ミステリーに殺人事件は付き物。
しかし、すぐ警察が到着してしまっては話にならない。探偵が活躍するには場所選びが重要だ。
殺人事件が起こりやすい場所には条件がある。
今回はさとうふみやの漫画『金田一少年の事件簿』から、魔の惨劇地帯の特徴を考察していきたい。
1.絶海の孤島
オペラ座館殺人事件の舞台となった歌島は絶海の孤島だ。定期便のクルーザー以外に渡航手段はない。
他にも墓場島や悲報島など、本作には曰く付きの孤島が数多く登場するが、中でも歌島の不吉さは断トツ。
『金田一37歳の事件簿』と合わせたら、なんと4度も殺人事件が起きている。自殺志願者のツアーを組んでほしい。
絶海の孤島ではしばしば殺人事件が起きる。
島を出るには定期便の船を頼るしかないが、往々にして到着は1週間後。
電話や無線は犯人に壊されており、事件の関係者は完全に孤立する。
断崖絶壁と荒れた海に囲まれた島からは脱出不可能。外部と連絡もとれないときては詰んでいる。
殺人事件が起こる島は大抵無人島か、変わり者の金持ちが1人で屋敷に住んでいる為、駐在なんて気の利いた存在はおらず、いたところで役に立たないか初期に殺されるかの二択だ。
事件が起きても通報できず警察の救援が見込めないなら、名探偵がしゃしゃりでるお膳立ては整った。
事件と時同じくして嵐に襲われるのもお約束。孤島に行く時は殺人鬼と遭遇しないことを祈りたい。
2.僻地の洋館(雪の山荘など)
殺人事件は洋館で起きる。絶海の孤島も厄介だが、陸の孤島もそれはそれで厄介だ。「雪の山荘」もこの系譜に連なる。
共通点は外部との連絡が遮断されていること。
金田一は何度となく洋館で起きた惨劇に巻き込まれているが、犯行現場の多くは「何故そこに建てた!?」とツッコミ不可避のアグレッシブな立地。
吊り橋一本で外部と繋がった崖の上の洋館など、いくら家主が人嫌いで変わり者とはいえ、安全性を度外視している。
ちなみに吊り橋は燃え落ちるのがお約束。
「何故木製!?何故腐ったまま放置!?何故下が激流!?」と読者もツッコミ疲れしてくるが、広義の密室を作り上げるには、鉄筋コンクリートの不落の橋なんてお呼びじゃないのだろう。
実際洋館と行き来する唯一の手段がゴツい鉄橋だったら興ざめだ、ミステリーの雰囲気にそぐわない。
この手の洋館では吊り橋が落とされた後、食糧の備蓄を巡って争いが起きるのもポイント。
「人殺しと一緒にいられるか、部屋に帰る!」と死亡フラグを立てる被害者は事欠かないが、所詮洋館の中しか行く場所がないので、犯人が隠し通路を経由、あるいは見取り図を持っていたり一枚も二枚も上手な場合、逃げきるのは絶対不可能だ。
3.退路が断たれたキャンプ場
悲恋湖殺人事件は『13日の金曜日』のような、湖の畔のコテージが舞台となった。金田一はキャンプ場でも事件に巻き込まれている。
森の中の別荘地やキャンプ場は要注意。高確率で土砂崩れが発生し帰り道を塞ぐ。
しかも電波は圏外ときて警察に助けを求めるのもままならず、マイナスイオンをたっぷり浴びた殺人鬼が大ハッスル!
避暑には最高のロケーションだが、周囲には洞窟や底なし沼、ボートを桟橋に係留した湖に蜂の巣、下草に埋もれて見えにくい急斜面など、天然のトラップが数多く仕掛けられている。
大自然とコラボしたい、アウトドア系犯人ホイホイだ。
この手の犯人の多くはDIYを嗜んでおり、凶器は鋸やチェーンソー、それに斧を好む。
山奥のキャンプ場に遊びに行く時は、大工道具を持った殺人鬼が徘徊してないか注意されたし。
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