万物の霊長を自称していた人類は、しかし思い知らされることとなった。
人類よりも遥かに強大で、万物を随えるかのような体躯を持って襲いくる巨大生物〈怪獣〉。
そして、その中でも異様なまでの力を持つ、怪獣たちの王〈ゴジラ〉。
人類は如何にして彼らと戦い、そして敗れていったのか。
ゴジラシリーズ史上初のアニメーション作品として描かれた『GODZILLA 怪獣惑星/決戦機動増殖都市/星を喰う者』3部作に連なる、前日譚!
目次
こんな人におすすめ!
- 怪獣が好きな人
- 『ゴジラ』シリーズが好きな人
- アニメ版GODZILLAを観た人
あらすじ・内容紹介
かつて万物の霊鳥として地球を我が物のように闊歩していた人類は、しかし更なる強大な生物〈怪獣〉によって、その座を追われることとなる。
アメリカ合衆国ボストンにて、人類が初めて遭遇した怪獣〈カマキラス〉を皮切りに、世界各地で出現を続ける怪獣たち。
頻出する怪獣との果てなき戦い。
数多くの敗北と僅かな勝利。
異星人〈エクシフ〉〈ビルサルド〉との遭遇と協力。
そして、怪獣すらも恐れる怪獣の王〈ゴジラ〉の出現。
人類は、如何にして怪獣たちと戦い、敗れ、地球を去るに至ったのか。
怪獣が現れ始めた当時を、前線の兵士、あるいはそれを指揮する将官や政治家、科学者、不運にも怪獣に遭遇してしまった一般人たちの目線から、インタビュー形式で振り返る。
謎に満ちたアニメーション映画『GODZILLA』の謎の一端が明かされる、唯一無二の小説版!
『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』の感想・特徴(ネタバレなし)
頻出する怪獣たちとの、戦いと敗北の歴史
人類の生存圏確保に関する合理的選択の提案
本作の1番の魅力は、登場怪獣の多さと、その暴れっぷりだろう。
本書の1番最初には、人類が如何にして地球を捨てるかに至った過程を辿る、短い〈提案書〉が付属している。
また、世界地図には〈どの地域にどんな怪獣が出現し、どれほどの被害が出たか〉も記されている。
そこに記されている怪獣たちは、非常に多種多様だ。
出現する怪獣は、〈ラドン〉や〈アンギラス〉、〈ヘドラ〉〈ビオランテ〉のようなメジャーな怪獣から、〈グリフォン〉〈ゴロザウルス〉、更にはマグロ食ってるヤツこと〈ジラ〉といったマイナーな怪獣まで、まさにオールスターと呼ぶに相応しい。
本書は東宝の映像作品として登場したこの怪獣たちの設定を忠実に守りながら、実際に暴れればどれほどに被害が出るのかを、読者に対してまず〈事実を報告している年表〉として客観的に提示している。
その上で、メジャーどころからマイナー怪獣まで様々な怪獣が暴れ回る様を〈一般人〉の目線で語る本書は、より怪獣の恐ろしさを思い知らせてくれるだろう。
そして当然ながら、神秘的な羽を持つ〈あの怪獣〉も登場する。
シリーズの中でも屈指の人気を誇る〈あの怪獣〉の活躍からは目が離せない。
また、本書は(おそらく)唯一の〈ガイガン〉が味方として活躍する小説でもある。
ガイガンの壮絶な戦いの様も、本書の大きな見どころだ。
怪獣王〈ゴジラ〉の恐怖
―私を含む人類は、ヤツに想像を絶する恐怖を植え付けられた。
そんな多様な怪獣が登場する本作の中でも、当然ながら絶対の存在感を誇るのが怪獣王〈ゴジラ〉だ。
その他の怪獣が、かなりの被害を出しながらも人類の既存兵器で倒せるものなのに対して、ゴジラに対する有効な手立ては一切存在しないものとして描かれている。
同じ怪獣すらも逃げ出すほどの異常な強さ、異星人の技術を持ってしても攻撃が通らない頑丈さ、そして年表から察せられる、異様なまでの〈犠牲者の数〉。
その圧倒的なまでの強大さを、本書は徹底して描いている。
少しずつではあるが、怪獣への有効な手立てが生まれつつあった中での希望。
それを完膚なきまでに打ちのめす怪獣王の恐怖を徹底的に描写する様子は、1954年に生まれた最初の作品である『ゴジラ』をも彷彿とさせる。
近年では〈正義の味方〉のように描かれることも多いゴジラが、人類に牙を向いた時の恐怖を是非とも満喫してほしい。
徹底的な〈個人からの目線〉
私にできることは、そんな彼らが残した声、彼らの生きた証を誰かに伝えることだけだ。
本書が最も拘っているポイントは、徹底的な〈個人の目線〉から怪獣を語っている点だろう。
本書は、地球から脱出するための宇宙船〈アラトラム号〉に乗船し、地球を後にする予定の調査員が、怪獣に出会った人々の証言を聞いて回る、というインタビュー形式で展開していく。
インタビューの対象者は、初めて出現した怪獣に単身立ち向かった勇気ある一般市民や諜報機関の人間から、前線で怪獣との戦いを続ける兵士、あるいは兵士を指揮する将官や政治家、怪獣の分析を続ける科学者、怪獣の頻出地域から難民を救おうと努力し続ける市長など、様々だ。
そんな彼ら彼女らが怪獣と遭遇し、避難もしくは戦闘、あるいは恐怖し絶望していく様を、実体験として丁寧に描いている。
怪獣が登場する映像作品を観ている時、視聴者は〈神の視点〉に立っているからこそ、純粋に怪獣の暴れっぷりを楽しめる。
本書で描かれる証言の数々は、そんな神の視点から視聴者を引き摺り落とすことで、実際に怪獣が出現したかのような緊迫感を持って、怪獣の恐ろしさを味わうことができるだろう。
まとめ
アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星/決戦増殖機動都市/星を喰う者』に連なる前日譚の本書は、しかしその登場怪獣の多さや描写の丁寧さから、単独の小説としても非常に楽しんで読むことのできる作品だ。
登場した各怪獣は、どれも映像作品に登場したことがあるものたちなので、もし気になる怪獣がいれば、その怪獣が登場する映像作品を探すという楽しみ方もできる。
ゴジラシリーズのファン向けでありながら、ゴジラ初心者が様々な作品と出会う為のツールとしても活用できる、非常に満足度の高い作品だ。
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