『PSYCHO-PASS サイコパス(下)』原作小説あらすじと感想【法で裁けぬ悪にどう向き合う?】

『PSYCHO-PASS サイコパス(下)』あらすじと感想【法で裁けぬ悪にどう向き合う?】

法で裁けぬ悪が現れたとき、そしてその悪に大切な人を奪われたとき、人はどのような選択をするのか。

復讐か、それとも…。

法と正義を問う物語、遂に完結‼︎

こんな人におすすめ!

  • SFに興味がある人
  • 哲学に興味のある人
  • 『PSYCHO-PASS(上)』を既に読み終えた人

あらすじ・内容紹介

厚生省が管轄する包括的社会福祉支援システム「シビュラシステム」によって人間の精神状態が解析され、罪を犯す可能性「犯罪係数」が高いものは「潜在犯」として事前に隔離されるようになった社会。

「潜在犯」であるが故に犯罪者を追うのに適していると判断された「執行官」と、その手綱を握る厚生省のキャリア「監視官」は、特殊拳銃「ドミネーター」を手にし、常に犯罪捜査の前線に立ってきた。

しかし、新人監視官常守朱(つねもり あかね)が属する公安局1係の前に立ち塞がるのは、罪を犯している最中でも犯罪係数の上がらない謎の男、槙島聖護(まきしま しょうご)。

彼に友人を殺された常守朱は、果たして彼を捉え、そして法の下で裁くことができるのだろうか。

そして、この社会を動かしている根幹である「シビュラシステム」。

その謎に満ちたベールが、ついに剥がされる。

『PSYCHO-PASS サイコパス (下)』の感想・特徴(ネタバレなし)

信念と決別

信念に背を向けてはいけない

槙島聖護の秘密。

彼がこれまで、公安局に捕まることなく事件をプロデュースしてこれた理由。

それは、彼の得意な体質によるものだった。

「免罪体質者」と呼ばれるその資質は、朱たち刑事課1係の前に大きく立ち塞がる。

槙島を殺せという狡噛(こうがみ)と、裁判制度を復活させて裁くべきという朱の主張は真っ向から対立し、狡噛は公安局から去って1人で槙島を追うことを決意する。

互いの信念から、異なる道を選ぶ2人。

朱は槙島に友人を殺され、狡噛の気持ちは理解できる。

彼の復讐により、今後槙島の手に掛かるものがいなくなることもわかっている。

それでも自らが信じる正義のため、朱は槙島の逮捕を選ぶ。

そして狡噛も、親しい友人を殺されながら、その相手を「正しい手順」で裁こうとする強さ、そして正しさを認めている。

朱が槙島に復讐したいという気持ちを抑え、それでも法の下で槙島を裁くべきという朱の信念を、理解している。

互いに理解しながらも、信念故に違う道しか歩めない2人の別れは、物語になんとも言えない物悲しさを演出しているのではないだろうか。

シビュラシステム 

世間では僕らのことを、シビュラシステムと呼んでいる

槙島聖護の企みの裏で、密かに暗躍を始める不穏な影。

公安局局長 禾生壌宗(かせい じょうしゅう)は、まるで槙島と面識があるような振る舞いを見せ、槙島の免罪体質に関する報告書を破棄するよう命じる。

そして、槙島に執着をし始め、彼を殺そうとする狡噛の排除までも謀る。

社会の根幹そのものが、巨大な怪物のように個人の意思や考えを飲み込み、存在すら封じ込めてしまう。

社会全体が、巨大な得体のしれない化け物に頼って生きている、という恐怖感は、社会の中で生きざるを得なくなった我々読者にも、大きな不安を覚えさせる。

社会システムそのものが意志を持ったとき、果たして社会はどのような形になるのか。

個という存在を一飲みにするリヴァイアサンが個人に対して執着、または排除の道を意識的に選ぶ恐怖は、不吉な未来を暗示する。

常守朱の覚醒、そして決着

法が人を守るんじゃない。人が法を守るんです

袂を別ち逃亡した狡噛、そして槙島を追う常守朱。

彼女は狡噛を死なせないため、そして槙島を狡噛に殺させないため、シビュラとの交渉の末、槙島の確保を目指す。

狡噛と共に行動する中で身につけた刑事の勘。

事件を追う中で手に入れたタフな精神。

それらを全て用いて、槙島を追う朱の姿に、狡噛の影を重ねる宜野座(ぎのざ)。

様々な事件、そして狡噛の暴走によって消耗していた宜野座が、朱の姿にかつての親友を見出すシーンは、「狡噛になれなかった」、そして「狡噛の特別な存在」になれなかった自分への自嘲と、朱への信頼、狡噛への想いが溢れているようで、読んでいて胸が締め付けられるような苦しさと、それと同量の優しさを感じる。

 

どうだい、君はこのあと、僕の代わりを見つけられるのかい

ついに、誰の引用でもない自身の言葉で語り始める槙島。

システムの中から弾かれた疎外感、そして誰でも、どんな才能でも代えが効く社会への失意と絶望。

本音の彼の言葉は、数多の人間を死に至らしめてきた人物とは思えない悲哀に満ちている。

「人は、自らで決断を下してこそ輝く」という槙島の信念は、小説の中だけではない、現実に生きる我々にも重くのしかかる言葉ではないだろうか。

自分で判断することの難しさ、何かに任せてしまうことの楽さ。

それらを天秤にかけ、自身の信念に則って行動した彼もまた、神でも悪魔でもなんでもない、何かに抗いながら生きていた「人間」である、ということが感じられる素晴らしいシーンだと思う。

まとめ

狡噛と槙島、2人の物語の決着。

そこに朱が入る隙間がなかったのは、それぞれにとって幸せだったのか、不幸だったのかは分からない。

ただ、朱が狡噛と槙島、そしてシビュラシステムの間で奮闘し至った「人が法を守る」という結論。

これまでより良くあろうとした全ての人々の想いの結晶が法であり、それは大事に守っていかなければならない大切なものである、という朱の結論は、現実の社会に生きる我々にとっても、きっと通ずる部分があるのではないだろうか。

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