異世界トリップにどんなイメージをお持ちだろうか。
トラックに轢かれた平凡無能な主人公が異世界に転生or転移。
何故か神から授かったチートスキルで成り上がるのが小説家になろうのメインストリームだが、ぶっちゃけ似たような設定ばかりで食傷している読者も多いはず。
今回はそんなお約束を覆す、一風変わった異世界トリップ漫画の条件を考察したい。
心身ともにタフな主人公
『ライドンキング』は馬場康誌による漫画だ。
本作の主人公はプーチンである。
……間違えた、ブルジワ共和国大統領プルチノフである。
しかしプーチン大統領をモデルにしてるのは明らかで、もはや隠そうともしてないのだから潔い。
表紙と実物を見比べればわかるが、そっくりである。
なろう系に親しんでいる読者ならおわかりだろうが、異世界トリップおよび転生ものの主人公は、現実社会では「何の取り柄もない」と前置きされるニートやひきこもりも多い。
が、彼の場合は大統領。
名実ともに一国のトップ、既にして頂点を極めた男である。
生き馬の目を抜く国際社会を生き抜いてきた男であるからして、人徳MAX。
パーティーの女性陣には紳士に接し、ハーレムなんて目もくれず亡き妻一筋。
異世界にトリップ・転生したから特典的にチート能力を授かるのではなく、もともと心身ともにタフで包容力にあふれている。
いくらなんでもありの異世界ファンタジーでも主人公が身勝手すぎたり、チート能力を使いまくって現地民に好き放題してると冷めはしないか。
やはり最低限のリアルは必要だ。
ここでいうリアルとは、「コイツなら棚ボタチートスキルに頼らなくても、異世界行に順応できるだろうな」と説得力を持たせる人徳なりバックボーンなりを用意することだ。
というわけで、応援したいと思える主人公であるのが絶対条件。
読者の好感度は大切だ。
異世界なのにローカル、そのギャップが新鮮
『異世界ヤンキー八王子』は八王子の工業高校の不良4人組が、剣と魔法の王道ファンタジー世界にトリップする漫画だ。
タイトルにも入っている通り4人は八王子出身なので、樹木のモンスターが大暴れする森に飛ばされた時の比較対象が高尾山だったり恩方だったりする。
「恩方より田舎!」とか地元民に大概失礼。
本作はこの手のローカルネタに事欠かない。
異世界ファンタジーだけどきっちり地元愛も感じるのだ。
異世界トリップ・転生ものだと、元の世界にはまったく触れられないことも多い。
そちらに家族や友達を残してきているにもかかわらず、不自然なほど言及がないのはざらだ。
異世界に舞台を移したからといって、地元とハイサヨナラは薄情ではないか?
元の世界や出身地へ愛情とリスペクトを持った上で冒険を楽しんでこそ、ハラハラドキドキ胸躍るのではないか。
異世界トリップで押さえておきたい変化の是非
というわけで、異世界トリップ漫画のちょっと面白い設定を挙げてみた。
娼婦・医者・大工・居酒屋・ニート、職業に幅をもたせ専門知識で異世界を改革する話も面白いのだが、
「ぶっちゃけ自分が変わんなきゃそんな上手くいきっこないよな」
と冷めた気持ちを抱いてしまうのもまた事実。
異世界トリップは便利なリセット機能ではない。
美点と欠点をひっくるめた自分の本質を忘れず、元の世界へのリスペクトをぬきにして、異世界トリップは語れないのだった。
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