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『ウルトラマンデュアル』あらすじと感想【早川書房と円谷プロが生み出した、ウルトラ叙事詩】

『ウルトラマンデュアル』あらすじと感想【早川書房と円谷プロが生み出した、ウルトラ叙事詩】

地球侵略を目論むヴェンダリスタ星人の野望は、光の国のウルトラ戦士との激しい戦いの末に打ち砕かれた。

しかし、辛うじて生き残った〈キップ〉〈ラト〉〈メイス〉の3人は、超常の力をもって人類に屈服を強いる。

人類はウルトラ戦士に希望を託しながらも、表向きは彼らに追従するしかなくなった。

ウルトラ戦士唯一の生き残りであったウルトラの聖女〈ティア〉は、人類の立場を慮って〈侵略者〉の汚名を纏い、屈服を拒む地球人たちと共に抗戦を続ける。

正義の意味を問う、壮大なウルトラの叙事詩。

こんな人におすすめ!

  • SF小説が好きな人
  • ウルトラマンが好きな人
  • 軍事、外交戦略モノ好きな人

あらすじ・内容紹介

地球征服を目論むヴェンダリスタ星人と、それを阻止しようとするウルトラ戦士。

双方に大きな犠牲者を出す激闘の末、ウルトラ戦士は地球侵略の野望を打ち砕く。

しかし、生き残りのヴェンダリスタ星人〈キップ〉〈ラト〉〈メイス〉は、超常の力をもって人類を恐怖に陥れる。

表向きはヴェンダリスタ星人に屈服する姿勢を見せなければならない人類の事情を慮り、ウルトラ戦士唯一の生き残りである聖女〈ティア〉は、東京郊外の一部地域を〈光の飛び地〉として侵略支配を宣言する。

地球人は、ウルトラ戦士に希望を託しながらも、その手助けをする道を封じられた。

ヴェンダリスタ星人に抗う志を持つ人間は、国籍を捨てて〈光の飛び地〉に集い、ティアの力を借りて〈ウルトラマンデュアル〉となり、人類から見放された戦いに身を投じていく…。

円谷プロと早川書房がSF長編として再編した、正義と悪の意味を問うウルトラ戦士の大叙事詩‼︎

『ウルトラマンデュアル』の感想・特徴(ネタバレなし)

ハードな世界観

あなたの存在は死亡扱いとは意を異にし遅くとも一二時間以内には戸籍簿および住民基本台帳から消除されます

今作『ウルトラマンデュアル』は、テレビ番組である『ウルトラマンシリーズ』とは一線を画す、ハードな世界観で物語が進行していく。

ヴェンダリスタ星人に実質支配された地球は、さながらディストピアだ。

超常の力を持つ彼らは、人間の子供に憑依して人々に監視の目を巡らせる。

更に怪獣を自在に襲撃させることができるため、怪獣への対抗手段を持たない人類は抗う術がない。

それ故、ウルトラ戦士に希望を託しながらも味方をすることができない人類は、ヴェンダリスタ星人もウルトラ戦士の聖女〈ティア〉をも〈侵略者〉として定め、中立の立場を取ることしかできなくなっている。

その情勢は概ねヴェンダリスタ星人が優勢であり、ティアはほぼ孤立無援の戦いを強いられており、読んでいて安心感を抱けるシーンは殆ど無い。

加えて、人類の身勝手さも嫌というほど描かれる。

ヴェンダリスタ星人がティアに向けてのみ怪獣を差し向けるのを良いことに日々の安穏を享受し、自らが不利益を被れば強者であるヴェンダリスタ星人ではなく、劣勢であるティアにのみ非難の声を上げる始末。

強者に支配され、被支配者は更に劣勢なものを虐げる様は、非常に鬱屈とした気分を抱かせる。

しかしそんな状況の中だからこそ、少数の勇気ある者が輝いて見える。

国籍を捨て、全てをかけて〈光の飛び地〉に足を踏み入れウルトラ戦士を支援する人々、〈ティアズ・スタンド〉。

そして、それでも愛をもって人類に接するウルトラの聖女ティア。

更に、表向きに支援できないながらも、政治的な駆け引きを持ってヴェンダリスタ星人の野望を砕こうとする者。

逆風が吹き荒れる中で、それに抗って生きる人々の輝きは、かつてウルトラマンに憧れた者にとっての1つの〈憧れの姿〉なのでは無いだろうか。

ウルトラ戦士の激闘

こんどこそシラヌイだ!

もちろん『ウルトラマン』と銘打たれている以上、今作でもウルトラ戦士による激闘は当然描かれている。

今作でウルトラマンに変身するのは、〈光の飛び地〉でウルトラ化した〈ティアズ・スタンド〉の中でも、巨大化して戦闘ができる〈ファイタータイプ〉の人間だ。

相撲のようなスタイルで、襲いくる様々な怪獣と戦う〈ウルトラマンデュアル〉は、その経験不足から苦戦が多い。

しかし、怪獣の圧倒的な力に押されながらも、〈ウルトラマンデュアル〉は諦めることなく怪獣との戦いに挑んでいく。

国籍も剥奪され、称賛を受けることのない戦いに身を投じる彼らは、なぜ戦うのか。

〈ウルトラマンデュアル〉の活躍からは、目が離せない。

カバーイラストは、円谷プロの後藤正行氏

シルバーの体に赤と黒の模様

今作のカバーイラストを手掛けるのは、円谷プロダクションに所属するデザイナー、後藤正行氏だ。

ウルトラシリーズのヒーローや怪獣などのデザインを手掛ける氏は、ド派手で大胆なデザインを得意とする。

初登場から10年以上経った今でも、根強い人気を誇る〈ウルトラマンゼロ〉や、そのライバルにして悪のウルトラマン〈ウルトラマンベリアル〉、更に2020年現在で絶賛放映中の〈ウルトラマンZ〉などのデザインを手掛ける氏のカバーイラストは、ファンであればそれだけで満足できる逸品だろう。

迫力ある壮麗な〈ウルトラマンデュアル〉のイラストを、心ゆくまで眺めて欲しい。

まとめ

早川書房と円谷プロが新生させた今作は、従来のウルトラシリーズとは一線を画すハードな世界観のSF小説だ。

鬱屈とした社会の中で、それでも戦いを続ける人々の活躍は、かつてウルトラマンに勇気を貰った読者に、再び勇気を与えてくれることだろう。

また、近年のウルトラマンのデザインを数多く手掛けた後藤正行氏のイラストも壮麗で、ファンであれば眺めているだけでも楽しい1冊であることは間違いないだろう。

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