『Another エピソードS』あらすじと感想【災厄が襲う夏、見崎鳴が出会った幽霊とは?】

『Another エピソードS』あらすじと感想【災厄が襲う夏、見崎鳴が出会った幽霊とは?】

1998年の夏。

夜見山北中学校の三年三組で巻き起こる〈災厄〉の情報を得るため、〈見崎鳴(みさき めい)〉はとある屋敷に訪れた。

そこで待っていたのは、過去の〈災厄〉の経験者である、〈賢木晃也(さかき てるや)〉。

その〈幽霊〉であった…。

〈自身の死体を探している〉というその〈幽霊〉に、見崎鳴は協力を申し出る。

死の瞬間の茫洋とした記憶を頼りに、〈死体〉を探す〈幽霊〉と見崎鳴。

果たして彼らは、〈賢木晃也〉の死体を見つけることが出来るのか。

そして、賢木が死に至った理由とは?

見崎鳴と〈幽霊〉の、一夏の死体探しの物語。

こんな人におすすめ!

  • 心理小説が好きな人
  • ミステリー小説が好きな人
  • 『Another』を読了済みの人
  • 『Another 2001』を読もうと思っている人

あらすじ・内容紹介

「教えてあげる、もう1人のサカキの話」

〈見崎鳴〉はそう言って、〈榊原恒一(さかきばら こういち)〉に語り始めた…。

1998年の夜見山北中学校。

その三年三組で吹き荒れる、〈災厄〉の嵐。

既に大勢の犠牲者を出したその〈災厄〉を止める方法を探し、〈見崎鳴〉は〈湖畔の屋敷〉を訪れた。

彼女の目的は、1987年の〈災厄〉の経験者である〈賢木晃也〉と接触し、〈災厄〉を止める手掛かりを得ること。

しかし、そんな彼女を待っていたのは既に死んでしまった賢木晃也の〈幽霊〉であった…。

見崎鳴以外の誰からも認識されない、〈幽霊〉という不安定な状態。

それを脱する為、自らの〈死体〉を探しているという彼に、見崎鳴は協力を申し出る。

茫洋とした〈死の瞬間〉の記憶を頼りに死体を探す、〈幽霊〉と見崎鳴。

その中で思い出される、過去の〈災厄〉の記憶。

果たして彼らは、賢木晃也の〈死体〉を見つけることができるのか。

そして、彼が死に至った理由とは何なのか?

『Another 2001』にも連なる、アナザーストーリー!

『Another エピソードS』の感想・特徴(ネタバレなし)

〈幽霊〉の一人称による、〈死体探し〉の物語

あれはそう、幽霊、だった

今作は、『Another』本編のヒロインである〈見崎鳴〉が、同じく『Another』本編の主人公である〈榊原恒一〉に語る物語だ。

しかし今作中の大部分は、〈賢木晃也〉の〈幽霊〉による一人称で語られていく。

自らの死について、茫洋とした記憶しか持たないその〈幽霊〉は、存在自体が非常にあやふやだ。

彼が持つ1番確かな記憶は、死の瞬間の一瞬のみ。

鏡に映った彼は、最後に何かを呟こうとしていた。

そしてその瞬間に立ち会っていたのは、賢木晃也の姉である〈比良塚月穂(ひらつか つきほ)〉と、その息子〈比良塚想(ひらつか そう)〉であった。

しかし、坂木晃也の死を目撃したはずの比良塚月穂は、彼の死を隠しているかのような素振りを見せ、比良塚想もまた心を閉ざして何も語らない。

〈幽霊〉という存在のあやふやさを厭った彼は、そこから脱するために坂木晃也の〈死体〉を探すことを決める。

〈死体〉を探す中で徐々に思い出される記憶は、果たして彼を救ってくれるのか。

それとも、さらなる地獄へと突き落とすのか。

自らを救おうとする〈幽霊〉の奔走は、今作の大きな見所だ。

また、〈幽霊〉の行動の可否や、思い出せる記憶と思い出せない記憶には、一貫した規則性がある。

丁寧に読み解いていけば、最後に〈幽霊〉が知ることになる真実にもいち早く辿り着ける筈だ。

著者、綾辻行人氏が仕掛けた緻密な罠に、真っ向から挑むのもまた一興だろう。

徐々に形を持つ、過去の〈災厄〉

〈もう1人〉がまぎれこんだ年には、クラスに〈災厄〉が降りかかる

今作に登場する賢木晃也は、1987年の夜見山北中学校の三年三組に所属していた、〈災厄〉の関係者でもある(そもそも見崎鳴が賢木晃也の元を訪れたのも、〈災厄〉を止める手段を探してのことだ)。

彼は、三年三組に降りかかる〈災厄〉の恐怖を目の当たりにし、その恐怖から逃げた人間でもある。

そんな彼が、比良塚想に語って聞かせる〈災厄〉の話は、実際に体験したことがある者が語っているが故に、リアリティーを帯びている。

『Another』本編では過去の事例として語られるだけであった1987年の〈災厄〉が、より具体的な形を持って感じられることで、永きに渡って犠牲者を出し続ける〈災厄〉の恐ろしさを再確認することができるのも、今作の魅力の1つだろう。

そして、『Another 2001』へと

……さよなら

今作に登場する賢木晃也の甥、比良塚想。

彼は今作において、非常に重要な役割を持った存在だ。

〈幽霊〉を巡る一連の出来事は、あまりにも特殊かつ壮絶な経験として、彼の今後に大きな影響を与える。

後に、〈史上最悪〉と呼ばれることにもなる、2001年の〈災厄〉。

三年三組に所属することとなった彼は、自ら〈いないもの〉を引き受ける。

そんな彼が、何故そのような決断をするに至ったのか。

比良塚想のルーツに関わる作品でもあるため、『Another 2001』を読む前には是非とも抑えておきたい1冊でもある。

まとめ

アニメ化や漫画化など、様々なメディアミックスが為された人気作品、『Another』の外伝小説である今作。

過去の〈災厄〉に触れられたり、〈災厄〉が終わった後の見崎鳴と榊原浩一の会話を知ることができたりといった外伝小説としての満足度はもちろんのこと、〈幽霊〉による一人称小説という独特な展開や驚愕の結末など、単独の物語としても完成度の高い作品だ。

また、2020年の9月30日に発売された続編、『Another 2001』の主人公、比良塚想のルーツにもなってくる作品なので、『Another 2001』を読もうと考えている読者は、まずこちらも手に取ってみて欲しい。

きっと、より『Another』の世界を楽しむことができるはずだ。

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