コージーミステリーの金字塔『氷菓』でお馴染みの作家・米澤穂信。
ミステリーと言えば殺人事件、しかし「古典部シリーズ」を読めばきっと日常の小さな謎を解いていく物語も好きになれるでしょう。本格ミステリー・イヤミス・青春ミステリー、どのジャンルでも名作ばかりです。
今回は読書好きの方9名に、Twitter上で米澤穂信おすすめの1冊を選んでいただきました。その結果をランキング形式でご紹介します。
目次
オーディオブックで
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・氷菓
・黒牢城
・愚者のエンドロール
・クドリャフカの順番
・遠まわりする雛
1位『インシテミル』
まさみ
政府の実験を称する高額アルバイトに飛びついた12人の訳あり男女。彼らが集められた「暗鬼館」で開催されたのは恐ろしいデスゲームであり、参加者が一人また一人と命を落としていきます。賞金の独占を狙っているのは誰なのでしょうか?
裏切り者の正体が最後までわからずハラハラドキドキ。12人が閉じ込められることになる暗鬼館の仕掛けも凝っており、特殊ルールに縛られた共同生活が、いやがおうにも緊迫感を盛り上げます。中盤以降は皆が疑心暗鬼に陥り人間関係が崩壊したのもあいまって、誰も彼もが怪しく見えてきますよ。
そんな極限状況下において、ヒロイン・祥子のとぼけた言動を裏切るしたたかさや、彼女を補佐する結城のロジカルな推理が冴えていました。
ラマンボ
2位『ボトルネック』
まさみ
恋人が自殺した東尋坊を訪れ、衝動的に飛び下りたリョウ。するとなぜか故郷の金沢で目覚め、自宅には母親が流産したはずの姉が。どうやら自分が生まれてこなかった、別次元に来てしまったようです。
本来存在しない姉の力を借り、恋人の死の真相に迫るミステリー。タイトルのボトルネックは物事を停滞させる要因をさす言葉で、これがリョウ自身をさしているのがやりきれません。前向きで聡明な姉と対照的に無気力な自分。姉がいる世界で全てが上手くいってるのを見せつけられたリョウが最後に下す決断は、とても切なく苦しいものでした。
ラストの解釈が読者に委ねられるのも憎い演出。リョウの選択の行方は、ぜひご自身の目で見届けてください。
yamadakaname
10代の少年少女を主人公とした青春小説を得意とした従来の米澤穂信さんのイメージを大きく覆されました。
3位『氷菓』
まさみ
面倒事が嫌いな省エネ主義の高校生・折木奉太郎が、姉に勧められ渋々入部した古典部には、好奇心旺盛な少女・千反田えるがいました。「私気になります」が口癖のえるは、次々とトラブルに首を突っ込んでいき……。
アニメ・実写映画化もされた人気学園ミステリー。省エネ主義を自称する奉太郎と名探偵えるの凸凹コンビのやりとりが、とても初々しく微笑ましいです。古典部が学校の内外で関わることになる事件も、バラエティに富んでいて飽きません。古典部の面々の恋模様や学校行事を通じた関係性の変化も見所で、お互いを憎からず思いながら、なかなか進展しない奉太郎とえるがじれったくなるはず。
人が死ななくても面白いミステリーが読みたい人は、ぜひチェックしてみてください。
4位『満願』
まさみ
弁護士の藤井は学生時代に下宿していた畳屋の妻・妙子と達磨市を見に行った思い出があります。4年後、夫を脅していた借金取りを妙子が手にかけました。藤井は正当防衛を主張するものの、なぜか妙子は控訴を取り下げて……。
しっとり仄暗い雰囲気に引き込まれるミステリー短編集。どれも周到な伏線が張り巡らされており、犯人の動機や意外な真実にあっと言わされます。登場人物が報われず理不尽な結末を迎える話も多く、読後は哀愁に包まれますが、この余韻が好きな人にはたまりません。表題作の「満願」は、古き良き昭和の描写にノスタルジーをかきたてられました。「夜警」の優れた人物描写も必見。
粒ぞろいのミステリー短編が読みたい方はぜひ手に取ってください。
5位『黒牢城』
天正六年冬、織田信長に反旗を翻した荒木村重は合戦中に捕らえた黒田官兵衛を地下牢に幽閉しました。その後城内で不可解な事件が相次ぎ、途方に暮れた村重は官兵衛に助言を求めます。
黒田官兵衛の人物造形が非常に巧みで、敵ですら思わず頼りたくなる、優れた参謀の側面が際立っていました。これまで主人公として語られることがなかったマイナー武将、荒木村重に脚光が当たってるのも歴史マニアにはたまりません。同じ主君を戴きながら立場を違えてしまった武将2人の対話は読みごたえがあり、負け戦を予期した上でなお、大義をはたす意味を考えさせられました。
歴史小説とミステリー小説が理想的な形で融合してるので、どちらかに苦手意識がある方も、あまり抵抗を感じず読めるはずです。
6位『王とサーカス』
#2016年このミス第1位 #2015年週刊文春ミステリーベスト10第1位 #2016年版ミステリが読みたい!国内篇第1位
取材し世間へ広めるというジャーナリズムについて、安全な場所から悲惨な現状を見るのはどうなのかといった問いかけに心揺さぶられます。
海外旅行特集の仕事を受け、太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗は早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクション、米澤ミステリの記念碑的傑作。
7位『本と鍵の季節』
読了後はほろ苦く切ない気持ちになった。でも読みやすく(少し重たい内容もあるけど)、2人の掛け合いが楽しくてあっという間に結末へ。
よくあるただの青春物語では無いので面白かった。
堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。
8位『愚者のエンドロール』
人気故に読んだことのある人が多いかもしれないが、その中でもこの本を選んだ理由は、珍しく折木が「負けている」から。
基本的に冷静で、他人よりも思考が先に行っている折木が手玉に取られているのは他の話ではあまり見られない。
「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!
9位『Iの悲劇』
限界集落問題や地方創生の厳しさに焦点が当てられていて読みごたえのある作品。
伏線がしっかりと張られているので面白いです。悲劇というより喜劇だと思いながら読んでいたので、まさかの結末と読後のやるせなさが癖になりました。
一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつも―。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ。
10位『クドリャフカの順番』
青春 × ミステリーと言えばこの古典部シリーズで、登場人物達の関係性と古典部のドタバタの文化祭の3日間を通し、真相に辿り着くまでの過程の面白さから一気読みした作品です。
待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。
11位『儚い羊たちの祝宴』
予想をしても最後まで展開が分からないので、とても面白いです。
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
自分の大好きな1冊、懐かしい1冊、再読してみたくなった1冊、気になってはいたが読めていない1冊などはランクインしていましたか?
この記事が新たな作品との出会いのきっかけになればと願っております。
他にもたくさんの作家さんのまとめ記事があるので、ぜひ覗いてみてください!
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