価格はリーズナブルなのに、場所も取らず幅広いジャンルを楽しめる文庫本。ミステリ、恋愛、ホラー、SF、歴史、時代ものと選びだしたらキリがない。
通勤の合間や入浴中、寝る前のリラックスタイムに大きな単行本では手が疲れてしまうけれど文庫本なら片手でも楽しめる。
この記事では、そんな文庫本の中からジャンルごとに厳選したおすすめの文庫作品を紹介。
目次
そもそも文庫本ってなに?新書との違いやカバー裏の秘密
文庫本の形式
大きさはA判と呼ばれるサイズとなる。
正確な大きさは105×148㎝。
原則としてカバーが付けられることが条件である。
文庫本のカバー裏の秘密
各出版社ごとに伝統的なマークや模様を表紙デザインに使っている。
そのデザインを楽しむためにあえてカバーを外して読むのも、ヴィンテージ感も漂い乙である。
- 講談社……シンプルな縞模様。葉っぱのマーク
- 創元推理文庫……シンプルなオレンジに鍵。マークも鍵
- 河出文庫……独創的な蔦の模様。フクロウのマーク
「文庫」「単行本」「新書」の違い
文庫(105×148㎜)
扱うジャンルは、小説、古典、詩集など。
単行本の廉価版。
単行本からいくつか修正を入れるケースもある。
ただし、「文庫書き下ろし」などが書いてある場合は、単行本を経ずに文庫本になっている場合もある。
単行本(128×182㎜、128×188㎜)
扱うジャンルは、小説、エッセイ、ビジネス書など。
書き下ろしや文芸誌での連載をまとめたものが単行本になる。
小説の場合は、単行本を経て文庫本になる場合が多い。
新書(103×182㎜)
扱うジャンルは、ノンフィクション、学術的な内容など。
文庫本よりもサイズが大きめ。
この形態での小説は「ノベルス」と呼ばれる。
文庫本の魅力は?持ち運びのしやすさや値段の安さなど
サイズが持ち運びにピッタリ!
カバンに入れても邪魔にならないサイズ。
通勤のとき満員電車でもさほど気にならず、長時間読んでいても手が疲れにくい。
小さめのサイズが文庫本の特徴なので、女性や子供にも優しい。
集めても場所を取らない
単行本ほど大きくないので、本棚に置いてもあまり場所取らない。
出版社ごとに並べると視覚的にも美しくなるのが文庫の特徴でもある。
値段が安い
単行本に比べてかなり安価な設定となっている。
ただし、翻訳されている海外の小説や、国内の小説でも京極夏彦のように分厚い小説などは値段が高めに設定されている場合もある。
カバーの種類が豊富
ブックカバーの種類が豊富で楽しめるというのも、文庫本を読む楽しみである。
おすすめは、少し値段が高めの本革のブックカバー。
手垢で経年劣化が楽しめ、自分がどれだけそのカバーを使い込み、文庫本を読んできたか自覚できてうれしくなる。
あらすじが読める!
文庫本には裏表紙にあらすじが書いてあることが多く、本を選ぶときの最大のポイントになる。
ネタバレはもちろんしていないし、その本のツボを押さえて魅力を語ってくれるので、失敗しない本選びがしたいときは特に裏表紙のあらすじを参考にしよう。
ミステリー、ホラー7選
『十角館の殺人』綾辻行人【新本格ミステリはこの本から始まった】
あらすじ
半年前に焼死した建築家・中村青司が建てた十角の奇妙な館が建つ角島を訪れた、大学ミステリ研の7人。
やがて学生たちの襲い掛かる連続殺人。
驚愕のトリックと衝撃の犯人の正体があなたを揺さぶる!
『十角館の殺人』の魅力
綾辻行人のデビュー作であり、「新本格ムーブメント」を巻き起こしたとにかく衝撃の本格ミステリ。
トリックもさることながら、人物配置、読者に対するミスリード、すべてが完璧すぎてため息が出る。
物語の主軸は「復讐」なので残酷だが、ミステリとしての美しさは一級品。

『十角館の殺人』の基本情報 | |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2007/10/16 |
ジャンル | 本格ミステリ |
ページ数 | 512ページ |
シリーズ | 館シリーズ既刊9巻 |
発行形態 | 単行本、文庫、電子書籍 |
『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉【完璧執事にたじたじ新米刑事お嬢様】
あらすじ
「お嬢様の目は節穴でございますか?」
新米刑事の宝生麗子は「宝生グループ」のお嬢様である。
難解な事件にぶち当たると、優雅にディナーを食べながらその事件の一部始終を執事の影山に話す。
すると影山は、暴言・毒舌ギリギリで推理を披露して、たちどころに事件を解決!?
櫻井翔、北川景子主演でドラマ化の原作。
『謎解きはディナーのあとで』の魅力
ライトミステリの連作短編集なので、取っ掛かりも優しく、読みやすい。
何より、キャラクター造形が魅力的である。
ある意味無能な新米刑事のお嬢様。
サポートしつつも毒舌・暴言に余念のない執事。
2人の軽妙でギャグセンスあふれる会話を楽しもう。
『謎解きはディナーのあとで』の基本情報 | |
出版社 | 小学館 |
出版日 | 2012/10/05 |
ジャンル | ミステリー |
ページ数 | 348ページ |
受賞 | 2011年本屋大賞 |
シリーズ | 謎解きはディナーのあとでシリーズ既刊3巻 |
発行形態 | 単行本、文庫、電子書籍、オーディオブック |
『ネメシスⅠ』今村昌弘【探偵がポンコツ過ぎるのか、助手が優秀過ぎるのか】
あらすじ
横浜に事務所を構える探偵事務所「ネメシス」。
所長の栗田、探偵の風真、助手のアンナは、大富豪に届いた脅迫状が絡む殺人事件から、遊園地の爆弾魔まで、事件解決に奔走する。
広瀬すず、櫻井翔、江口洋介主演のドラマで話題の原作。
『ネメシスⅠ』の魅力
全5巻で、6人の作家が書き継いでいくスタイルのライトミステリ。
語り口も非常にライトで、リーダブル。
ところどころギャグ要素もあり、ミステリでありながらクスッとくるのがいい。
がちがちの本格ミステリが苦手な人も楽しく読めるはずだ。
『ネメシスⅠ』の基本情報 | |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2021/03/21 |
ジャンル | ミステリー |
ページ数 | 256ページ |
受賞 | 第27回鮎川哲也賞 第18回本格ミステリ大賞 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
『瞳の奥に』サラ・ピンバラ【だれが幸せになる物語でしょうか?】
あらすじ
ロンドンの精神科クリニックで秘書として働くルイーズの新しいボスは、先日夜のバーで意気投合し、キスまでしたデヴィットだった。
戸惑うルイーズは、デヴィットの妻・アデルとも知り合ってしまう。
奇妙な三角関係に悩むルイーズは、だんだんとこの夫婦のおかしなところに気づいてしまい……。
Netflixでミニドラマ化の話題作。
『瞳の奥に』の魅力
幽霊も怖い怪物も一切登場しない。
まさに、人の心の闇の真価を見せつけられる物語。
最後の最後まで読めない展開に手に汗を握る。
登場人物たち1人1人の言動によーく気をつけて!
『瞳の奥に』の基本情報 | |
出版社 | 扶桑社 |
出版日 | 2021/02/28 |
ジャンル | 心理スリラー |
ページ数 | 538ページ |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
『営繕かるかや怪異譚』小野不由美【あなたの家、おかしなところはないですか?】
あらすじ
何度閉じても勝手に開く襖。
「屋根裏に誰かいる」と言う同居母。
雨の日に鳴る鈴の恐ろしい正体。
家の「営繕」にまつわる極上のエンターテインメントホラー。
『営繕かるかや怪異譚』の魅力
「営繕」とは建物の営造と修繕のこと。
これを読むと少し自分の家が怖くなるかもしれない。
けれど、怖いと思うと同時に「家」には住んでいる人の記憶や思いが残るんだな、と、今住む家を大切にしたくなる。



『営繕かるかや怪異譚』の基本情報 | |
出版社 | KADOKAWA |
出版日 | 2018/06/15 |
ジャンル | ホラー |
ページ数 | 288ページ |
シリーズ | 営繕かるかや怪異譚シリーズ既刊2巻 |
発行形態 | 文庫 |
『密室の如き籠るもの』三津田信三【「めでたし、めでたし」とは終わらない】
あらすじ
路地に現れた首切り。
姿を消したり現れたりする謎の家。
隙間から見た景色が現実になる不気味な現象。
旧家に現れた記憶喪失の女が始めたこっくりさんが招いた悲劇。
ホラーとミステリを融合させた異色の刀城言耶シリーズ短編集。
『密室の如き籠るもの』の魅力
ミステリなので殺人事件が起こる、犯人がいる、探偵がいる。
つまり、事件は解決されるのだけど、「めでたし、めでたし」とはならないのが、このシリーズの恐ろしいところである。
読者は心に何かしらの引っ掛かりを抱いたまま、やや不完全燃焼で読み終わる。
「で、どうなったの?」とその先を想像するのが死ぬほど怖い。
『密室の如き籠るもの』の基本情報 | |
出版社 | 講談社 |
出版日 | 2012/05/15 |
ジャンル | ホラー |
ページ数 | 298ページ |
シリーズ | 刀城言耶シリーズ既刊5巻 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
『ボルヘス怪奇譚集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス【一味ちがう史実と架空のホラー】
あらすじ
20世紀を代表する詩人・小説家のボルヘスと、ボルヘスとの共作も多数あるカサーレスが、古今東西の書物から抜粋した、史実や架空の物語の怪奇めいたものを集めた1冊。
不気味なものから、教訓めいたもの、予測不可能の結末まで。
『ボルヘス怪奇譚集』の魅力
幽霊やいわゆる心霊現象系のホラーを読み飽きてしまった人に是非ともおすすめしたい怪異譚集。
多少意味が分かりにくいものもあるかもしれないけれど、一筋縄ではいかない物語を読み解いたときの快感は何とも言えない。
海外版「意味が分かると怖い話」という感じだ。
『ボルヘス怪奇譚集』の基本情報 | |
出版社 | 河出書房新社 |
出版日 | 2018/04/06 |
ジャンル | 幻想 |
ページ数 | 185ページ |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
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