アニメ化もされた大人気漫画『ゴールデンカムイ』。
帰還兵の杉元とアイヌの少女・アシリパは、アイヌが埋めた金塊の謎を追い北海道を旅する中で、さまざまな美味や珍味を食い尽くしていく。
今回は『ゴールデンカムイ』から、食の異文化コミュニケーションの真髄を学んでいきたい。
食材へのリスペクトを忘れるな!
杉元とアシリパは基本狩りで食料を調達している。
ヒグマは言うに及ばず、うさぎにキツネにリスに鹿、山野の食材は豊富だ。
本人に狩猟の知識と技術あれば、美味しい糧を恵んでもらえる。
自分が獲った食材だからこそ愛着がわく。
大前提として狩りとは、他の生き物の命を奪う行為であって、「食べる」とはその命を自分の中に取り入れることだ。
だからこそアシリパや杉元は自分たちが獲った動物を丁寧に捌き、残さず綺麗にたいらげる。
アシリパと祖母は食事の際、首の後ろに手を回して憑き神様(アイヌの守護霊のようなもの)にお供えするのだが、ここからも彼らの食へのリスペクトが伝わってくる。
自分たちが獲って調理した動物や魚を、神に捧げるに値するものと見なしているのだ。
また、アイヌには山で保護した子熊を集落で育て、ある程度大きくなったら殺して食べる文化がある。
その際は盛大な祭りをして熊の魂を送り出すのだが、自分が獲ったものを育て、自分の手で捌いて調理するからこそ、命へのリスペクトが生まれるのではないだろうか。
ゲテモノ料理に挑戦して新たな美味に開眼せよ!
『ゴールデンカムイ』にはいかにもゲテモノな料理がたくさん登場する。
筆頭はアシリパがやたらと食わせたがる脳味噌だ。
どうやら脳味噌は動物の身体で一番おいしい部位らしく、仕留めた本人が特権として食べるのだそうだ。
最初はドン引きしていた杉元も、話が進むと脳味噌ご開帳のたびテンションを上げ、進んで人に食わせようとするから面白い。
一方アシリパは杉元の好物の味噌を「オソマ(ウンコ)だ!」と拒否していたが、彼との和解の証明として、ぷるぷるはふはふ震えながら口にする。
結果は見事昇天、新しい美味に開眼していた。
あなたが地方や海外を旅し、一見ゲテモノにしか思えない料理と巡り会っても、まずは一口試してみてはいかがだろうか。
世界は広い。色んな料理がある。
地域によっては虫食もメジャーだし、バロット(たまごの中の雛を煮殺して食べる料理)を好んで食べる人もいる。
このバロットは有名なフィリピン料理であり、栄養豊富で大変美味とされている。
見た目のグロさだけで決め付けず、自分にはゲテモノにしか見えない料理でも、好んで食べる相手を尊重する。
新たな食に挑戦してみるのも吉だ。
「ヒンナヒンナ」と分かち合え!
「ヒンナ」とはおそらく本作でいちばん多く出てくる言葉だ。
これはアイヌ語の「おいしい」で、杉元やアシリパをはじめとする登場人物たちは、どんな料理でも「ヒンナヒンナ」と喜んでいただく。
「ヒンナ」はコミュニケーションを円滑にする魔法の言葉である。
「チチタプ」も同様だ。
アイヌたちはおいしい料理を「ヒンナヒンナ」と喜び、「チチタプ」と唱えながら食材を刻むことによって、ともに食卓を囲む仲間との団結を深めていく。
食事を通したコミュニケーションの一環として発声を重んじる彼らの姿を見ていると、食べる前の「いただきます」と食べた後の「ごちそうさま」が、いかに大切かわかるのではないだろうか。
「おいしいおいしい」と現地の言葉で積極的に料理を分かち合えば、異文化圏の相手とも案外簡単に仲良くなれるかもしれない。
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