映画鑑賞は履歴書に書ける無難な趣味の筆頭格である。
どっぷりハマるマニアもいるが、ちょっと映画をかじった程度の人でも「まあ趣味として書いても間違いではないか」のスタンスで気軽に書き込めるので汎用性はほぼ無敵だ。
が、ちょっと待て。
流行りにのっかること、または無難であることばかり重視して、映画の見方が日和ってないか?
映画は処世術にあらず、個人の趣味ならもっと自由に見ていいはずだ。
今回はゴーイングマイウェイに映画を楽しむ方法を紹介したい。
『木根さんの1人でキネマ』に学べ!旦那の浮気をふっとばす方法
『木根さんの1人でキネマ』は会社ではそこそこの地位にあるアラフォーOL・木根さんが、部屋で、映画館で、ひたすら映画を見まくる話である。
彼女の映画愛は尋常ではない。
マニアをこじらせまくって手遅れだ。
子供の頃に洋画劇場で見た『ターミネーター』がきっかけで、映画の素晴らしさに目覚めてしまった木根さん。
彼女はハリウッド超大作から低予算のB級、Z(ゾンビ)級映画までをこよなく愛する無類のマニアだか、世論に日和ったところがまるでない。
ゴーイングマイウェイ、我が道を突き進む。
特に共感してしまったのは、「何か面白い映画ある?」とだれかに聞かれた時の心の叫びだ。
これは「アナタが面白いと思った映画紹介して」じゃなくて、「私に私が面白いと思う映画を見繕って下さる?」なのよ
どうだろう、「何か面白い〇〇ある?」と聞かれた体験のある読者の大半が首を音速で振っているのではないか。
が、木根さんはそんなこと気にしない。
お前の趣味など知ったことかと、偏りまくった映画を全力でおすすめする。
なにせ夫に浮気され逃げ込んできた30代の同僚(女)に見せるのがお下劣全開アクションコメディ『バッドボーイズ2バッド』だ。
会社ではデキる女、みんなの憧れの上司に擬態しているが、家に帰ればただの物凄い映画マニア。
彼女の辞書に忖度はない。
たとえ世間的な評価がイマイチだろうが、人を選ぶ下ネタやブラックなギャグ、スプラッタ表現満載だろうが、自分の性癖にド直球な映画をメジャーマイナー区別なくすすめまくるのだ。
その姿、潔し。
自分の「好き」に正直であれ
ぬわぁああにが人それぞれよ そんなもん擬態の上っ面の炎上対策に言うだけでほんのミジンコも思った事ないわよ!!
だって映画は最高だもの!映画こそこの世でもっともイカした趣味で私が面白いと思った映画こそが最高に面白い映画なのよ!!
これは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見てないし見る気もない、そもそも映画にあんまり興味がない佐藤への心の叫びだ。
レビューサイト管理人なら共感の嵐である。
木根さんの場合、イカした趣味改めイカれた趣味と言った方が事実に即しているが、彼女の荒ぶる映画魂は、自分の「好き」を偽ることを決して許さない。
どんな映画だろうと自分が面白いと思えば傑作で自分がクソと思えば駄作なのだ。
何故なら映画は人のために見るものではない、自分の娯楽として見るのがもっとも正しいからだ。
映画は履歴書の趣味欄を埋めるだけの趣味ではない。
面接官に「どんな映画好きなの?」と聞かれた時に「ムカデ人間です!」と答えるのはアウトだが、気のおけない友人と一緒に、もしくはひとりで見る時くらいはもっとわがままになってもいいはずだ。
夏風邪の高熱を押してそこらじゅうに積み上げたゾンビ映画を消化する木根さん。
秘宝を求めるインディ・ジョーンズになりきって、台風の中、映画館をめざす木根さん。
彼女から学ぶゴーイングウェイに映画を楽しむコツは、「そこに宝があるからよ!」と信じる一点に尽きる。
インディ・ジョーンズは宝がなかった時のことなど考えない。
数々のハズレを掴まされ、時に「オタク臭い」とそしられ、時にレビューを貶され布教をトチりテーブルをバンバン叩いても、その先にまだ見ぬ素晴らしい傑作との出会いが待っていると信じぬくことこそが映画を見続けるモチベーションに繋がるのだ。
木根さんみたいに生きれたら、映画を見るのは楽しくなる
どんな映画を見るかはその人の自由だ。
新作を開拓するもよし、旧作を発掘するもよし。
しかし人との話題作りの為だけに、処世術として映画を見るのはあまりにもったいない。
たとえその映画を好きな人が世界に自分1人しかおらずとも、その時は世界の中心で好きと叫びたいものだ。
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