創作世界でもっとも有名な犯罪者は誰か?
きっと、この問いへの答えは大きく二極化することだろう。
すなわち、『シャーロック・ホームズ』シリーズのモリアーティ教授か、『羊たちの沈黙』シリーズのハンニバル・レクター博士か。
今回の記事で取り上げるのは、後者のハンニバル・レクター博士だ。
地位も名誉も備えた精神科医であり、さまざまな分野に深い造詣を有する文化人。
しかしてその裏の顔は、人を殺しては肉を食するカニバリストのサイコパス。
そんなレクター博士には、もうひとつ「美食家」という側面もあった。
本記事では、レクター博士のこだわりから「一流の美食の楽しみ方」を学んでいく。
肉を食べるならその生き様にまでこだわるべし
レクター博士は人の死肉を食らう。
とりわけ、新鮮で健康な内臓を好んで食す。
しかし、決して鮮度だけが高ければいいというわけではない。
レクター博士が食らうのは、「世に野放しになっている無礼な連中」のみに限られる。
それが、一流の美食カニバリスト・レクター博士のこだわりなのだ。
レクター博士に殺害された後、その肉(あるいは内臓)が食卓に供された描写が明確にある被害者は二人。
彼が支援するオーケストラに所属していたフルート奏者と、アメリカ司法省監査次官補ポール・クレンドラーだ。
フルート奏者は稚拙な演奏でレクター博士の気分を害し、クレンドラーは、レクター博士が強い関心を持つFBI特別捜査官クラリス・スターリングを長年苛め抜き、ついにはその首に断罪の鎌を振り下ろそうと企んでいた。
つまり、どちらもレクター博士にとって、極めて「無礼な連中」であったのだ。
あなたはどうだろうか。
肉のブランドや産地に留まらず、肉が「どう生きたか」にまでこだわれているだろうか。
ある高級フレンチで、ギャルソンがうやうやしく頭を下げながらこう述べたとしよう。
「特選和牛フィレ肉のパイ包み焼き”ウエリントン風”でございます」
真の一流美食家になりたいのならば、あなたは「特選和牛フィレ肉」というブランドに満足せず、重ねてこう訊ねるべきなのだ。
「この牛は生前どのような性格でしたか?ユーモアが分かる牛であれば、きっと肉質も柔らかいのだろうけど」
きっと、ギャルソン達の間であなたは伝説となることだろう。
伝説の内容についてまでは言及しない。
器は日常で触れる芸術である。食器にもこだわりの一品を
美食家は五感すべてを使って”食”を楽しむ。
いくら贅を尽くした料理であっても、食器が魅力的でなければつまらない。
一杯数百ドルの高級ワインも、適当なグラスに注がれてしまえば、一気に味わいが薄れてしまう。
真の美食家でありたければ、料理を彩る食器にまでこだわり抜かねばならないのだ。
もちろん、レクター博士も食器には強いこだわりを持っている。
実際に、小説『ハンニバル(下巻)』には、博士が高級食器類をこれでもかとばかりに買い込むシーンが描かれている。
そこで登場するティファニーやクリストフル、ジアン、リーデルといった、誰もが知る超高級食器・カトラリー・グラスブランドの眩さときたら……。
あけすけに言うと、結局のところは金である。
美食家への道には金が欠かせないのである。
「安くて良い」が庶民にとって魅力的なのは当然だが、真の美食家は、金にブイブイ物を言わせて「高くて良い」ものを揃えてしまうのである。
いくら100円ショップが頑張ったところで、ひとつ1万円以上もするリーデルの高級グラスにその貫禄で敵うはずもない。
個人的に、100円ショップの食器は年々目覚ましい進化を遂げていると思う。
ランチ会で友人に皿やカトラリーを褒められて、「実はこれ100円なの」と打ち明けたことは数え切れない。
しかし、あなたが心から真の美食家を目指すのであれば、ひとつだけでいい、世界中の美食家たちに愛されている高級食器を手に入れてみてはいかがだろうか。
筆者は100円ショップとニトリを信じているので大丈夫です。
一流を極めたければとことんこだわりつくせ
美食とは、こだわりの先にあるものなり。
とある有名な美食家がそんな言葉を残したとか、残していないとか。
とにかく、美食家はなにかとこだわる。
「えっ、そんなところにまで?」と思うほどにこだわる。
それを許すだけの財力と時間が、彼ら彼女らを真の美食家たらしめているのだ。
レクター博士も、まさにそんな真の美食家のひとりである。
ただし、一点、これだけは忘れないでおいてほしい。
もしあなたが真の美食家になりたいと強く望み、レクター博士の歩んだ道を辿ってみようと思い立ったとしても、博士のカニバリズムだけは決して真似してはいけない、ということを。
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