剣と魔法のファンタジー世界でも、命あるものは当たり前に死んでいく。
魔王を倒した勇者一行とて寿命と無関係ではいられず、どんな偉大な伝説も時が経てば忘れ去られていく。
今回はそんな『葬送のフリーレン』から、大事な人の看取り方を学んでいきたい。
遺される側の悲哀、身近な人に気持ちを吐露しよう
本作の主人公はエルフのフリーレン。
外見はせいぜい十代の少女にしか見えないが、エルフ故に時間の感覚が人と違い、勇者パーティーと旅した十年間を「ちょっとの間だけどね」と言ってのける。
言うなれば彼女は常に見送る立場、残される側だ。
もし自分が見送る側になったらどうだろうか。
どんな態度で臨終に立ち会うのが正しいのだろうか。
できれば気持ちよく送ってあげたいと誰もが考える一方、喪失の哀しみは禁じ得ない。
グリーフケアには哀しみを受け止める聞き役が必要だ。
フリーレンの場合は僧侶ハイターがこれを務めるが、私たちも身近な人間(いなければボランティアでもカウンセラーでもいい)に気持ちを吐露し、感情の浄化をはかっていいかもしれない。
記憶の中で生き続ける仲間たち
心優しく困った人を放っておけない勇者ヒンメルは、死後もフリーレンや仲間たちの回想に度々登場しては、彼らの生き方の道しるべとなる。
死者の記憶が生者に影響を与え、回り回って誰かを救い、未来へと受け継がれていく。
ヒンメルに感化され孤児を引き取ったハイターはその自立を促し、彼女の未来をフリーレンに託す。
遺していく家族や弟子が自立できるように、必要とあらば助力を乞うのも終活の一環だ。
死が避けられないのなら、周囲が「あの人こんなこと言ってたっけ」と回想する都度前向きになれる終わり方をしたいものだ。
仲間の遺志と遺児を背負って
世界諸国を巡る旅の過程において、フリーレンは仲間や知人が育てた弟子たちを託されていく。
僧侶ハイターの弟子のフェルン、戦士アイゼンの弟子のシュタルク。
いずれも師匠と血の繋がりはないが、彼らのもとで長く修行し、その信念までも受け継いだ者たちだ。
仲間を看取ってそこで終わりではない。
仲間が心を残した若い弟子、彼らの精神的後継者ともいえる身内との縁を切らず、旅の中で見守り導くことで人の本質を知っていく。
現実の終活も、ただ自分が死ぬ準備をする、看取る準備をして終わるのではない。
人の死が誰かに遺産を託し、信念を継ぐのと同義なら、「そこから始まる関係性」もまたあるはずだ。
ならば人と人との繋がりを大事にしていきたい。
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