今も昔も根強い人気を誇る魔法少女もの。
モバイルゲームや漫画、ラノベやアニメの世界では、最高にキュートで強い魔法少女たちが敵との戦いに身を投じ、華やかなパフォーマンスを演じている。
が、最近の魔法少女は女の子だけとは限らない。
今回は男の魔法少女が流行る理由を考察していきたい。
男の子でも見た目が可愛ければ関係ない
実のところ男の魔法少女を描いた作品はたくさんある。
彼らは変身前は男だが変身後は女になる、いらゆるトランスセクシャルだ。
このジャンルは近年とくに勢力を増し、支持層を厚くしている。
試しにpixivなどで「ТS」を検索してみるといい、その手のイラストや小説がザクザク出てくる。
男の魔法少女に萌えるのは男性オタクが殆どだ。
もちろん女性ファンもいるが、彼女たちが「愛でる」感覚なのに対し、男性ファンは「萌え」に特化している。
『魔法少女育成計画』のラ・ピュセル(本名・岸辺楓太)は、竜のしっぽを生やした騎士モチーフの魔法少女だ。
ラ・ピュセルはとても美しい。
しかもドラゴン属性まである。
内面も高潔で慈悲深く、悪しきをくじき弱きを助けるヒーロー気質。
いわゆる「くっ殺!」タイプの女騎士である。
世間ではバーチャル美少女受肉おじさん、略してバ美肉おじさんや男の娘Vtuberがもてはやされている。
外側は萌え萌え美少女、中身はただのおっさん。
否、ただのおっさんというと語弊がある。
彼らは本気で「美少女の自分」を演じている。
自らの理想の美少女になりきって、バーチャルの世界で視聴者と交流しているのだ。
バ美肉おじさんや男の娘キャラが肯定的に受け入れられる大前提として、性別なんてどうでもよくなるほどに外見が可愛いというのがある。
世間では「こんな可愛い子が女の子のはずがない」という迷言まで生まれたほどだ。
ビジュアルさえ萌え萌えなら中身の性別など些細な問題、むしろその方がぐっとくる風潮は、もちろん魔方少女ものにも言える。
「男なのに魔法少女なんて」その葛藤に萌える
男の魔法少女の大半は自ら望んでそうなったわけではない。
ある日突然選ばれて有無を言わせず、という展開が多い。
自ら願いを叶えたものは少数派で、楓太はこのレアな例外にあてはまるわけだが、彼とて女騎士の格好で人助けするはめになるとは思わなかったはず。
楓太は子供の頃から魔法少女もののアニメやラノベが好きで、同じ趣味の幼馴染・小雪とも気が合ったのだが、中学に上がると二人は疎遠になる。
魔法少女が好きだと周囲にバレたら引かれるからとひた隠し、もう一方の趣味のサッカーに打ちこむ楓太は、他人の目を気にする典型的な思春期の男の子といえる。
楓太は魔法少女が好きなだけでメンタルは健全な男の子だ。
トランスジェンダーというわけでもなく、「女の子になりたい」と常日頃から思っているわけでもない。
ラ・ピュセルこと楓太は魔法少女として日夜働く傍ら、「男なのに魔法少女なんて……!」と常に羞恥と葛藤に苛まれる。
他の魔法少女みたいに中身まで女の子じゃないのに魔法少女に選ばれてしまった、そのいたたまれなさが可哀想でかわいい。
男の魔法少女たちにとっては存在自体が見せしめ、羞恥プレイなのだ。
そこに読者は興奮する(きっと)。
もしこれが女の子だったら「いい年して魔法少女なんて……」と恥ずかしりはしても、苦悩はずっと軽くなるのではないか。
男性諸君はもし自分だったらと空想してほしい。
信じてもらえるかどうかはぬきにして魔法少女に選ばれたことを人に言えるだろうか?
絶対言えない。
男の子と女の子、メンタルいいとこどり!
男の魔法少女の最大の強みは、男の子と女の子のメンタルの美点を両方兼ね備えている点だ。
彼らはもともと男の子だから男の気持ちがわかり、魔法少女になったことで女の気持ちもわかるようになる。
スカートの穿き心地がどんなものかなんて、魔法少女になることがなければ一生知ることがなかった感覚。
きわめて貴重な体験である。
楓太は自分が魔法少女になったことで、男性が女性をどんな目で見ているか身をもって痛感する。
自分が性の対象として消費される現実を、いやがおうにも意識させられてしまうのだ。
『魔法少女育成計画』の魔法少女はもれなく全員が絶世の美少女。
ラ・ピュセルに変身した楓太が好きなアニメのオフ会など行こうものなら、ストーカー化したメンバーに追いかけ回されて踏んだり蹴ったりだ。
そうして楓太は女の子の苦労を学んでいく。
他作品の男の魔法少女たちも、魔法少女として活動していく中で自らの在り方を見詰め直し、現実との折り合いを付けていく。
女の子が生まれ持ったハンデや苦労を知ればこそ、口先だけではないいたわりの感情が持てる。
そして少年漫画的な男の子の正義感と包容力が、女の子を庇護する気持ちを補強する。
故に男の娘の魔法少女こそ至高で最強なのだった。
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