人気ノベルゲームシリーズ『科学アドベンチャーシリーズ』の第4弾、『CHAOS;CHILD』のその後を描いた、残された者達の物語。
目次
こんな人におすすめ!
- 『CHAOS:CHILD』をプレイ済の人
- 『科学アドベンチャーシリーズ』が好きな人
あらすじ・内容紹介
かつて渋谷で起こった、〈ニュージェネレーションの狂気〉と呼ばれる連続猟奇殺人事件と、その最後に起こった渋谷地震から6年後。
壊滅状態であった渋谷は復興を遂げ、人々の生活は元通りに戻っていた。
謎の老化現象に見舞われながら、それに気付かずに〈妄想〉に囚われたままの日常生活を送る〈カオスチャイルド症候群〉罹患者を除いては…。
そんな最中、〈ニュージェネレーションの狂気〉と同日に、新たなる連続猟奇殺人事件が起こった。
人々が〈ニュージェネレーションの狂気の再来〉と呼んだその事件の犯人として逮捕されたのは、〈カオスチャイルド症候群〉の罹患者の1人、〈宮代拓留(みやしろ たくる)〉という名の少年。
世間の目は、好奇と非難を以って彼に、そして事件後に快復し始めた罹患者達に襲いかかる。
今や〈宮代拓留〉とは、罹患者たちからは恨まれ、世間からは蔑まれる存在。
しかし、彼と共に過ごした者達は知っている。
彼が何を想い、何と戦い、どのような決断をしたのかを。
そして、彼が残してくれたもの、その大切さを噛み締めながら、其々の道を歩んでいく…。
大人気ノベルゲーム『科学アドベンチャーシリーズ』の第4弾、『CHAOS;CHILD』のその後を描いた、外伝小説。
『CHAOS:CHILD−Children’s Revive−』の感想・特徴(ネタバレなし)
〈妄想〉から脱した少年少女の、その後
大切だからこそ、しかし我々は離れなければならない。大切なものに甘えて、その大切さをまさに自分たちの手で貶めてしまう前に
今作は、ノベルゲーム『CHAOS;CHILD』の後日談を描いたキャラクター小説だ。
都合の良い妄想を共有し、偽りの学園生活を送っていた〈カオスチャイルド症候群〉の元罹患者として、妄想を具現化できる能力を持った〈ギガロマニアックス〉として、そして何より〈ニュージェネレーションの狂気の再来〉の関係者として、現実に向き合わざるを得なくなった少年少女達の、その後の物語が語られる。
ある者はデートに、ある者は友人関係に、ある者は部活に精を出す彼ら彼女らは、しかし何も知らなかった時と同じでは居られない。
彼らに襲いかかるのは、数々の偏見と差別。
深く考えもせず、単なる娯楽として嘲り嗤う者や、上っ面の理解を示しながら、悲劇の被害者たれと願う者が溢れる現実を前に、少年少女は果敢に立ち向かう。
普通の道を歩めなくなった者たちの中に宿るのは、誰よりも優しく有ろうとした〈宮代拓留〉の存在。
彼が残していった世界で、残された者たちが抗う様は、ゲームをプレイ済みの読者に深い感慨を与えることだろう。
他作品のキャラクターも?
……なあ、紅莉栖。そっちに着いたらいろいろと話したいことがあるんだ
『CHAOS;CHILD』本編に登場するヒロインの中で、ただ1人独自の立場にいた人物、〈久野里澪(くのさと みお)〉。
シリーズを通した物語の黒幕、〈300人委員会〉の存在を序盤から把握しており、〈ギガロマニアックス〉の研究を行っていた彼女は、他シリーズの登場人物と接点を持った数少ない人物だ。
今作ではそんな彼女を通し、『科学アドベンチャーシリーズ』の中でも頭1つ抜けた人気を誇る作品『STEINS;GATE』から、2人のキャラクターの存在が示唆されている。
かつての久野里の共同研究者として〈牧瀬紅莉栖(まきせ くりす)〉が名前のみ登場。
更に、久野里がとある計画を実行するために頼る人物が〈スーパーハッカー〉と描写されている。
恐らくシリーズをプレイしたことがある人間なら、皆一様にあのメイドオタクの〈スーパーハカー〉を思い浮かべたのではなかろうか。
ストーリー進行が再重要視されるノベルゲームの枠から外れた今作では、そういった他作品との緩やかなコラボも楽しむことができる。
戦いは終わらない
何が起こるかはわからない。が、どうせろくなことじゃないだろう
引き続き久野里澪の話題にはなるが、彼女は登場人物の中で最も〈300人委員会〉と深い関わりを持った人間だ。
〈人工の神〉の製造から、〈タイムマシン〉を用いた人類支配計画といった様々な陰謀で、世界を我が物にしようとする謎の組織。
それと対峙する存在である彼女は、今作で自らの過去と向き合い、とある決意を固める。
その決意は新たなる戦いの始まりを予感させており、『科学アドベンチャーシリーズ』全体を通しても見逃せない作品となっている。
まとめ
人気ノベルゲーム『科学アドベンチャーシリーズ』の第4弾『CHAOS;CHILD』。
その後日談を描いた今作は、凄惨な事件が終わった後の、キャラクター達のその後に真摯に向き合った作品だ。
ゲーム本編が終わった後の余韻を壊すことなく、それぞれのキャラクターが向かい合う未来を真摯に描いている。
事件が終わった後にキャラクターを待ち受けるのは、めでたしめでたしのハッピーエンドではなく、世間からの好奇の目と、言われなき差別。
それでも、〈宮代拓留〉という男が残した世界を生き抜こうとするキャラクター達の姿は、ゲーム本編をクリアした読者に未来への希望を見せてくれる。
また、匂わせる程度ではあるが、『STEINS;GATE』のキャラクターの存在も示唆されており、ファンサービスにも事欠かない。
『CHAOS;CHILD』をクリアしている必要がある為、単体では手が出せない作品ではあるが、その分プレイ済みの読者にとっては、決して見逃せない珠玉の1冊と言えるだろう。
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