九郎ヶ岳遺跡から蘇った、古代の戦闘民族〈グロンギ〉。
冒険家の青年〈五代雄介(ごだい ゆうすけ)〉は遺跡から見つかったベルト〈アークル〉を身につけることで、戦士〈クウガ〉への変身能力を得た。
クウガとなった五代は、刑事である〈一条薫(いちじょう かおる)〉を始めとする仲間たちと共に、皆の笑顔を守るためにグロンギと戦い抜き、全てのグロンギを倒した。
そして13年後。
未だにグロンギの残党を警戒する一条は、ネット上に書き込まれた〈白い戦士〉の噂話を知り、戦いの後に姿を消した五代のことを思い出していた。
平成に蘇った仮面ライダーの第1作目『仮面ライダークウガ』のその後を描いた、初の小説。
こんな人におすすめ!
- 刑事物が好きな人
- ヒーローが好きな人
- 仮面ライダークウガを全て試聴した人
あらすじ・内容紹介
かつて、人々の笑顔を守るために危険を顧みずに戦った青年がいた。
青年の名は〈五代雄介〉。
人間をゲームとして惨殺し続ける、九郎ヶ岳遺跡から蘇った怪人〈グロンギ〉。
五代は、人を殺すことを楽しむ怪物達との戦いに、自らの意思で身を投じた。
誰よりも優しく、暴力を厭う彼は、しかし仮面の下の涙を隠しながら拳を振り続けた。
敵を殴る度に、自らの心が傷ついていくことに耐え続けながら…。
そして、全てのグロンギを倒してから13年後。
街は何事もなかったかのような平穏を取り戻していた。
あれほど恐ろしい殺戮者であったグロンギも、今では噂が出ては消える程度のもの。
そんな世間の中で、誰よりも五代の近くで共に戦った刑事〈一条薫〉は思い出す。
最後のグロンギを倒したのち、姿を消した五代のことを…。
徹底的なリアル志向で描かれたテレビドラマ『仮面ライダークウガ』のその後を描く、あの時戦い抜いた彼らのその後の物語!
『小説 仮面ライダークウガ』の感想・特徴(ネタバレなし)
あの時戦った彼らの〈その後〉
澄み切った青空だった。
子供向けの特撮番組の枠に留まらず、濃厚な人間ドラマをも描いた『仮面ライダークウガ』という作品には、非常に魅力的なキャラクターが多数登場していた。
五代と共にグロンギと戦った〈一条薫〉や〈杉田守道(すぎた もりみち)〉といった刑事たち。
研究者とシングルマザーという2つの立場に板挟みになりながらも、五代や刑事たちをサポートし続けた〈榎田ひかり(えのきだ〜)〉。
被害者を悼みながらも司法解剖を続け、グロンギの能力の解明に尽力した司法解剖専門の法医学士にして一条の友人〈椿秀一(つばき しゅういち)〉。
考古学者として遺跡に残されていた碑文の解析に挑み、五代の戦いのサポートを続けた〈沢渡桜子(さわたり さくらこ)〉。
その他にも、『仮面ライダークウガ』という作品には様々なキャラクターが登場する。
彼ら彼女らは皆、悩み、苦しむ1人の人間として、それでも自分が守らなくてはならないもののために〈自分ができる範囲の無理〉をしながら戦い続けていた。
そんな彼ら彼女らが、グロンギがいなくなった世界でどのように生きているのか。
苛烈を極めた戦いの中で、何を思い、感じ、どのような決断をしたのか。
あの時戦っていた人々の〈その後〉の生き方を知ることができるのは、本書の大きな魅力の1つだ。
一条さんの奮闘
……一生の不覚だ
本作は、誰よりも先に〈クウガ〉の正体が五代であることを知り、その相棒として隣で戦い続けた刑事、一条薫の視点で物語が進行していく。
一条刑事は、ファンからは〈携帯をマナーモードにする以外は完璧超人(頻繁に携帯電話の着信音で敵に見つかっていたため)〉と呼ばれるほど、優秀な刑事として描かれていた。
本書ではそんな彼が、現代に見え隠れするグロンギの影に挑んでいく。
グロンギの殺戮には一定のルールがある。
その規則性を解き明かして次の犠牲者を止めようとする彼の奮闘は、捜査物としても非常に満足度が高い。
更に、本書では一条刑事の内面描写にもより踏み込んでいる。
かつて『仮面ライダークウガ』を試聴していたファンにとっては、〈あの時の一条さんはそんな気持ちだったのか〉という新たな発見もあり、きっと作品を視直したくなることだろう。
グロンギの恐怖も変わらず
ゲームをより楽しくするための演出ですよ
彼らのその後を知れたり、当時の思いを振り返ることが出来たりするだけでも本書には、充分な満足感を得られるだろう。
しかし、この作品はあくまで『仮面ライダー』だ。
当然ながら、新たな敵との戦いも描かれる。
かつてのグロンギたちは、すぐに人間たちの言葉や文化を覚えるといった知能の高さを見せていた。
そんなグロンギが更に人間社会に長期間潜伏した場合、一体どのような殺戮を繰り広げるのか。
より凶悪になった彼らの〈ゲーム〉は、凄惨の一言だ。
だからこそ、そんな怪物たちに立ち向かう人間たちの生き方が、より輝いて見えるのだろう。
そして現れる、五代/クウガ。
〈彼にはもう戦って欲しくなかった〉というのは、一条だけでなくファンの思いでもあるのではなかろうか。
そんな彼がそれでも戦うのは、誰かの笑顔を守るためだ。
再び戦いに身を投じた五代は、何を思い、どこへ向かっていくのか。
物語の最初から最後まで、目を離すことはできないだろう。
まとめ
平成に蘇った『仮面ライダーシリーズ』の第1作目である『仮面ライダークウガ』。
子供向けの番組と言い切ることはできないほどに、重厚なテーマと人間ドラマを描いた彼の作品は、20年以上が経過した現代でも根強い人気を持つ。
そんな『仮面ライダークウガ』の正当な後日談である本書は、ファンにとって必読の1冊だろう。
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