既に仮面ライダーである男、〈津上翔一(つがみ しょういち)〉。
記憶喪失の彼は、心理学者〈美杉義彦(みすぎ よしひこ)〉宅に居候として家事に精を出す傍、〈仮面ライダーアギト〉に変身して謎の怪物〈アンノウン〉と戦う。
仮面ライダーになろうとする男、〈氷川誠(ひかわ まこと)〉。
警視庁未確認生命体対策班に所属し、かつて〈あかつき村〉で起こった事件に立ち会った唯一の刑事である彼は、警察の戦闘用スーツ〈仮面ライダーG3〉を身に纏いアンノウンから市民を守る。
仮面ライダーになってしまった男、〈葦原涼(あしはら りょう)〉。
優秀な水泳選手として将来を期待されていた彼は、しかし事故をきっかけに変化していく肉体によって、周囲の人間に見放される。
〈仮面ライダーギルス〉への変化に蝕まれる彼は、襲い来るアンノウンに立ち向かう。
其々の想いを抱えた彼らは、どのように生き、何故戦うのか。
もう1つの、〈仮面ライダーアギト〉の物語。
こんな人におすすめ!
- ヒーローが好きな人
- 『仮面ライダーアギト』が好きだった人
- 『仮面ライダーアギト』に興味はあるが、視聴に時間を割けない人
あらすじ・内容紹介
人を襲う怪物、〈アンノウン〉。
正体不明のその怪物と戦う、3人の戦士がいた。
既に仮面ライダーである男、〈津上翔一〉。
心理学者、〈美杉義彦〉宅に居候し、家事全般を担う男。
記憶喪失という苦悩を抱える彼は、しかし誰よりも能天気に、誰よりも明るく日々を過ごす。
仮面ライダーになろうとする男、〈氷川誠〉。
生真面目で不器用ながら、誰よりも勇気を持った男。
警視庁未確認生命体対策班に所属する彼は、市民を守るため〈G3システム〉を身に纏う。
仮面ライダーになってしまった男、〈葦原涼〉。
粗野で粗暴ながら、胸に確かな優しさを秘めた男。
水泳選手として将来を期待されながら、その将来を断たれた彼は、〈ギルス〉に変異していく己が肉体に恐怖を抱く。
時にぶつかり、時に助け合う3人の仮面ライダー達と、その中心に位置する、〈風谷真魚(かざや まな)〉。
彼女を巡り、揺れ動く関係性。
そして、〈アンノウン〉に関連する最大の謎、〈あかつき村事件〉。
其々の想いを胸に、彼らは戦いに身を投じる。
〈仮面ライダー〉とは何なのか。
〈アンノウン〉は何故人を襲うのか。
そして、〈あかつき村〉で起こった事件と、失われた津上翔一の記憶の関係とは?
3人の仮面ライダーによる群像劇と、謎が謎を呼ぶミステリアスな展開で人気を博したテレビドラマ、『仮面ライダーアギト』の物語が、1冊の小説として今蘇る!
『小説 仮面ライダーアギト』の感想・特徴(ネタバレなし)
文章で蘇る、キャラクター達の生き様
それは……ノーかな
『仮面ライダーアギト』という作品の魅力の1つは、個性豊かなキャラクター達による群像劇だろう。
人気特撮ドラマ『仮面ライダーアギト』を、1冊の小説として再編した今作。
全51話にも及ぶ作品のストーリーを1冊に纏めているため、物語の展開はテレビ版とは大きく異なる。
しかし、心配は無用。
今作中に登場するキャラクターたちは、皆一様にテレビ版の特徴をしっかりと纏っている。
能天気な津上翔一や不器用な氷川誠、気性の荒い葦原涼などは、テレビ版そのままである。
特に氷川vs豆腐のシーンなどは、キャラクターの声すらも脳内で再生されるレベルの再現度だ。
是非とも、懐かしのキャラクター達の様子を暖かく眺めてみてほしい。
かつて『仮面ライダーアギト』を観ていた読者であればきっと、〈あー、コイツはこのタイミングで、そういうこと言うよな〉という、旧知に会った様な気分になれる筈だ。
謎が謎を呼ぶ、ストーリー展開
聞かせてください、君の村でいったい何があったのか
『仮面ライダーアギト』という作品の魅力は、勿論キャラクターだけではない。
謎が謎を呼ぶ、ミステリアスな展開は、小説となった今作でも健在だ。
特に、テレビ版で〈旅客船の謎の遭難〉として描かれた〈あかつき号事件〉。
『仮面ライダーアギト』という作品の中で、最重要の位置を占めていたこの事件は、今作において〈あかつき村事件〉として描かれる(余談だが、『仮面ライダーアギト』のメイン脚本を務めた井上俊樹氏は、物語が佳境に入るまで〈あかつき号事件〉の詳細を決めていなかったらしい)。
村人全員が何者かによって惨殺された事件は、3人の仮面ライダーと1人の少女の人生に、大きな影響を与えている。
果たして、〈あかつき村〉でかつて何が起こったのか?
深まる謎に迫っていく緊迫感が、読む手を止めさせない。
恋愛小説的側面も
そしたら結婚してあげる
加えて今作には、ヒロインの〈風谷真魚〉を中心に据えた恋愛小説としての側面もある。
能天気で明るい男、津上翔一。
不器用だが誠実な男、氷川誠。
粗野だが優しさを秘めた男、葦原涼。
3人の間で揺れ動く真央の内面描写は、テレビ版にはない今作独自のものなので、〈テレビ版を観たから良いや〉などと思わず是非読んでみて欲しい。
まとめ
初めての〈多人数ライダー〉として、3人の仮面ライダー(途中からは4人になったが)たちによる群像劇を描いた、『仮面ライダーアギト』。
全51話にも及ぶ長編を1冊の小説としてまとめて上げた今作は、キャラクター達の様子や深まる謎の魅力を、見事に再現している。
その上で、小説オリジナルの要素も見事に溶け込ませているので、『仮面ライダーアギト』を観たことがある人もそうでない人も、少しでも興味があれば是非とも手に取ってみて欲しい。
この記事を読んだあなたにおすすめ!
仮面ライダーシリーズ小説版レビューまとめ
ヒロインの名前は「真央」ではなくて「真魚」ですよ
ご指摘ありがとうございます!修正させていただきました。
読み方も「まお」ではなく「まな」でしたね。