〉といった怪獣を生み出してしまった少年たちであり、今では長年の友人でもある〈鹿島田浩(かしまだ ひろし)〉や〈中原耕平(なかはら こうへい)〉、〈小杉亘(こすぎ わたる)〉、〈平間優(ひらま ゆう)〉たちにその話をした勉は、彼らもまた同じ夢を見ていたことを知る。
更に勉の妻、〈リサ〉が勤める小学校には、謎めいた少女〈八光ミユ(やこう〜)〉が転校してきた。
リサに、怪獣が街を破壊するビジョンを見せるミユ。
そして、とうとう姿を現す新たなる怪獣〈カイザーレギラス〉。
大人になった彼らの前に、果たしてウルトラマンガイアは再び現れるのか?
放映から20年の時を経て新たに紡がれる〈ウルトラマンガイア〉の物語!
『小説 ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア 超時空のアドベンチャー』の感想・特徴(ネタバレなし)
あの時少年だったファンに向けた、新しい物語
ウルトラマンだってさ。いい大人が−、ダセっ。
今作は、1999年に公開された『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空大決戦』での戦いから、20年後を描いた小説だ。
当時少年だった〈新星勉〉をはじめとした登場人物の面々も、今では30歳前後のいい大人となった。
〈ウルトラマン〉という作品がテレビ放映されている世界で、一時だけ本物の〈ウルトラマン〉と共に過ごし、壮大な冒険を繰り広げた彼らは、各々の夢を叶えるために努力しながら、同時に厳しい現実に打ちのめされてもいる。
そんな彼らの様子は、同じように〈ウルトラマン〉に勇気をもらいながら、社会に出てままならないことも多くなったであろう我々読者にとっても、見ていて辛いものがあるかもしれない。
しかし新たな戦いが始まり、大切なものを守るためにその中に飛び込んでいく彼らの姿は同時に、きっと大人になった読者にこそ新たに勇気を与えてくれるだろう。
怪人〈チャリジャ〉の珍道中
怪獣は面白い
平成ウルトラマンの記念すべき第1作目『ウルトラマンティガ』。
その物語の中でも特に記念作品的な面を持つ回が、第49話『ウルトラの星』であろう。
〈初代ウルトラマン〉と〈ウルトラマンティガ〉が共演するこの回に登場した怪人が、怪獣バイヤーの〈チャリジャ〉だ。
今作では、まさかのこの〈チャリジャ〉が再登場を果たす。
物語の最重要アイテム〈赤い玉〉を求めて、様々な時空を彷徨う〈チャリジャ〉の珍道中も、今作の大きな見どころだろう。
また彼はモノローグで、〈ウルトラマン〉が怪獣と戦っている世界と、その戦いを娯楽として放映している世界がそれぞれ存在しているという作品世界の構造を説明してくれる。
放浪の道中で、〈怪獣保護を行う防衛隊〉や、〈目撃者の記憶を消すようなダーティーな手法を取る防衛隊〉などに対してコメントを残していく、彼の小洒落たモノローグにも注目だ。
更にメタ的な観点から見ると、モノローグの一部には著者である長谷川圭一氏のちょっとした自虐ネタも含まれている。
〈あの作品のことだな〉と気付ける読者は、なんとも言い難い気分も味わえるかも知れない。
後書きは〈高山我夢/ウルトラマンガイア〉を演じた吉岡毅志氏
そんな時、私達のそばにはウルトラマンがいた。
本作の後書きを務めるのは、『ウルトラマンガイア』という作品の主人公である〈高山我夢/ウルトラマンガイア〉を演じた俳優の吉岡毅志氏だ。
彼の〈ウルトラマンガイア〉という作品、〈高山我夢〉というキャラクターへの愛に溢れた後書きも、決して読み飛ばすことはできない。
また、今作では作中の登場人物として、実際に吉岡氏が登場する。
作中でも非常に重要な役割を果たすキャラクターなので、是非とも注目して読んで頂きたい。
まとめ
公開から20年が経ったのちに新たに生まれたこの作品。
かつての登場人物たちが大人になり、社会の荒波に揉まれ、打ちのめされている様子は、あの時少年であった大人にも共感できる部分が多く、読んでいてショックすら受けるかもしれない。
しかしそんな彼らが、知恵と勇気を振り絞って新たな戦いに挑んでいく様子は、非常に勇ましく頼もしい。
当時、ウルトラマンから勇気を与えられた大人にこそ、勇気を与えてくれる小説だ。
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