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『虐殺器官』あらすじとネタバレ感想【善悪の価値観がゆらぐSF小説の金字塔】

伊藤計劃を知ったのは、本作が「ベストSF2007」国内篇第1位に輝いたことがきっかけでした。

私が普段読んでいるのはミステリーやホラー中心で正直なところSFには疎く、難しい専門用語ばかりという先入観もあり敬遠していました。

しかしタイトルのインパクトに惹かれ、物は試しと買ってみたところ、言葉を用いたテロリズムの恐ろしさに戦慄、ソリッドな文体とハードな世界観の虜になりました。

続編に位置づけられる『ハーモニー』『屍者の帝国』も読了済みですが、最初に読んだ『虐殺器官』が最も印象深いです。

こんな人におすすめ!

  • 重厚な物語が読みたい
  • 善悪について考え直すきっかけを得たい
  • 思想や哲学に興味がある

あらすじ・内容紹介

主人公はアメリカ情報軍所属のクラヴィス・シェパード大尉。戦争犯罪人の暗殺任務に就く軍人です。

ある時クラヴィスは後進国で虐殺を扇動しているアメリカ人ジョン・ポールの処分を命じられました。

ジョンの足跡を追い、身分を偽りチェコのプラハに飛んだクラヴィスは、ジョンの元愛人であるルツィアと恋に落ちます。

ルツィア曰く、ジョンは「虐殺の文法」を組み込んだ演説を用い、後進国の革命家や指導者を虐殺に向かわせたのだそうです。クラヴィスは虐殺文法の核心に迫ろうとするものの、プラハに潜伏したジョンの協力者の妨害を受け、絶体絶命の窮地に陥ってしまいます。

はたしてクラヴィスはジョンを暗殺し、彼と共に消えたルツィアを取り戻せるのでしょうか?

『虐殺器官』の感想(ネタバレ)

『虐殺器官』のストーリーを一口で説明するのは困難です。本作は近未来のディストピアを描いた「ミリタリーSF」にして、言葉が秘めた無限の可能性に触れた「次世代の哲学書」でもあります。

ジョン・ポールは自身の研究の中で、人々の暴力性を誘発する虐殺文法を発見しました。

彼がただの悪役と一線を画すカリスマ性の獲得に至ったのは、そこに強い思想があるからに他なりません。それは祖国の平和を維持するために発展途上国を切り捨てたのです。

クラヴィスもまた言葉に対するフェティシズムを持ち、世界を股にかけた壮絶な戦いを通し、宿敵であるジョンへの理解を深めていきます。

大事な人々を守るため、その他の犠牲に目を瞑るのは正しいのか?

「ここだけは平和」と「ここ以外は平和」、叶うならどちらを選ぶか?

祖国に尽くす大義と人として譲れぬ正義の間で揺れ動き、ジョンとの対話を経て断腸の決断を下すクラヴィスの姿は、メディアが報じる戦争のニュースを聞き流し、罪深い怠惰を享受する全ての人々に自戒を促します。

硬質な文体が紡ぐ戦闘シーンは圧巻の迫力で、死体が焼ける戦場の匂いまで伝わってくるような錯覚を起こします。

アニメ映画の結末とは若干異なるものの、原作ラストにおいて一人生き残ったクラヴィスがピザを食べる名場面には、欺瞞の代償を払わされたやるせない虚無感が漂っていました。

まとめ

『虐殺器官』は、作品自体が思想実験の装置であるかのような、不思議な読後感を与えてくれます。

世界中に紛争の火種をまいて祖国を守るジョンの信念に賛同するか、祖国を見捨て世界の救済に動くクラヴィスの良心に共感するか、どちらを支持するかで自分の本性まで炙り出されるので、善悪の価値観が根本から揺らぎました。

クラヴィスの仲間たちが一人また一人と脱落していく鬱展開や、解釈が分かれるラストも相まって、読むのに覚悟がいる小説です。

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