忙しさに追われ疲れていると、つい食事を簡単なもので済ませてしまうことが多くなる。
そんな時こそ癒される美味しい食事が心を満たし、疲れを取り、栄養となる。
そんな癒しの空間を提供しているのが「きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン」だ。
店主や人の優しさに心が満たされ、読み終わる頃には心がお腹いっぱいになれる一冊。
こんな人におすすめ!
- 疲れている人
- 料理が好きな人
- カフェが好きな人
- 落ち込んでいる人
あらすじ・内容紹介
昼間はダンスファッション専門店。
夜になると、きまぐれで夜食カフェになる知る人ぞ知るお店、「マカン・マラン」。
店主シャールとお店に訪れる人々それぞれの人生が交差し、心温まるストーリーとなっている。
全体が四話で構成されており、第一話は大手パソコンメーカーのカスタマーセンターで働く女性。
第二話は料理人、第三話は東京の高層マンションに住むセレブ主婦。
第四話は地主の70代女性がそれぞれ主人公となっている。
本書はシリーズものの中の三冊目だが、初めて読む人でも楽しめる内容となっている。
一人一人の人生にスポットを当てて物語は進んでいき、毎回謎めいた店主の正体が少しずつ分かっていく。
謎めいた店主がどのように生きてきたのか最後まで読むことでうかがい知ることができ、その魅力にひきこまれていく。
『きまぐれな夜食カフェ – マカン・マラン みたび』の感想・特徴(ネタバレなし)
食事と音楽
飲食店といえば必ずBGMがかかっているが、本書でもその描写が書かれており、カフェに入ると必ず店内の音楽について触れられている。
実際にその音楽を聴きながら読み進めていくと、まるで自分も店内にいるようなカフェ気分を味わうことができた。
美味しい食べ物と音楽、店内のインテリアは、人間がリラックスして食事をし、明日への活力を得るのには必要不可欠なものだと感じる。
美味しい食事と音楽が合わさると、体と心の両方が満たされていくのではないだろうか。
マカン・マランに訪れる人々がみなとても自由にリラックスしている雰囲気が、読んでいるこちらもリラックスさせてくれる。
すてきね。ドビュッシーの「夢」よ
ああ、すてき……。ガムラン・ドゥグンを聞くと、マカン・マランにきたんだなって思う
その時々でかかっている音楽が違うのも面白いポイントである。
昼間のダンスファッション専門店の時もガラッと違うジャンルの音楽が流れているように書かれていたので、ぜひ音楽と交えながら読んでみてほしい。
それぞれの人生
第一話で登場するカスタマーセンターで働く弓月綾(ゆづき あや)は、自身の経験から物凄い毒を持ち、放っている。
憂さを晴らすために、誰かを簡単に虐げたいと思う人たちにとって、顔の見えない電話の向こうのオペレーターは格好の餌食であるらしい。
たくさんの人に傷つけられながら生きてきた綾は、どんどん心がすさんでいくが、ひょんなことからマカン・マランに行くことになる。
マカン・マランの店主シャールがどんな人なのかはぜひ読んで知ってほしいが、面白いのが、来たお客さん誰にでも料理を出すわけではないというところだ。
その基準として、一生懸命生きてきた人なのかというところが料理を出してもらえるポイントとなっている。
綾以外の登場人物はそれぞれ料理を出してもらえることとなるが、一生懸命生きてきたかのポイントは、成功しているかではなく、失敗していてもまた前に進めそうな人か生き様を見抜いているように感じた。
自分では「もうダメな人生だ…」と思っていても、他の人から見ると羨ましい人生である場合もあり、それぞれが人生に可能性を持っているのだなと全章を通してとても前向きな気持ちになれた。
今を生きる
最後のお話に登場する、マカン・マラン一帯の地主である70代の女性、瀬山比佐子(せやま ひさこ)は終活のためにエンディングノートを書いていく。
エンディングノートに書くために幼少期からの思い出と向き合う比佐子がとても切なく感じられたが、いつもマカン・マランを訪れる時の比佐子の様子が楽しく、いくつになっても人との出会いとは、生きていることを実感するものなのだなと感じた。
比佐子が食べた料理に思い出が詰まっていてとても感動し、読みながら涙が出てしまった。
心のこもった料理は人を優しく包み込むことができると、とても心があたたかくなった。
インスタントラーメンしか口にしていなかった身体に、根菜のエキスが沁みこんでくるようだった。
こういう時、人は笑顔になってしまうはずだ。
食事は人を笑顔にすることができると、店主シャールの人柄含めてすっかり夜食カフェマカン・マランのファンになってしまった。
エンディングノートの話を比佐子からされた店主シャールの印象的な言葉に、
だからね、大事なのは、先のことをあれこれ気にかけるより、今をできる限り上機嫌に過ごすことなんじゃないかしら
というのがあった。
このセリフは、シャールが言うからこそ重みのある優しい言葉である。
読んでいるこちらは少し心が軽くなるような感覚になった。
まとめ
お店を訪れる登場人物と店主のやりとりに心があたたまり、それぞれの苦労やその後、前に進んでいく姿、周りの人の優しさに読んでいるこちらも優しい気持ちになって、あたたかい涙がでるような作品である。
どのお話も最後は「人間っていいな」と思わせてくれる。
食べ物が本当に美味しそうに、香りも伝わってくるような表現で書かれており、読んでいても分かりやすく自分も作ってみようかなという気にさえなってしまう。
とても癒される作品となっており、読了後は読んで良かったなという余韻が続く。
ぜひ、あなたにもマカン・マランを味わって欲しい。
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