中村文則おすすめ作品10選【ミステリーを純文学で表現した希望の書】

卓越した文章と、闇深い表現が特徴の作家・中村文則。

彼は大学卒業後、フリーターとして執筆活動を続け、第34回新潮新人賞を受賞したことによって小説家デビューを果たした。

コンビニで働いていた時には、なぜこれだけ生活ができない人がいるのに、弁当を廃棄しなければならないのだろう、という疑問を持つほど、昔から、世の中に対して懐疑的だったという。

ベストセラーとなり、ピースの又吉直樹が紹介したことでも有名な『教団X』や、岩田剛典が主演した映画『去年の冬、きみと別れ』で彼のことを知った方も多いのではないだろうか。

闇を見ることによって、憂鬱になることもある。

それでも彼の作品の最後に訪れるのは希望だ。

今回はそんな中村文則の作品の中でも、読まなければ損をするほど、おすすめな小説を、10作品紹介する。

中村文則『銃』

ある日、雨の降る河原で、死んだ男と銃を発見する青年の物語。

普通の大学生が銃を手に入れたことにより、その日常が崩壊していく。

青年は銃を撃ちたいと思いながら葛藤し続けるのだが、その葛藤は、育児放棄をしている母親を見かけた時、ついにはっきりしだす。

 

青年の精神の揺さぶりから読者は、目を離せない。

この作品で中村文則は、第34回新潮新人賞を受賞し、デビューした。

さらにこの作品は、芥川賞の候補にも選ばれた。

中村作品の中でも比較的分かりやすい物語構造で、彼の作風を知るにはうってつけといえるだろう。

『銃』の基本情報
出版社 河出書房新社
出版日 2012/07/05
ページ数 216ページ
受賞 第34回新潮新人賞受賞
発行形態 文庫

中村文則『土の中の子供』

主人公の「私」は、親に捨てられ、さらには孤児として虐待を受けた被虐体験を、27歳になってもなお、思い出すことによって苦しんでいる。

物語の序盤から、過激な暴力シーンがあったり、精神の暗部をえぐるような描写は、私たちに、今となっては忘れたことでも、実は心の奥底に眠っているものが

あるかもしれないということに、気付かせてくれる。

とことん闇を追求したこの作品であるが、最後にはふと、希望を与えてくれるのだ。

 

この作品で中村文則は、第133回芥川賞を受賞し、賞賛を集めた。

目の前のぼんやりとした光景を表現する力が素晴らしく、頁数も少ないため、あっという間に引き込まれて読み終えてしまう。

何度も読み返したくなる圧巻の作品だ。

『土の中の子供』の基本情報
出版社 新潮社
出版日 2007/12/21
ページ数 160ページ
受賞 第133回芥川賞受賞
発行形態 単行本、文庫

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

施設で育ち、刑務官として働く主人公の「僕」は、控訴期限が目の前に迫る未決囚・山井と、巡回している時に話すことになる。

控訴期限が切れると彼の死刑は確定する。

山井は、控訴期限が迫ってもなお、何も語らず、死刑を受け入れようとするように見えるのだが、それでも「僕」は、山井が何かを隠していることに気が付く。

 

「僕」が施設で出会った「あの人」とのやりとり。

自殺した友人から送られた一冊のノート。

そこかしこに散りばめられた、犯罪と死刑について。

そして、生きることと死ぬことというテーマに、真摯に向き合ったこの作品は、タイトルにもあるように、憂鬱な雰囲気をまとっている。

しかし、芸術によって光が与えられる最後の描写は、圧巻そのものだ。

文庫版の最後にある、ピース又吉直樹の解説も面白いので、読んでみることをおすすめする。

『何もかも憂鬱な夜に』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2012/02/17
ページ数 200ページ
発行形態 文庫

中村文則『掏摸〈スリ〉』

巧みな技術で、次々とスリを繰り返す、天才スリ師の主人公は、他人の運命を操り、人生を支配する闇世界に生きる男・木崎と再会してしまう。

彼は木崎に、仕事を任され、断る隙もなく、失敗すればお前を殺すと言われる。

その後も何度か木崎の要求に応える彼だったが、それでも最後、「失敗しても成功しても、お前はここで死ぬと俺は決めていたんだ」と言われた彼に、一体どんな結末が待ち受けているのだろうか。

 

この作品で中村文則は、大江健三郎賞を受賞。

さらには、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の2013年、ベストミステリートップ10にも選ばれたことにより、その名を世界に轟かせた。

この作品の16章は、この作品の核だと本人も述べており、「光が目に入って仕方ないなら、それとは反対に降りていけばいい」という主人公の思いは、まさに中村文則の、少年時代の世界に対する態度なのだという。

ここでは紹介していないが、この作品の兄妹作品『王国』も是非読んでいただきたい。

そこに、主人公のその後が、描かれているかもしれない。

私たちは2作品において、目が離せないのである。

『掏摸』の基本情報
出版社 河出書房新社
出版日 2013/04/06
ジャンル ミステリー
ページ数 192ページ
受賞 第4回大江健三郎賞受賞
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

中村文則『去年の冬、きみと別れ』

ライターである「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告の面会に行くことになる。

被告は、2人の女性を殺した罪で、死刑判決を受けていたのだが、どうもすっきりとしない。

なぜか事件に関わる人物たちもどこかおかしいところがある。

主人公の「僕」は、事件を調べれば調べるほど、その事件の異様さを、知ることになる……。

そもそもなぜ彼は殺人を起こしたのだろうか。

それ以前に、これは本当に殺人といえるのだろうか。

事件の真相が明らかになった時、全ての読者が驚愕するだろう。

「僕」がなぜ事件の真相にたどり着けなかったのか。

この作品の結末から、私たちは目を逸らせない。

 

2018年に、岩田剛典や山本美月ら主演で映画化された本作。

ミステリー・サスペンスを、純文学として表現したこの圧倒的な作品は、難しいと感じる人もいるだろう。

そんな人は、是非、映画から観ることをおすすめする。

『去年の冬、きみと別れ』の基本情報
出版社 幻冬舎
出版日 2016/04/12
ジャンル ミステリー
ページ数 195ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

中村文則『教団X』

恋人のような関係だった立花という女性が、突然、主人公・楢崎の前から姿を消した。

立花を探して楢崎がたどり着いたのは、凄まじい思想を持つ奇妙な老人・松尾を中心とした、宗教団体だった。

しかしそこに立花の姿はなく、彼女を追い求めると、その先にはさらに、その宗教団体と敵対する、性の解放を謳うカルト集団・教団Xという存在があった。

四人の男女が中心となって、彼らの運命が混ざり合う。

教団は暴走し、自衛隊や機動隊を派遣するほどの、重大な事件を巻き起こす……。

宗教やテロ、貧困、さらには、性という欲望に焦点をあてた、まさしく現代における世界の問題が、詰まった作品になっている。

頁数は非常に多いのだが、松尾という老人が述べる、全ては粒子によって構成されている、などといった、哲学や思想には、引きつけられる。

何よりも興味深い会話場面が多く、すらすらと引き込まれるように読んでしまうため、頁数など気にならないだろう。

 

ピース又吉直樹が、アメトークの読書大好き芸人で紹介したこともあり、話題沸騰した。

神とは何か、光とは何か、そして運命とはどういうものなのか。

そういったことに根本的に立ち向かうこの作品は、中村文則史上最高傑作ともいえるだろう。

『教団X』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2017/06/22
ページ数 608ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

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