国内ミステリー小説おすすめ15選【新本格の台頭からゼロ年代作家の出現まで】

ミステリー小説と聞いて、真っ先に何を思い浮かべるだろう。

巧妙に組み立てられたトリック、奇抜な名探偵、あるいは愛憎入り混じった人間関係など、人によって答えは異なると思う。

その理由は、犯人の動機や用いられるトリックを通じて、ミステリーそのものが時代とともに変化しているためだ。

国内ミステリーにおいても、そのことは変わらない。

常に変化を要求されたジャンル、それがミステリーなのだ。

この記事では、国内ミステリー小説において1987年ごろから台頭してきた「新本格」と称される作品群から「ゼロ年代」と呼ばれる時代までに発表された作品のおすすめを15作ご紹介する。

ここで紹介する本にはそれぞれの個性があり、執筆された時代の変化が刻まれている。

いずれも傑作であることは、まず最初にお約束しておこう。

国内ミステリー小説おすすめ15選

綾辻行人『十角館の殺人』

新本格ミステリー時代の幕開けを告げた綾辻行人のデビュー作。

九州にある孤島を訪れた大学ミステリ研究部の7人。

その孤島にある奇妙な建物「十角館」で7人を襲う連続殺人。

ミステリーの王道ともいえるストーリー構成だ。

さらに登場人物にも「エラリィ」や「アガサ」などのニックネームがつけられており、ミステリー好きならニヤリとすること間違いない。

そんな王道ともいえるストーリーである『十角館の殺人』は、ミステリー初心者はもちろんのこと、読書をこれから趣味にしていきたい人にもオススメできる。

『十角館の殺人』を読み終わったあと、事件の真実を知った読者は「やられた!」ときっと思い、ミステリーというジャンルの虜になっているはずだ。

『十角館の殺人』あらすじと感想【これを読まずして本格ミステリは語れない】『十角館の殺人』あらすじと感想【これを読まずして本格ミステリは語れない】

法月綸太郎『頼子のために』

新本格ミステリー世代の1人である法月綸太郎の3作目。

十七歳の愛娘を殺された父親が、犯人を突き止め、殺害してしまう。

その後は父親自身が自死を選ぶ。

名探偵・法月綸太郎(のりづき りんたろう)が、その事件の真相を突き止めていくという物語だ。

ところで、新本格ミステリーには「人間が書けてない」という批判が多くあった。

つまりトリックや謎解きを重視するあまり、事件に関わっている人たちの内面を描き切れていないというものだ。

しかし、その指摘は『頼子のために』に対しては当たらない。

本作は、登場人物の様々な感情がひしめきあっている作品になっているからだ。

本作を読み終わったとき、どのような感情を読者は抱くのか、ここで断言することはとてもできそうにない。

我孫子武丸『探偵映画』

新本格ミステリー世代の1人、我孫子武丸。

小説家だけではなくゲーム『かまいたちの夜』のシナリオや漫画原作など多彩な活躍をみせている我孫子が描く本作の魅力は、まずストーリーの設定にある。

本作は、新作映画の撮影中に映画監督が失踪したというところから始まる。

残されたスタッフは、撮影済みのシーンから映画の結末やキーパーソンとなる「犯人」を推理するという筋書きになっている。

このように一風変わった設定であるだけに登場人物の台詞にも新鮮味がある。

詳しくは本作を読んでほしいが、例えば本作にある「わたし以外の、一体誰が犯人だっていうんだ」という台詞は一般的なミステリーではなかなかお目にかかることはないだろう。

凄惨な事件や重苦しいテーマが辛くなってしまったら本作を読んでいることをオススメする。

歌野晶午『動く家の殺人』

本作は青年探偵・信濃譲二シリーズの完結編にあたる。

探偵・信濃譲二(しなの じょうじ)が、とある小劇団にマネージャとして参加するが、そこで殺人事件に巻き込まれる。

六年前に起きた稽古中の死亡事件とのかかわりを疑う信濃は殺人事件の調査をはじめる。

本作には信濃譲二という名探偵の他にも風変わりな建物も登場する。

この設定はミステリーの王道ともいえるものだろう。

しかし『動く家の殺人』の最初のページに読者は驚かされる。

青年探偵・信濃譲二の死が宣告されているからだ。

それも殺人事件の被害者という形で。

けれど、どんなときでも不敵で、知的で、時には大胆な、カッコイイ名探偵という存在を、読者はミステリーにどうしても期待してしまう。

でも安心してほしい。

たとえ探偵が死んだとしても、読者のそんな期待を本作は決して裏切らない。

麻耶雄嵩『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』

首無し死体に風変わりな名探偵、双子の姉妹というギミック。

そして古城を舞台にした事件。

ミステリー小説の代名詞とでもいえる要素が詰め込まれたのが『翼ある闇』だ。

本作は、なによりストーリーが魅力的だ。

メルカトル鮎(あゆ)と木更津悠也(きさらず ゆうや)という名探偵が2人も登場し、推理合戦を繰り広げるのだから。

さらに本作に用意されている真相のスケールも歴史小説のような壮大さがあり、ミステリーとしての面白さも申し分ない。

推理力に自信のある読者にはぜひ本作を手に取ってほしい。

倉知淳『星降り山荘の殺人』

ミステリー小説の面白さといえば、読者と作者との推理対決が挙げられるだろう。

「読者への挑戦状」という形で、作者が勝負を仕掛けてくる作品は少なくない。

『星降り山荘の殺人』も同じく、読者への挑戦を仕掛けてくる作品といえる。

雪に閉ざされた山荘で起きる殺人事件を探偵が捜査していくというシンプルなストーリーだ。

しかし「まずは本編の主人公が登場する」というような形で、ところどころに作者からの脚注が入りつつストーリーが進むという点は特筆すべき点だろう。

読者のなかには、ミステリーを読むうえで推理することを諦めてしまう人もいるだろう。

しかし本作を読む場合だけは、簡単に諦めないでほしい。

考えれば考えるほど面白くなる仕組みが、本作には施されているからだ。

岡嶋二人『クラインの壺』

新しい技術や知識が世に出たら、それをすぐに作品へ取り入れようとするのはミステリーというジャンルの特徴だろう。

ここで紹介する『クラインの壺』は仮想現実を題材にした作品だ。

1989年に出版された本作は、謎につつまれた研究所で主人公の青年・上杉(うえすぎ)がヴァーチャルリアリティ・システムの製作の手伝いに関わるというところから始まる。

何度かテストをしているとき、仮想現実にいる上杉に「これ以上、進んではならない。戻れ」と諭す声が聞こえてくる。

そんな声に疑心暗鬼になりつつもテストを続ける上杉のもとへ、ある電話がかかってきたことから彼の日々が徐々に変化していく。

ヴァーチャルリアリティというフィクションによって現実や上杉自身が変化していってしまう様子は「ポスト・トゥルース」という言葉が流行してしまっている今だからこそ、妙なリアリティをもって読者を物語に引き込むだろう。

西澤保彦『七回死んだ男』

一口に「ミステリー」といっても様々な種類がある。

そのなかには、テレパシーやテレポーテーションのようにSFの要素が入っているミステリーもある。

本作はタイムスリップというSF的な設定のあるミステリーだ。

タイトルからわかるように、本作では同じ人物が何度も殺されてしまう。

その殺人を防ぐために主人公が奔走するストーリーとなっている。

これだけの紹介では、世に多くある物語と変わらないが、本作はあくまでミステリーであることを忘れてはいけない。

読者の期待をよい意味で裏切ることは間違いないだろう。

貫井徳郎『慟哭』

ミステリーといわれている作品の多くは物語のなかで人が死ぬ。

その数だけ、動機がある。

動機は人に宿る苦悩の形ともいえる。

だから動機には時代の価値観が映し出される。

貫井徳郎『慟哭』は1993年に書かれた。

90年代といえば、日本のなかで様々な価値観が大きく揺さぶられた時期だろう。

震災や理解しがたい殺人事件が起きた年代だからだ。

幼女連続誘拐事件に端を発するこの物語は、家族のあり方や怪しげな宗教の生態など、時代の混乱が洗練された状態で組み込まれている。

そこからみえるのは、時代や価値観の変化にもがき、苦しむ、人間の悲痛な叫びだ。

その叫びは本作をつうじ、現代を生きる読者にも未だに生々しさを残しながら迫ってくる。

森博嗣『すべてがFになる』

アニメ化、ドラマ化も果たした本作はミステリー作家・森博嗣のデビュー作だ。

ゼミ旅行で孤島を訪れていた大学教授・犀川創平(さいかわ そうへい)と女子大生の西之園萌絵(にしのその もえ)。

孤島にある研究所を偶然訪れることになった彼らは、研究所で生活をしていた天才プログラマー・真賀田四季(まがた しき)の死体を目にする。

しかし事件が起きたのは15年間、ほぼ誰も出入りしていない密室。

その謎に犀川、西之園が挑む。

魅力的なキャラクターと会話、そして事件に仕組まれた繊細にして大胆なトリックは、圧巻の一言だ。

今でも多くの人を惹きつけている森博嗣のミステリー作品。

その原点である本作を読めば、多くの人が魅了される理由がきっとわかるはずだ。

京極夏彦『姑獲鳥の夏』

多くのミステリー作家を輩出しているメフィスト賞の第一回受賞作品。

幻想的な雰囲気が漂う本作は、発生する謎も魅惑的だ。

20カ月もの間、子どもを身ごもる女、密室から姿を消した男という謎を文士・関口(せきぐち)や探偵・榎津(えのきづ)、古書店京極堂の店主・中禅寺秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)たちが解明していく。

文庫版では約600ページもある本作だが、作者・京極夏彦の独特な文体は、読み手を飽きさせることはない。

なによりも、幻想と現実、怪奇と科学の絶妙なバランスで織りなされる本作は日本のミステリーシーンに新たな風を巻き起こした記念碑的傑作だ。

ミステリー好きなら必読の1冊である。

『姑獲鳥の夏』あらすじと感想【京極夏彦、衝撃のデビュー作】『姑獲鳥の夏』あらすじと感想【京極夏彦、衝撃のデビュー作】

西尾維新『クビシメロマンチスト』

いわずと知れたヒットメーカー・西尾維新の『戯言シリーズ』のなかで本作は2作目という位置づけになる。

西尾維新の特徴である独特なせりふ回しや個性的なキャラクター造形は本作でも際立っている。

物語の舞台は主人公の「ぼく」が通っている私立鹿鳴館大学がある京都。

ある日「ぼく」はクラスメイトの葵井巫女子(あおいい みここ)から葵井の友人である江本智恵(えもと ともえ)の誕生日会に誘われる。

しかし、そんなささやかなことから「ぼく」の日常は大きく崩れ去っていく。

連続殺人鬼・零崎人識の登場や「ぼく」の周りで起きる殺人事件による怒涛の展開は、読者に休む暇を与えない。

平穏だと思っていた日常が、狂気と殺意にまみれたものへと反転する様子を描き切った本作はミステリーとして傑作である。

佐藤友哉『水没ピアノ』

三島由紀夫賞受賞作家・佐藤友哉による『鏡家サーガ』シリーズの三作目。

本作は3つの物語から構成されている。

ひとつは携帯電話のバッテリー裏のシールを張り替える仕事をしている青年。

もうひとつが好きな女の子を様々な不幸から守ろうとする少年。

最後は、実母を殺害した長女によって密室に閉じ込められている青年の物語だ。

これだけでは、共通点のない物語を無理やり1冊の本にしたように思われるだろう。

しかし、決してそうではない。

不穏な空気を保ちながら展開される本作は間違いなく「愛」の話であり、3つの物語のいずれもが「愛」を描こうとしている。

この「愛」の正体こそ、ミステリーとしての本作が提示する謎だ。

「愛」がどのようなものかについては、ここではあえて語らない。

このことが何を意味するのかは、本作を読み終わった読者だけが知ることになるだろう。

北山猛邦『クロック城』殺人事件

ミステリー小説が過去や現代の実社会を舞台にしなければならないというルールは存在しない。

本作の舞台は1999年の日本だが、現実のものとは様子が違う。

世界各国で磁気嵐が頻発し、異常気象が多発したあとの荒廃した世界だ。

主人公の住居は既に電気の供給が止められているぐらいだ。

主人公の南深騎(みなみ みき)のもとに「幽霊退治」の依頼が舞い込んでくる。

依頼人の黒鴣瑠華(くろく るか)、助手の志乃美菜美(しの みなみ)とともに「クロック城」へ向かう一行を待ち受けていたのは首なし死体を現場に残した殺人事件だった。

新本格ミステリーを彷彿とさせる精巧な謎はもちろん、独特な世界観のなかで展開される物語に一読の価値があることは間違いない。

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』

直木賞受賞作家・辻村深月のデビュー作。

ある雪の日、男女8人の高校生が学校に閉じ込められてしまう。

そこで発生する奇妙な現象、次々と失踪する同級生たち。

これら不可解な現象には、学校で起きた自殺事件が関わっているが、誰もそのことをなぜか思い出せない。

閉じ込められた高校生たちは、死んだクラスメイトの自殺事件を追うというストーリーになっている。

本作の魅力は細かな人物描写だ。

高校生たち一人ひとりの苦悩や葛藤が、丁寧に描かれている。

青春をとおり過ぎた読者にとっては懐かしく、そうでない読者には共に歩んでくれるようなやさしさに満ちている一冊だ。

ミステリー小説としてだけではなく、青春小説としても傑作である。

おわりに

ここまで紹介してきたように「ミステリー」といっても、様々なものがある。

トリックに好奇心を満たされたい人も、人間の生々しい感情に触れてみたい人も、気になった1冊を手に取ってみてほしい。

もし、その作品が自分に合わなくても、きっと気に入る作品は必ず存在する。

日常のささやかな謎を描いたものから、100人以上の被害者が出てしまう作品もあるミステリーというジャンルは、想像以上に豊かなのだから。

この記事を読んだあなたにおすすめ!

おすすめミステリー・推理小説まとめ!初心者必見【読書好き34人に聞いた!】【2021年版】読書好きおすすめミステリー小説34選! ホラー小説おすすめ14選+怪談集【あなたの怖いモノはナニ…?】 中村文則おすすめ作品10選【ミステリーを純文学で表現した希望の書】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です