ファンタジー作品を読むと、誰もが1度はこう思いませんか。こんな世界が現実にもあったらいいのに、と―。今回私をそう思わせてくれたのは、異彩を放つ短編集『動物たちのまーまー』(新潮社)でした。
同作の著者は、デビュー作『レプリカたちの夜』(新潮社)で名を馳せた一條次郎。
『レプリカたちの夜』ではシロクマが登場しますが、今回ご紹介する『動物たちのまーまー』では摩訶不思議な動物がたくさん登場します。
たとえば「テノリネコ」という物語では、文字通り手乗りサイズのネコが登場。
体長は約10センチで、サイズはハムスター並み。
ネコというだけでも可愛いのに、さらに手乗りサイズときたら“最強”以外のなにものでもありません。イメージ的には“ティーカップうさぎ”のような可愛さだろうか。
ところがこのテノリネコには、騒音にさらされると体が成長するという性質が。
テレビの音や生活音、周囲の騒音を吸収する度に、テノリネコはどんどん大きくなっていきます。
家のなかのテノリネコがぐぐぐぐーんと大きくなるのが見えた。どうしてくれるのだ。ありえないくらいでかくなってしまったじゃないか。あれじゃ恐竜だ。ナントカザウルスだ。あたまが天井につっかえている。
恐竜並みに巨大なネコ? あのモフモフボディに顔をうずめるどころか、ダイブできちゃうじゃありませんか!
言わばネコ枕ならぬネコ布団。あの独特なネコ臭を全身に感じながら眠りについてみたい。
またネコ繋がりで言うなら、短編「アンラクギョ」に登場するネコビトも気になるところ。
ネコビトときたらなにをするのかまるで予測がつかない。夜間になれば獰猛性が増し、人を襲って危害を加える可能性もあると推測する学者もいた。
どうやらネコビトは、文字通りネコみたいな人。
人間の大人と同じくらいの背丈をしており、後足で立ち上がって人間のように歩きます。そして人間のように喋る! 怖い!!
しかし不気味であれば不気味であるほど、人は不思議な魅力にとらわれてしまうもの。
私が動物だけでなくUMAを愛する理由もそこにあり、そんな不気味な存在であるネコビトだからこそお目にかかりたいのです。
果たして第一印象はネコの可愛さが勝るのか、それともネコビトの不気味さが勝るのか。気になる…。
いっぽう3つ目のエピソード「貝殻プールでまちあわせ」では、人間に変身できるラッコが登場します。
ラッコ曰く、
「人間とコミュニケーションをとるときは人間の姿になるんだ。話しかけられたときも半自動的にそうなる」
とのこと。
何それ、ぜひ見たい。変身する瞬間をぜひとも拝みたい。
しかもこのラッコ、よりにもよって腹のたるんだ中年男に変身します。
ある意味ネコビトより不気味(笑)。
そんな摩訶不思議な動物たちが登場する同作。生粋の動物好きが読むと、「会いたい」「触りたい」「こんな世界に行ってみたい」と様々な欲望を掻き立てられるのでくれぐれもご注意くださいね。ふぅ…。
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