笑って泣けるラブコメには、甘酸っぱい胸キュンが詰まっている。
コメディだけ、ラブだけではない、両方がドッキングすることでそこに奇跡が生まれる。
中でも世間で支持を得たラブコメには、ブレない法則があるのをご存知だろうか。
今回は池野恋の名作漫画『ときめきトゥナイト』から、ラブコメの基本構造を学んでいきたい。
無愛想イケメンと明るく優しい女子の追いかけっこ
主人公の蘭世は吸血鬼と狼のハーフで優しく明るい女の子。
彼女は一匹狼の不良・真壁くんに絶賛片思い中。クールでぶっきらぼうな彼の一挙一動にドキドキパニックなスクールライフを送っている。
ラブコメの主人公の第一条件は、読者が好感を持てる性格であることだ。共感ができれば申し分ない。
彼女たちのビジュアルはとても可愛らしいが、漫画内では「平凡」「いまいち」「ぱっとしない」と評されることが多い。解せぬ。
これは主人公と同年代が占める読者にスムーズな感情移入を促す為で、才色兼備の超絶美少女が主人公といわれても、大半はぴんとこず鼻持ちならないのではないか。
対して、彼女たちが恋に落ちるのは公式イケメンである。クールで無愛想ゆえに周囲に距離をおかれているが、「でもカッコイイよね」とミーハー女子の注目の的。
無愛想イケメンを落とすのはひたすらアプローチを仕掛けるしかない。ツレなくされてもへこたれずチャレンジあるのみ。こちらから行動を起こして振り向かせるのだ。
ファンクラブが存在する生徒会長も喧嘩が強くて恐れられてるヤンキーも、そうあっさりお近付きになれない点で、高嶺の花系男子に分類できる。
もし第一話で主人公が告白し、「え、ホント?俺も俺も!」とOKされたら、話はそこで終了。
ラブコメの醍醐味は追う少女と逃げるイケメンの追いかけっこであり、どんなにうざがられても負けじと食い下がる主人公を読者はおもいっきり応援したくなる。
追っかけられる側のイケメンも「面白ェ女」的なリアクションを返し、主人公が他の男にモーションをかけられれば、「俺の女に手え出すな」とツンデレってくれるのがたまらない。
ガッツだけは百人前の主人公が意中の人を振り向かせようと頑張りぬく過程にこそ、ラブコメのコメ部分の面白さがかかってくるのだ。
意地悪なライバル登場、嫌がらせに負けるな!
蘭世には恋のライバルがいる。同級生の極道の娘、曜子だ。
彼女はあの手でこの手で蘭世を陥れ、真壁くんとの仲を裂こうとした。
プライドが高く嫉妬深い、その上いやがらせの常習犯の曜子だが、ただの嫌な女で終わらず蘭世と友情を深めもする。
ラブコメには意地悪なライバルが付き物。
彼女たちが卑劣な手段を用いて主人公を妨害するほど、読者の声援は「頑張って!」と大きくなり、恋の成就を祈らずにいられない。
いやがらせにくじけず立ち上がる思いの強さに打たれ、「ふん、やるじゃない」と、ライバルが主人公を認めるのもお約束。彼女たちはもれなくツンデレ属性なのだ。
最初はいがみあっていたライバルが、人生を通して一番の親友になるのがエモい。
1人の男をめぐり全力で争ったからこそ、本音をさらけだした信頼関係を築けるのだ。
結ばれてからも前途多難?
蘭世と真壁くんは紆余曲折を経てカップル成立するが結ばれてからも前途多難、彼の出生の秘密に関わるゴタゴタや娘の問題に翻弄される。
カップル成立=ゴールインにあらず。
長く続くラブコメでは主人公カップルも成長し、結婚・妊娠・出産までばっちり描かれる。
サザエさん時空のラブコメはマンネリ化が避けがたい。
古巣のような安心感に浸れるのも事実なので、一概にどちらが良い悪いとは言えないが、個人的な体感だと主人公カップルの関係性の変化を描いたラブコメの方が優勢に感じる。
無事に片思いが実り恋人同士になったらなったで手を繋ぐタイミングや初キス初Hの切り出し方、進学や就職によるすれ違いなど課題は山積みだし、家族に交際を反対されるケースも多い。
それを「俺たちの戦いはこれからだ」バリのガッツとパッションで乗り越えていくのが、ラブコメの素晴らしさだ。
片思いの切なさに胸焦がし、1人悶々と空回っていた頃とは違い、主人公には大好きな彼がついている。
最愛の彼氏が最大の味方となり最強のカップルが爆誕する、まさにエモさの極み。
1人では無理でも2人なら成し遂げられる。
『ラピュタ』のシータとパズーが手を繋いでバルスしたように、嬉しいことは2人分、哀しいことは半分とこの「ラブラブパワー」で困難を撃破していくのがラブコメの醍醐味なのだった。
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