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『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】

『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】

辺鄙な貸別荘地を訪れたグループが、謎の巡礼母娘に導かれるようにして出会った廃村。

そこで経験した、身も凍るような恐怖の体験。

民俗学者〈四十澤想一(あいざわ そういち)〉が、憑物筋の伝承の残る〈弔い村〉と呼ばれる集落で遭遇した、悪夢の夜。

奇妙な関連性を見せる2つの怪異譚が作家の〈僕〉の元に集ったとき、〈僕〉の周辺でも不気味な現象が起こり始め…。

ホラーとミステリが見事に融合した、恐怖小説の傑作!

こんな人におすすめ!

  • ホラー小説が好きな人
  • ミステリ小説が好きな人
  • 民族学的な知識に興味のある人

あらすじ・内容紹介

元編集者にして、〈作家シリーズ〉や〈刀城言耶シリーズ〉を手掛ける作家の〈僕〉。

編集者時代から実話怪談集めに励んでいた〈僕〉の手元に集ったのは、奇妙な関連性を感じさせる2つの怪談だった。

辺鄙な貸別荘地を訪れた男女グループが、巡礼母娘に導かれるようにして謎の廃村に遭遇し、異様な体験をするという〈覗き屋敷の怪〉。

民俗学者〈四十澤想一〉が憑物筋の風習の残る村で出会った、不可思議な体験を記した資料〈終い屋敷の凶〉。

偶然か必然か、集った2つの怪談に危険な匂いを感じながらも惹かれていく〈僕〉。

更には、2つの怪談を全て読み通した〈僕〉の周辺にも、奇妙な気配が纏わり付きはじめ…。

ホラーとミステリが見事に融合を果たす、三津田信三氏の新境地!

『のぞきめ』の感想・特徴(ネタバレなし)

迫りくる〈のぞきめ〉の恐怖

あれが覗きに来るから……

本作の著者、三津田信三氏の描く謎の怪異〈のぞきめ〉は、異様なまでの恐怖を読者に与えてくれる。

特に前半の〈覗き屋敷の怪〉での、不気味な廃村の描写は、圧巻の一言。

迫りくる怪異が男女グループを追い詰めていき、徐々に犠牲者が出る様子には戦慄を覚える筈だ。

更に、著者の持つ豊富な民族学的知識が本作オリジナルの怪異〈のぞきめ〉に、より一層の説得力を与える。

古来より実在していた因習や呪いを盛り込みながら、新たな恐怖を生み出す手法は三津田氏の十八番と言えるだろう。

今作では刀城言耶のような謎に挑む明確な〈探偵〉が存在しないが故に、その恐怖はより真に迫っているようにも感じる。

また本書の後半、〈終い屋敷の凶〉の舞台となる〈弔い村〉こと〈侶磊村〉では、村人が生活しているからこその風習や文化への違和感、異物感が明確に描かれている。

〈憑物筋〉という因習が招く悲劇的な最後からも、目が離せない。

理知で怪異を解き明かせ

相手が不条理な怪異であっても、全く理屈が通らないわけではない。

当然、今作がホラーとミステリの融合を謳っている以上、特筆すべきはホラー描写だけではない。

今作全体を通しての登場人物である〈僕〉は、2つの怪談を読んでしまったために、自身もまた怪異に脅かされる。

そして自らの経験則から、怪異の正体を解き明かすことによって身を守ろうとするのだ。

当然ながら、相手は超常的な存在。

それを解き明かすのは通常の推理ではなく、民族学的な知識を総動員して結び合わせるという特殊な推理である。

更に今作の推理方法は、三津田信三氏の描く〈刀城言耶シリーズ〉と同様の疑問点を羅列していく形式だ。

明確な答え合わせの前に、〈僕〉は全ての疑問点と重要なポイントを列挙してくれる。

非常に難しいことではあるが、著者と同様の知識を持つか、もしくは関連する情報を集めて調べれば、例え超常的な存在であっても〈正解〉に辿り着けるようになっている、極めてフェアな作品だ。

もし読者に時間の余裕があるのなら、一度頑張って推理してみるのもまた一興だろう。

読者にすら忍び寄る怪異

何かに覗かれている……という気配が続くようなら、早めに本書を閉じて欲しい。

三津田信三氏は、見事なメタホラーを数多く世に送り出されている。

そして、氏のメタホラーの醍醐味とも言える要素が〈読者にも怪異が訪れる可能性〉だ。

今作を通しての登場人物である〈僕〉は、明確に名乗ることはないものの〈作家シリーズ〉や〈刀城言耶シリーズ〉を手掛けたと語っていることから、三津田信三氏本人であることが容易にわかる。

三津田氏の実体験として描かれている本作だからこそ、怪異の存在は更なる真実味を持つ。

更に、氏が2つの怪異譚を読む中で本物の怪異に障られたという描写を組み込むことで、氏と同様の怪談を読んでいる我々読者すらも、安全圏にはいないということを突きつけてくる。

もしかしたら、〈のぞきめ〉が近くにいるかもしれない。

そんな薄寒い恐怖感を味わいながらの読書を、是非とも楽しんでもらいたい。

また、三津田氏が語り部であるメタホラーの特性として、氏の考え方や過去の経験の一端に触れることができるのも、本書の楽しみどころの1つだろう。

もちろん小説ではあるため全てが事実とは限らないのだが、三津田信三氏の作品に触れたことがある人には、〈著者の人物像を知ることができる〉という楽しみもある。

氏の小説が未読の人も、今作を手始めに氏の別の小説に触れてから再読すると、また違った楽しみ方ができるだろう。

まとめ

過去に実在した因習や文化を元に新たな恐怖を生み出す見事なホラー描写と、著者の民族学的知識から行われる見事な推理は、〈ホラーとミステリの融合〉というテーマを見事に体現している。

更には、〈読者の元にも怪異が訪れる可能性〉を提示することで読者を安全圏から引き摺り下ろす手法は、三津田氏の作品の大きな楽しみだ。

是非とも、当事者の1人としてこの恐怖を楽しんで欲しい。

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