『メタルギアソリッド ピースウォーカー』あらすじと感想【核抑止による平和は実現するのか?】

『メタルギアソリッド ピースウォーカー』野島一人【核抑止による平和は実現するのか?】

かつて世界を全面核戦争の危機から救い、「ビッグ・ボス」の称号を得た男「ネイキッド・スネーク」は、そのまま姿を眩ませた。

そして10年後。

コスタリカで暗躍する影。

自己判断機能を備えた4脚移動核発射装置「ピースウォーカー」。

核抑止の是非を問うビッグ・ボスの新たな戦いが始まる。

こんな人におすすめ!

  • 戦争モノが好きな人
  • 架空歴史モノが好きな人
  • メタルギアシリーズが好きな人

あらすじ・内容紹介

最愛の師である「ザ・ボス」を抹殺し、世界を核戦争の危機から救った英雄「ビッグ・ボス」。

彼はそのままアメリカから姿を消し、自ら兵士たちをスカウトして私設軍隊「国境なき軍隊」を築いていた。

彼が目指すのはどのような国家や組織、イデオロギーにも属さない屈強な集団。

そこに訪れた平和を愛する少女と兵士を志す少年。

そしてコスタリカで蠢く巨大な影と、自らの手で殺したはずの「ザ・ボス」の声が録音されたカセットテープ。

秘密裏に開発された自律型核発射装置「ピースウォーカー」の存在と、その中に隠された秘密。

新たな相棒「カズヒラ・ミラー」と共に、ビッグ・ボスは新たな戦いに飛び込んでゆく。

自らの過去と決着をつけるために…。

核抑止と平和の意味を問う、ビッグ・ボスの新たな物語。

『メタルギアソリッド ピースウォーカー』の感想・特徴(ネタバレなし)

新たな拠点、新たな相棒

なぁ、カズ、火を貸してくれ

前作『メタルギアソリッド スネークイーター』では米軍の特殊部隊に属していた「ビッグ・ボス」だが、今作では自らが軍事組織「国境なき軍隊」を作り、文字通りボスとして活躍している。

国境なき軍隊に属するのは、ボス自らがスカウトした屈曲なメンバー達だ。

中でも副官の「カズヒラ・ミラー」は、今作から登場する非常に重要なキャラクターだ。

2年前に敵軍としてビッグ・ボスと戦い、道連れにしてでもビッグ・ボスを倒そうとした意志の強さを見染められ、国境なき軍隊にスカウトされた。

女好きのお調子者だが、任務となれば完璧にビッグ・ボスを支援する切れ者にして、経営者としての手腕も確か。

国境なき軍隊の拡大はビッグ・ボスのカリスマ性のみでなく、ミラーの経営手腕によるところも大きい。

そんな彼の活躍と、ビッグ・ボスにも伏せている、とある行動からは目が離せない。

また、ピースウォーカーの開発に携わる2人の科学者、ストレンジラブとヒューイ・エメリッヒも、今作から登場する。

ストレンジラブの研究はビッグ・ボスに大きな衝撃を与えることになる。

また、ヒューイは前作『メタルギアソリッド』や『メタルギアソリッド2』に登場したキャラクター、オタコンことハル・エメリッヒの実の父親だ。

今作では、オタコンの回想でしか見られなかったヒューイ・エメリッヒの生身の姿を見ることができる。

ストレンジラブはAI、ヒューイ・エメリッヒはハードと、其々の分野のスペシャリストである彼らがビッグ・ボスと出会い、何を思い、何を決断するのかも本書の重要なポイントだ。

かつての仲間との対立

この兵器は、CIPHER(サイファー)の創造物よ

今作の敵は、国家ではなく「イデオロギー」という曖昧な存在だ。

ピースウォーカーの開発責任者であるCIA中米支局長ホット・コールドマンは、核抑止による完璧な平和を目指している。

全面核戦争による文明崩壊のリスクは「核による報復」を躊躇わせ、結局は最初に核を用いた国が勝利する、という可能性を危惧する彼は、核が発射されれば自動的に報復の核を撃つ兵器、即ちピースウォーカーによって完全な核抑止を目指す。

そしてその影に見え隠れする「サイファー/ゼロ少佐」の陰。

ゼロ少佐はかつてビッグ・ボスと共闘していたが、ザ・ボスの遺志への解釈の違いから決定的な溝ができていた。

1つの遺志への解釈の違いから、2度と抜け出すことのできない泥沼に足を踏み入れた彼らの戦いにも注目だ。

「核抑止論」の是非と「平和」の意味

そこには、国も思想も、イデオロギーもない

今作の大きなテーマは、「核抑止」だろう。

核の発射を核の恐怖で食い止めるという、ウロボロスの輪にも似た、このグロテスクな平和の構造は、米ソの冷戦時代に実際に起こっていたことであり、更に我々読者の住む現実世界においても、今なお有効な理論である。

今作はその是非を、平和を愛する少女「パス」と兵士に憧れる少年「チコ」を通し、見事に描き切っている。

兵士に憧れ、ビッグ・ボスを見続けたチコが何を学び、どのように成長してゆくのか。

「平和」を意味する名を持つ少女、パスの真の目的とは。

彼らの活躍と、そしてその行き着く先は、ビッグ・ボスの生き方すらも変えてゆく程であり、「メタルギアサーガ」において欠かすことのできない要素だ。

まとめ

『メタルギアソリッド3 スネークイーター』の正統続編である本作は、冷戦の英雄であるビッグ・ボスがやがて『メタルギア』や『メタルギアソリッド』で描かれたような最悪のテロリストへと変貌してゆくまでの、大事なピースである。

核抑止という曖昧故に強大なイデオロギーと向かい合い、彼が見つける答えは、その後の物語に大きく影響を及ぼしていく。

更に本書には、メタルギアシリーズに登場する中でも最初に「メタルギア」と呼ばれた個体が登場するなど、見所は盛り沢山だ。

「メタルギアサーガ」という巨大な物語を追う中で、決して外すことのできない1冊だろう。

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