風呂場に潜む、腐った女。
忍び寄る双子。
壁に描かれた謎の文字。
雪に閉ざされた〈オーバールック・ホテル〉で、少年〈ダニー・トランス〉の戦いが始まる。
こんな人におすすめ!
- ホラーが好きな人
- スティーブン・キング作品が好きな人
- 映画版『シャイニング』を観たことがある人
あらすじ・内容紹介
アルコール依存症を患い禁酒中の元教師、〈ジャック・トランス〉。
彼は、最愛の家族である妻〈ウェンディ・トランス〉、息子の〈ダン・トランス〉こと〈ダニー〉と共に、冬の間の〈オーバールック・ホテル〉の管理人を勤めることとなった。
小説家志望のジャックは、落ち着いた環境で戯曲が書けると喜び勇む。
しかし、ウェンディやホテルの支配人〈アルマン〉に過去の過ちを執拗に責められ、徐々に精神的に追い詰められていく。
そんな中、〈かがやき(シャイニング)〉と呼ばれる不可思議な能力を持ちながら、それを両親に隠しているダニーは、初めて同じ能力を持ったホテルの従業員〈ハローラン〉に出会う。
彼はホテルに潜む邪悪な気配を感じ、そしてハローランとの会話を通して過去にこのホテルが惨劇の舞台となったことを確信する。
更にハロランから、ホテルの狙いが自身の持つ〈かがやき(シャイニング)〉の力であることを知り、恐怖の冬を迎えることとなる…。
スタンリー・キューブリックによって映画化されたホラー界の傑作『シャイニング』の原作小説。
『シャイニング』の感想・特徴(ネタバレなし)
〈オーバールック・ホテル〉に潜む、悪霊の恐怖
REDRUM
今作『シャイニング』は、著者のスティーブン・キングが手掛けたホラー小説の中でも、最も有名な作品の1つと言えるだろう。
小説を読んだことがない、もしくは映画を見たことがない読者でも、割れたドアから顔を覗かせる、〈ジャック・ニコルソン〉の狂気的な表情を見たことがある人は多いのではなかろうか。
また、今作のストーリー展開が〈殺そうとしてくる父親と、父親から逃げる息子〉ということを知っている人も多いと思う。
ストーリーの主軸はもちろんその通りなのだが、今作における恐怖の要素は迫ってくる父親だけではない。
〈オーバールック・ホテル〉には、それ以外にも数多くの恐怖が潜んでいる。
217号室には腐敗した女の悪霊が隠れているし、廊下を歩けば双子の少女の亡霊と遭遇することになる。
更にジャックとウェンディ、そしてダニーの3人だけしかいない筈のホテルには、ついさっきまで仮面舞踏会が行われていた形跡が残っている。
その他にも、ホテルの中で起こる不気味な現象は数多く、バラエティに富んでおり、まるでお化け屋敷のような楽しさがある。
是非とも、不気味なホテルの中でのひと時を楽しんで欲しい。
ダニーの〈かがやき(シャイニング)〉の活躍
なあ坊や、おまえさん、かがやいてるな
今作のタイトルにもなっている、〈かがやき(シャイニング)〉。
ダニーが持つこの不思議な力は、映画版ではあまりフィーチャーされることは無かった(一個人の感想としては、映画の完成度はともかく『シャイニング』というタイトルである必要は無いほど、影が薄い)。
しかし原作小説である今作では、この〈かがやき(シャイニング)〉の力は非常に重要なものとして描かれる。
ホテルに潜む悪霊の狙いは、〈かがやき(シャイニング)〉の力を持つダニーを取り込み、より確かな存在へと進化することだ。
そしてそんな悪霊や、悪霊の手先となってしまった父親に立ち向かうための力として〈かがやき(シャイニング)〉を活用するダニー。
この特殊な力は、幼い少年であるダニーが巨大な邪悪に立ち向かう、数少ない武器として繰り返し描かれる。
また余談ではあるが、今作の正統続編である『ドクター・スリープ』でも、この力は重要な役割を持つ。
そんな〈かがやき(シャイニング)〉の力の詳細を知るには、原作小説である今作を読むのが一番だろう。
映画とは異なる結末
ここから逃げるんだ。
例え既に『シャイニング』を映画で観ていたとしても、〈ストーリーはどうせ一緒でしょ〉と言って今作を読まないのは非常にもったいない。
映画では、その活躍の殆どを〈家族を襲うモンスター〉としてしか描かれなかったジャックだが、この原作小説ではそんなジャックの内面描写も丹念に描かれている。
妻や息子に対する想い、自分への不甲斐なさ、そして悪霊の誘惑へと屈していくまで…。
ジャックがモンスターではなく、家族を愛する心を持った父親でもあったことが、明らかになる。
そして、そんな彼の様子を丹念に描いた今作だからこそ、その結末は映画版と大きく異なる。
詳細は伏せるが、映画しか見たことのなかった読者は今作を読了した後、きっとジャックに対しての見方が変わることだろう。
まとめ
ホラー小説界の巨匠、スティーブン・キングが描いたこの恐怖の物語は、同じく映画界の巨匠、スタンリー・キューブリック氏によって広く世界に発信され、世界的に有名な映画作品となった。
しかし、その内容は大きく異なっており、どちらか一方だけを楽しむのはもったいない。
もし映画が未視聴なのであれば、小説を読んでから是非とも映画も見て欲しいし、映画だけ見て小説版が未読であれば、一度読んでみて欲しい。
きっと、それぞれの魅力を再確認しつつ、『シャイニング』という物語の新しい魅力にも気付けることだろう。
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シャイニングは奥が深すぎる、、、