3月のライオン 水のように心に染みる励ましの名言・名シーン15選

幼いころに家族を亡くし、天涯孤独の身になった桐山零(きりやま れい)。

父の将棋仲間で親友だったプロ棋士の男性・幸田(こうだ)の家庭に引き取られ、居場所を見出すために、生きるために将棋を指し続けることを選んだ桐山が、やがて将棋を通じて様々な出会いを経験し、受け入れられる場所を得てゆく成長の物語。

今回はそんな『3月のライオン』の名言を15個紹介する。

目次

玉のようにつややかな素晴らしいおともだちね…(川本あかり/第1巻Chapter8)

桐山が、友人でありライバルの二階堂晴信(にかいどう はるのぶ)と連れ立って街を歩いているのに出会った時の川本あかり(かわもと あかり)の台詞。

あかりと桐山は、道端で悪酔いして蹲っていた桐山をあかりが家に連れ帰り介抱したことが縁で知り合った。

あかりは痩せた猫などを見捨てておけずに拾って帰りたくさん食べさせて、ふくふくふっくらとさせることが好きな女性で、人間を拾って帰ったのは桐山が初めて。

以来、桐山を夕食に招いているが、いつまでもふっくらしない桐山を案じている。

そんなあかりの前に現れたむっちり艶やかな体型の二階堂はあかりの心を鷲掴みにする。

桐山と二階堂を夕食に招いたあかりは二階堂に食の好みを質問。

薄味でたんぱく質控えめとの答えから、腎臓系の病気だろうかと察したあかりは特売で買って来た鶏肉で作れるから揚げやハンバーグでなくうす味でも楽しめるような、一品あたりの使用食品数の多い手の込んだ料理を提供する。

二階堂の前に4品料理を並べて、味付けは自由にしてみてね、とさらっと言えるあかり。

この細やかな気遣い、見習いたいものである。

プロになるのがゴールなんじゃない(幸田/第1巻Chapter10)

交通事故で急死した父の将棋仲間だった、プロ棋士の幸田の家に引き取られた桐山。

彼は自分の立ち位置が、将棋が好きかとの幸田からの問いに「はい」と答えたことで築かれたものだと幼いながらに知っていた。

必死に将棋を指し続ける桐山は幸田の実子であり桐山の義姉・香子(きょうこ)と義弟・歩(あゆむ)を凌ぐ実力を身に着けるに至る。

桐山に負けたショックで歩は学校で塞ぎがちになり成績も落としてしまい、その様子を案じた桐山は幸田に相談する。

しかし幸田は冒頭の台詞に続き、自分で自分を説得しながら続けられるようでないとダメだ、と語り、厳しいプロの現実を桐山に諭す。

進めば進むほど周りに人はいなくなる。

自分で自分を調整・修理できる人間しかどのみち先へは進めなくなるんだよ、との言葉はプロ棋士としては正論だが、まだ小学生のわが子に対する言葉としては酷である。

こういったことが積み重なり、桐山はカッコウの托卵を自分の現状と同じだと考え、自分がいると父や家族を食いつくしてしまうと思うに至る。

そして、桐山は高校へは進学せずに、プロ棋士として1日でも早く自立し家を出ることを決意するに至るのだった。

子どもたちは父に認められたいと願っていて、そのためには桐山を凌ぐか同等の努力をしないといけないと思い知らされ家庭内が生きづらい場所になり、桐山も生きるために将棋を指すのは辞められない。

この環境、子どもたちにはあまりに厳しい。

『逃げなかった』って記憶が欲しかったんだと思います(桐山零/第2巻Chapter13)

プロ野球選手を目指している中学生・高橋勇介(たかはし ゆうすけ)に、一年空けて高校に行きなおしたのは何故なのかと問われた桐山が語った答え。

将棋は生きるために選んだ手段であり、現状はプロになっているし自立したと捉えればもう目標は果たしたと言えるのではないかと思った桐山は勝つ理由を見失って連敗中だった。

そんな時に交わしたこの時の会話は、桐山が己を見直すきっかけになった。

高橋は、ピンチの時に自分を信じろと言われるが、その時にサボった記憶があると上手くいかないことを引き合いに出し、自分の言葉でまとめて桐山と会話を交わす。

己を信じるためには、自分を納得させられるまで努力をするしかないのだ。

『潔い』のと『投げやり』なのは似ているけど違うんだ!(二階堂晴信/第2巻Chapter14)

二階堂が将棋の解説番組で桐山に対して言った台詞。

「カッコつけんな桐山っっっ!!!」
「本当に勝ちたいんなら粘れっっっ」
「攻めるだけじゃなくちゃんと守れっっ」
「最近のお前ちょっと変だぞ!?」

の後に続く台詞である。

二階堂は重い持病を抱えており、あまり息の上がるようなことが出来ないにも関わらず、声を荒らげて親友を心配し収録の後には貧血を起こしてしまっている。

以降、桐山は窮地に立たされた時に二階堂の台詞を思い出し、難局を脱するのだ。

自分のことを良く理解してくれている友人の忠告ほどありがたいものはない

解ってるけどできねーとか言うんならやめろよ!!(桐山零/第2巻Chapter24)

だれもいない公園で叫んだ桐山の台詞。

負けると酒を飲んで家族に当たる酒癖の悪さが災いし、離婚を控えた棋士・安井との対局で勝った桐山は忘れもののクリスマスプレゼントの包みを抱えて安井を追いかけたのだが、安井は気まずさから自分の荷物ではないと受け取ろうともしない。

桐山がそんなはずはないと重ねて言葉をかけると、安井は「あーあ最後のクリスマスだったのにな」と毒づいてプレゼントを引ったくって立ち去る。

桐山には将棋で生きるしか道はない。

酒に逃げる安井の考えのぬるさに苛立った桐山は一人叫ぶのだ。

負けたくないなら、人一倍の努力をしなければならない。

桐山はそれを実行しているに過ぎないのに、周囲はそれを妬む。

妬むくらいならこっちに来るな、と桐山は激しく憤りを叫ぶ。

自分のひとりぽっちに気をとられ 誰かのひとりぽっちに気付けないでいた(桐山零/第3巻Chapter22)

風邪をひいて寝込んだ桐山の一人暮らしの部屋に、川本3姉妹が突如現れる。

病院へと連行された後に川本家に連れて行かれた桐山は、おうちに電話しましょうとあかりが言うのを聞いて、独立したのだからそこまでしなくてもと言う。

ふうん、独立ねえとジト目で答えるあかりは充電切れになっていた携帯を桐山に差し出す。

そこには育ての親・幸田からの不在着信がびっしりと入っていた。

そんな経緯で川本家で静養することになった桐山は、あかり以外が寝入ってしまった大晦日の夜に、新年を迎える節目に家族以外の自分がいていいのだろうかと問いかけるが、あかりはいてくれてよかった、片づけをするときに一人だと多分泣いちゃってたと口にする。

桐山は、いつも明るく振る舞うあかりも母を亡くした寂しい身の上であることを思い出し、自分のことで手一杯で他人の孤独を想像できていなかった自分を恥じる。

いつも笑顔で明るいあかりも、人には見せないようにしているだけで寂しさを抱えていることに気付いた桐山は思わず涙を零し、それを見たあかりも結局もらい泣きしてしまったのだった。

落ち込んでる時に冷たいもの喰ってるヤツがあるかっ(林田高志/第3巻Chapter29)

桐山の通う高校の担任教師・林田高志(はやしだ たかし)の台詞。

いつも学校に馴染めずに一人、人気のない階段に腰かけて昼食を摂っている桐山に、自分の昼食のカップラーメンを差し出しながら強く言う。

気持ちが冷えている時に冷たく味気ない食事を選んではますます気分は下がってしまう。単純明快かつ生活に役立つ一言。

『でも』が100個揃えば開く扉があればいーが はっきり言って ねーよ そんなドア!!(林田高志/第3巻Chapter29)

林田の励ましの台詞。

自分を負かした棋士・島田開(しまだ かい)の研究会に入れば得られるものが多いだろうにと桐山に提案したものの、でも、でもと煮え切らない態度をとるのでこう断言し背中を押した。

こちらもシンプルで心に響く台詞である。

仕事でかいた恥は 仕事で取り返すほかねーからな(川本相米二/第3巻Chapter31)

必ず勝つと意気込んで臨んだ一戦に負けてしまい、川本家に顔を出しづらくなった桐山の事を案じるひなたに、三姉妹の祖父・川本相米二が語った台詞。

桐山が自分で「取り返した」と思えるまでは自分で頑張るしかないと菓子作の手を休めずに語る。

大人になれば、一線で活躍している人間で恥をかいた事ない人間なんていないと嫌でも気づくと言いながら。

仕事がうまくいかないのは辛いもの。

逃げたり代替のもので気持ちを慰めた経験は誰にでもある。

しかし、最終的には仕事で取り返すしかないのだ。

菓子職人として長く地元に愛され続ける相米二の言葉は、深い。

『縮まらないから』といって それが オレが進まない理由にはならん(島田開/第4巻Chapter39)

同い年で名人の宗谷に追いつけない島田が、持病の胃痛と戦いながらも将棋を指し続ける理由を語る台詞。

天才かつ努力も惜しまない宗谷には追い付けるとは思えないと実感しつつも、「抜けないことが明らか」だからってオレが「努力しなくていい」ってことにはならないと桐山に語る。

『必要とされたい』『だから強くなりたい』それのどこが不純なんだ?(林田高志/第6巻Chapter60)

桐山が世話になっている川本家の次女・ひなた。

彼女は中学3年でいじめの標的にされてしまう。

赤の他人である自分にできることは金銭援助くらいだと考えた桐山は、金のために対局で勝ちを重ねることに強い拘りを見せる。

あかりやひなたから相談を受けつつ、世話になっている林田先生に相談を持ち掛けるうちに桐山は気持ちを整理し、せめて金銭援助しようと思っていたが川本家のみんなはそれを受け取らないと思う、と自分で気づく。

どういう手立てで彼女たちを助けられるのかと悩み迷う桐山に、林田は冒頭の台詞を述べ、続けて「お前はお前に出来る事を まずいっこいっこやるしかないんだよ」と助言する。

信じて努力を続ければ夢は叶う(山崎順慶/第7巻Chapter64)

棋士・山崎順慶(やまざき じゅんけい)は、「信じれば夢は叶う」は端折り過ぎた言葉で、正解は「信じてどのライバルよりも一時間長く毎日努力を続ければある程度迄の夢はかなりの確率で叶う」だと考えている。

努力を重ねることでしか、夢の実現はあり得ないと理解している山崎は、プロになって6年経過するがまったく先に進めなくなったと自覚している。

先へと進める「答え」を得るためには真っ暗な水底にただ一人で潜っていくような恐怖が伴う。

恐怖が勝ってしまいリミッターの効いた努力しかできなくなったと己を省みた山崎は、自身と違い苦痛をものともせずに答えを求める二階堂との対局を経て再びリミッターを設けない努力を積むことを決意する。

努力しても思ったような成果が生まれるとはかぎらない。

そうなると誰でも傷付き疲れて投げ出したくなるもの。

しかしそこで踏みとどまり、投げ出さないことでしか掴めないものがある。

世界は結果だけで回ってるんじゃないんだよ(林田高志/第7巻Chapter72)

ひなたが被害に遭ったいじめが解決したと桐山から報告を受けた林田が、自分は結局現実には何の役にも立てなかったと口にした彼に向けて言った「人に伝わるのは結果だけじゃない」に続く台詞。

一生懸命に彼女の力になりたいと考えて相談を受け止めてきた桐山のことを、きちんと人の気持ちが分かる彼女は理解していると先生は笑顔で告げる。

ちなみに桐山は現実には何の役にも立てなかったと言っているが、実際はひなたがクラスで孤立したままで迎えた修学旅行の自由行動時に駆けつけ、ストレスで胃痛に悩んでいたひなたに胃薬と消化の良いものを差し入れている。

ざっくりとした自由行動の場所と時間、それにひなたが一人の時に行きがちな場所を推理して探し当てた桐山。

無自覚ながら林田からの助言を吸収し、出来る事を考えて、いっこいっこをやり遂げていると言える。

はなから持って無い『運』や『ツキ』はこの先無くすこともない(藤本雷堂/第9巻Chapter94)

第70期名人戦、宗谷冬司(そうや とうじ)と土橋健司(どばし けんじ)の対局解説の中で、棋竜・藤本雷堂(ふじもと らいどう)が土橋を評した台詞。

勝敗を分けたものは何だったのでしょうとリポーターに尋ねられ、「将棋の神は女だというからな、『いい男』の方を選ぶに決まっているからだろう」と答える。

続けて華がない、真面目過ぎる、加えて残念なことに「運」も「ツキ」も持っていないと酷評するが、それは逆を言えば自分が重ねた努力だけでここまで来たと言えると高く評価するのだ。

曲者だらけの棋士たちの中で土橋はとても地味で真面目な性格をしている。

ポジティブで自己顕示欲が強く、土橋と真逆で灰汁の強い藤本だが、土橋の地道な努力を正しく評価する姿は確かに自惚れではなく格好良く見えてしまう。

あ いえ 付き合ってません――というかまだ伝えていないので(桐山零/第10巻Chapter104)

桐山は祖父の入院に付き添うあかりから夕食の買い出しを頼まれ、訪問した川本家で父・甘麻井戸誠二郎(あまいど せいじろう)と初めて顔を会わせる。

対面しているひなたとモモの表情の硬さに違和感を抱く桐山のメールに、ひなたからのメールで父が来ていると知ったあかりから「私が帰るまでそこにいて」との一報が入る。

誠二郎は浮気をして離婚し、妻子を捨てて川本家を出たのだった。

そんな誠二郎は今の妻と子供と、あかりたち三姉妹で一緒に川本家で暮らそう、最初は戸惑うだろうからあかりたちは祖父の家に行けばいいと提案する。

しかし桐山が川本家と関わるようになった二年半前から、川本家の人たちは一度も父親のことを口にしてこなかったし訪ねてきたこともない。

桐山は、身勝手で不審過ぎる誠二郎の背景を探ろうと林田先生と将科部の先輩で今は大学生の野口英作(のぐち えいさく)に情報収集を頼み、SNSで知り得た誠二郎の窮状を突き付け、身勝手な主張を繰り返す父親をやり込める。

そこで誠二郎が口にした、赤の他人が家庭のことに口出しをするなとの言葉に対し、桐山は次女・ひなたとの結婚を考えているので他人ではないと告げる。

いつの間にそんな仲になったのかと狼狽える誠二郎及び川本家の面々に対し、桐山が言った台詞。

ひなた本人にも伝えていない段階で、彼女の父と伯母と姉妹の前できっぱりと結婚したいと言い切る桐山の度胸に度肝を抜かれる名言。

まとめ

『3月のライオン』に登場する名言を厳選し、15個紹介した。

棋士たちの物語だが、地道な努力を重ねなければ至れない目標を抱く人や、成果を求められる仕事を抱える人の心をも支える名言に溢れている。

対局の熱い展開はもちろん、桐山が温かい居場所を得てゆく過程が優しい言葉や和やかな食事風景に彩られ、細部まで濃密に描写される本編も、気になった方にはぜひ余さず楽しんでもらいたい。

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