小説における美術作品、原田マハ『楽園のカンヴァス』
文学の中にも美術を題材にした作品はいくつかあるが、その代表作家と言えば原田マハだろう。
彼女は作家になる前に、森美術館の館長になりかけたり、MoMAで勤務した経験もあり、美術について造詣が深い。
2021年9月に、人気小説の『総理の夫』が映画化されたが、その一方で”史実を基にしたフィクション”も得意だ。俵屋宗達の『風神雷神』を下地にした『風神雷神 Juppiter,Aeolus』、ピカソの『ゲルニカ』をモチーフにした、ゴッホの死を描いた物語『リボルバー』などを執筆した。
中でも『楽園のカンヴァス』はルソーにフォーカスした作品として知られている。
『楽園のカンヴァス』のあらすじ
世界的に有名な絵画コレクター、コンラートバイラーはルソー研究者の早川織江と、MoMAアシスタントキュレーターのティム・ブラウンを邸に招き入れ、1枚の絵の真贋判定を依頼した。
その絵画はルソーの「夢」に酷似した作品で「夢を見た」という題が付けられていた。勝者にはこの絵を譲ると告げられ、二人は目の色を変える。
その調査期間は7日間。しかし、ある条件がつく。それは「七章からなる物語を、一日一章ずつ読み、その書も考慮して真贋判定してほしい」とのことだった。次第に様々な人間の関与が発覚し、一つの点となって重なっていく。
『楽園のカンヴァス』の読みどころポイント
『楽園のカンヴァス』は第25回山本周五郎賞受賞作に選出されている。読めば読むほど、表紙に描かれているルソー『夢』に引き込まれ、ページを開く手がつい止まってしまう。
作中に出てくる”七章からなる物語”は、登場人物と物語の感想を共有できる構造になっていて、高揚感や共感が生まれる。
作中には漫画『ブルーピリオド』の語源でもある、ピカソの”青の時代”も登場する。
おわりに
近年は絵画などをモチーフにしたアートTシャツなども定番になりつつある。身に付けられるフェルメールやゴッホなどは、美術をもっと身近な存在に変えていくきっかけになるのではないだろうか。
上記に紹介した『ブルーピリオド』も『びじゅチューン!』も『楽園のカンヴァス』も、そういった存在になることは間違いない。
漫画では漫画だから描ける熱量や躍動感があり、映像と歌ではキャッチーさが際立ち、小説では深みを感じられる。中心軸にあるのが同じ”絵画”でも切り取り方によって、絵の魔力が様々な形に変容を遂げる。
この機会にその魔力を味わってみてはいかがだろうか。
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