一度死んだ人間が怪物となり、人を襲う。
数奇な運命から出会い、〈オルフェノク〉と呼ばれる彼の存在と戦うことになった〈乾巧(いぬい たくみ)〉と〈園田真里(そのだ まり)〉。
戦いの中で訪れる、出会いと別れ。
そして姿を現す、謎の光る戦士。
『仮面ライダー555 異形の花々』として描かれた『仮面ライダー555』のアナザーストーリーが、装いを新たに蘇る。
目次
こんな人におすすめ!
- エログロ描写が大丈夫な人
- 仮面ライダー555が好きな人
- 『仮面ライダー555 異形の花々』を読みたかったが、手に入らなかった人
あらすじ・内容紹介
一度死んだ人間が蘇り、〈オルフェノク〉と呼ばれる怪物となる。
人を襲うオルフェノクと戦うのは、〈仮面ライダー555〉に変身する〈乾巧〉と、〈仮面ライダーカイザ〉に変身する〈草加雅人(くさか まさと)〉。
更に、彼らと共にオルフェノクに立ち向かう〈園田真里〉や〈菊池啓太郎(きくち けいたろう)〉や、人類との共存を願うオルフェノク〈木場勇治(きば ゆうじ)〉〈長田結花(おさだ ゆか)〉〈海堂直也(かいどう なおや)〉たちが、各々の思いを抱えて入り乱れ、物語は複雑な様相を呈していく…。
彼らはどのような運命を辿り、どのような決断をし、そしてどこへ向かっていくのだろうか…。
長らく絶版になっていた『仮面ライダー555 異形の花々』が、装いを新たに今蘇る。
『小説 仮面ライダーファイズ』の感想・特徴(ネタバレなし)
装いを新たに蘇った〈異形の花々〉
変身!
本書『小説 仮面ライダー555』は、2004年に刊行された小説『仮面ライダーファイズ正伝−異形の花々』に、アフターストーリーを加筆した小説だ。
同書は長らく絶版になっており、たとえ読みたいと思っても中々手にできるものではなかった。
それが装いを新たに、更にはアフターストーリーが加筆された上で再度書店に並ぶことは、ファンにとって非常にありがたいことではないだろうか。
更に、本書の執筆者はテレビドラマ『仮面ライダー555』で全話の脚本を務めた井上敏樹氏であり、まさに〈仮面ライダー555〉の正伝と呼べる作品だろう。
1冊の小説として生まれ変わった〈仮面ライダー555〉のもう1つのストーリーを、是非とも楽しんでほしい。
各キャラの存在感も圧倒的
夢ってのは呪いと同じなんだ。呪いを解くためには夢を叶えるしかねぇ。それができない奴はずっと呪われたままなんだ
〈仮面ライダー555〉という作品の大きな特徴として、〈群像劇〉であるということが挙げられるだろう。
無愛想でぶっきらぼう、口が悪い上に極度の猫舌の主人公〈乾巧〉や、勝気で我の強いヒロイン〈園田真里〉。
更に、そんな曲者の2人を居候させているクリーニング屋の店主、〈菊池啓太郎〉や、オルフェノクという存在を極度に憎み、妄執的なまでの想いを真里に寄せる2号ライダー〈草加雅人〉。
その他にも、人類との共存を望むオルフェノクの3人組〈木場勇治〉〈長田結花〉〈海堂直也〉など、非常にクセの強いキャラクターが大勢登場する。
本作では、登場キャラクターの人物相関こそテレビ版とは異なっているが、そのクセの強さは健在だ。
ストーリーの軸を通すために多少の改変がありつつも、読んでいればきっと〈確かにこのキャラはこんなことを言う〉と感じられるシーンが、随所に散りばめられている。
きっと新たな〈仮面ライダー555〉の世界を感じられる筈だ。
本書のための書き下ろしアフターストーリー
でも、行ける所まで、行ってみようよ。
本書では、実に9年ぶりに書き下ろされたアフターストーリーである『5年後』が収録されている。
様々な思惑や互いの立場、人間関係から起こる悲喜劇の末、数多くの死者を出し、痛みに耐えながら自らの道を進んできた彼らの、その後が描かれる唯一の媒体だ。
全てが過ぎ去ってしまった5年後。
皆が姿を消し、人間とオルフェノクから生まれた新しい命である〈勇介(ゆうすけ)〉と、2人で過ごす真里。
その生活は、そして社会そのものも、少しずつ軋みを上げつつあった。
オルフェノクは日々人を襲い、そして量産化された〈仮面ライダーカイザ〉はオルフェノクを狩り続ける。
互いが互いをオルフェノクではないかと疑い、恐れる日々。
そんな中で、人の姿でありながら人とは異なる存在へと成長していく勇介に対する、愛情と恐怖の狭間で揺れ続ける真里。
そして襲い来る過去からの因縁と、更なる変化。
そんな暗澹たる世界の中で、しかしそれでも、人はより良い未来へ、異なる存在との融和へと歩み続けることができるのだと希望を抱かせるような、そんなメッセージもこの短編には込められている。
か細い、しかし確かなその希望を体現するのが、この物語の最後に登場する〈光輝く戦士〉だろう。
人類とオルフェノク、異なる2つの種が殺し合う以外の道を暗示するのようなこの戦士の存在は、特別に残酷なこの物語の最後に美しい余韻を残している。
まとめ
『仮面ライダー555』という作品は、特撮としてだけでなく、群像劇としても今なお高い評価を得ている。
そんな作品を、1つの小説として再構成した今作は、テレビという媒体から解き放たれたからこその残酷さと、その中で人間が足掻くことの美しさを見事に表現している。
テレビ本編にて1年という長期スパンで描き切った作品のテーマを、脚本を全話手掛けた井上敏樹氏が1冊の小説として纏め上げた今作は、仮面ライダー555という作品に触れたことがある人間には是非とも一度手にとってほしい1冊だ。
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