伝説の英雄にして最悪のテロリスト、ビッグ・ボス。
アウターヘブン蜂起やザンジバーランド騒乱を巻き起こし、世界を混乱に陥れた彼は、一体どのような人物だったのか。
何を思い、何を求めての戦いだったのか。
ビッグ・ボスのルーツの一端が明かされる、「メタルギアサーガ」始まりの物語!
目次
こんな人におすすめ!
- 歴史に興味がある人
- メタルギアシリーズが好きな人
- メタルギアシリーズに興味はあったが、ゲームが苦手でプレイ出来なかった人
あらすじ・内容紹介
1964年、冷戦下のソ連に1人の男が降り立った。
彼こそが、後に伝説の英雄「ビッグ・ボス」と呼ばれる男。
コードネームは「ネイキッド・スネーク」。
米国の特殊部隊「FOX」。
その隊員としての初任務は、ソ連の兵器開発者、ソコロフ博士の亡命を支援する「バーチャス・ミッション」だ。
ネイキッド・スネークの師である伝説の兵士「ザ・ボス」の協力の下、任務は成功かに見えた。
しかし任務の最中で突如ザ・ボスが裏切り、ソ連への亡命を宣言。
更にソ連の軍事組織「GRU」に属するヴォルギン大佐が小型ミサイル「デイビー・クロケット」をソ連国内で発射したことで米ソの関係は致命的に悪化し、任務は失敗に終わった。
そしてヴァーチャス・ミッションの失敗から1週間後。
最後のチャンスとして、ネイキッド・スネークに任務が告げられる。
その任務「スネークイーター」の内容は、連れ去られたソコロフの奪還と彼が開発した兵器「シャゴホッド」の破壊、ヴォルギン大佐の抹殺。
そして最愛の師であるザ・ボスの抹殺という、過酷なものだった…。
「メタルギアサーガ」の始まりにして、ビッグ・ボスのルーツが明かされる「メタルギアソリッド3」のノベライズ版!
『メタルギアソリッド スネークイーター』の感想・特徴(ネタバレなし)
後に世界を混乱に陥れる、世界最高蜂のチーム
俺は、……スネークだ
今作の大きな魅力は、前作までのメタルギアシリーズに登場し、世界を混乱に陥れたキャラクターたちの「生身の姿」を見られる点だろう。
後に伝説の英雄にして最悪のテロリスト「ビッグ・ボス」になる未来が待つネイキッド・スネークも、今作では単なる強くて親しみやすい一介の兵士だ。
師である「ザ・ボス」と共に完成させた近接格闘術「CQC」で戦い、冷静な判断で敵を倒す一方で、仲間の前では冗談を言い、成長過程の者には敵であってもアドバイスを与える。
ユーモアとハードボイルドが同居する非常に魅力的なキャラクターであり、前作まではあまり感じられなかった人間味を感じさせる。
また、いずれはビッグ・ボスとアメリカを二分する対立を起こすゼロ少佐も、今作ではネイキッド・スネークを支援し、冗談も言い合う仲だ。
ネイキッド・スネークの装備の中に、彼の好物である葉巻を忍ばせるといった気遣いや、軽妙なやり取りは、微笑ましくもあり、後の対立を思えば物悲しくもある。
また、「メタルギアサーガ」全体を通しての主人公、ソリッド・スネークや、彼と対立するリキッド・スネークなどの誕生させる「恐るべき子供達」計画に関わり、世界の混乱を加速させる存在「パラメディック」。
彼女もまた、今作ではネイキッド・スネークの優秀なサポーターとして活躍する。
「メタルギアソリッド1」では、リキッド・スネークたちの人質として登場した「シギント」も、装備に変わった拘りを持つ陽気な人物として描かれている(余談だが、メタルギアシリーズの大きな要素である「段ボールを使った偽装」を最初に提案したのも彼である)。
彼らは後に「メタルギアサーガ」において重要な役割を持ち、世界を恐怖と混乱に陥れ、そして滅んでゆく存在である。
しかし、そんな彼らにも人間としての個性があり、決してただの悪人などではないことが分かる。
彼らが一丸となれば、それは即ち世界最高峰の能力を備えたチームだ。
其々の専門分野を極めたと言っても過言ではない彼らが任務に当たる様は、本書の大きな見所だ。
個性溢れる敵キャラクター
そうだとも、核戦争の英雄を作ってやろうではないか
勿論、今作に登場する「敵キャラクター」達の魅力も、主人公達に負けてはいない。
ソ連の特殊部隊GRUの中でも生粋の鷹派であるヴォルギン大佐は、ボクシングの世界ヘビー級チャンピオンにして無類の拷問マニアだ。
彼の目的と、その為にソコロフを拉致監禁してまで作らせていた新型兵器「シャゴホット」。そして秘密裏に隠し持っているとされる「賢者の遺産」。
ヴォルギン大佐そのものが強敵なだけでなく、彼の行動は全てが「メタルギアサーガ」に大きな影響を与える。
そして、メタルギアシリーズの全編を通して登場する敵キャラ、リボルバー・オセロット。
「メタルギアソリッド」や「メタルギアソリッド2」で華麗なリボルバー捌きを見せていた彼も、今作ではまだまだ青二才の様子だ。
その未熟さをネイキッド・スネークに指摘されながら、徐々に強さを増してゆく彼の成長にも注視したい。
その他にも、今作には謎の支援者「エヴァ」が登場する。
ヴォルギン大佐の側に就きながら、ネイキッド・スネークに協力する彼女の行動からも、目が離せない。
真の「愛国者」
お前を愛し、武器を与え、技術を教え、知恵を授けた。もう私から与えるものは、なにもない
「メタルギアサーガ」を語る上で絶対に欠かせない存在が、今作に登場する「ザ・ボス」だろう。
又の名を「無情の歓喜/ザ・ジョイ」と呼ばれ、更には特殊部隊の母とまで言われる彼女の裏切りは、ネイキッド・スネークに大きな衝撃を与える。
彼女は自身の部下「コブラ部隊」を従え、ネイキッド・スネークの行手を阻む。
霊媒兵士の「深遠なる悲哀/ザ・ソロー」。
蜂兵士と呼ばれる「至高の痛み/ザ・ペイン」。
奇怪な動きで敵を惑わす「至純の恐怖/ザ・フィアー」。
100歳を超えたスナイパー「真実の終焉/ザ・エンド」。
元宇宙飛行士の「無限の憤怒/ザ・フェーリー」。
戦場に特別な感情を見出した、もはや人間を超えた能力を持つ戦士達を前に、ネイキッドスネークがどの様に立ち向かうのか。
ザ・ジョイとも呼ばれるザ・ボスが見出した「歓び」とは何なのか。
オオアマナの花が咲き乱れる中で、ネイキッド・スネークとザ・ボスは戦い、語り合う。
彼女の真の目的が語られるシーンは、きっと読者に何かを訴えかけるだろう。
まとめ
「メタルギアサーガ」始まりの物語とも言える今作は、其々の思惑や感情が縺れ合い、非常に複雑な様相を呈している。
この戦いを経た者達が、皆一様に悲劇に巻き込まれていくのは、前作までで既に分かっていることだ。
それでも戦いの中に友情があり、歓びがあったことが明かされるこの物語は、「メタルギアサーガ」を追い続けたプレイヤー、または読者にとって希望の光となるのではないだろうか。
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