〈オーバールック・ホテル〉での惨劇から40年。
かつてその惨劇の渦中にいた少年〈ダン(ダニー)・トラスト〉は、大人になった今もまだ恐怖の記憶に悩まされながら、ホスピスで働いていた。
一方、2001年生まれの少女〈アブラ・ストーン〉は、その並外れた〈かがやき(シャイニング)〉の力で、遠く離れた土地の野球少年への拷問虐殺の様子を目撃する。
人の〈かがやき(シャイニング)〉を食すその集団〈真結族〉との戦いに備え、少女は以前から〈かがやき(シャイニング)〉で会話を続けていた、ダンとの接触を試みる…。
スティーブン・キングの傑作小説『シャイニング』の30年後を描く、正統続編!
目次
こんな人におすすめ!
- ホラー小説が好きな人
- 『シャイニング』を読み終わった人
- スティーブン・キング作品が好きな人
あらすじ・内容紹介
〈オーバールック・ホテル〉の惨劇から40年が経った。
当時は〈ダニー〉と呼ばれていた少年も、〈ダン〉と呼ばれる大人となった。
彼は今でも幼き日のトラウマに悩まされ、更には彼の父親〈ジャック〉と同じ、癇癪やアルコール依存症も現れる。
癇癪とアルコールに悩まされながら数年間アメリカ中を放蕩していたダンは、荒れた生活に嫌気が刺してニューハンプシャー州に定住し、禁酒を決意。
禁酒により蘇ってきた〈かがやき(シャイニング)〉の力を用いて、ホスピスで瀕死の患者に安らぎを与え続けるダン。
彼はいつしか、〈ドクター・スリープ〉の愛称で呼ばれるようになっていた。
一方で、2001年生まれの少女〈アブラ・ストーン〉。
アメリカの同時多発テロを目撃したことをきっかけに、彼女もまた〈かがやき(シャイニング)〉の力に目覚めていく。
少しずつ強力になっていく〈かがやき(シャイニング)〉によってアブラは、いつしか遠く離れた場所にいるダンと、力を用いてコミュニケーションを取るようになっていた。
そんなある日、〈かがやき(シャイニング)〉によって、アブラは目撃してしまう。
遠く離れた土地で、〈かがやき(シャイニング)〉の力を食らって生きる〈真結族〉が野球少年を拷問し、虐殺している光景を…。
名作『シャイニング』から40年の時を経て、新たな恐怖が始まる。
『ドクター・スリープ』の感想・特徴(ネタバレなし)
40年後の〈ダニー〉
どうせ人間はみんな死につつあります。
今作『ドクター・スリープ』は、前作である『シャイニング』から40年後の物語だ。
〈オーバールック・ホテル〉での惨劇に巻き込まれた当時は〈ダニー〉と呼ばれる幼い少年だった〈ダン・トラスト〉も、今作では40も半ばの中年として描かれている。
父親の〈ジャック・トラスト〉も悩まされていた癇癪癖とアルコール依存症に悩まされながら、それを抑えて懸命に働いている様子を見ると、彼の人生は順風満帆とはいかなかったようだ。
その様子は、過酷な物語を乗り越えた人間であっても人生が順調にいくわけではない、ということを思い知らされるようで、少し物悲しくも感じる。
しかし、悲惨な過去に悩まされながらも懸命に生きる〈ダニー〉の姿を見ることができるのは、懐かしい友人と久しぶりに出会えたようでもある。
〈オーバールック〉での惨劇が起こったあの時には幼い少年だった彼が、(立派な、とは言い難いが)大人になり、新たな脅威に立ち向かっていく姿に、感慨を覚える読者もいるだろう。
更に、ダンが新たな登場人物である少女〈アブラ・ストーン〉と協力する姿は、非常に頼もしい。
同じ〈かがやき(シャイニング)〉の力を持ったものとしてアブラを導く彼の姿は、頼れる大人そのものだ。
是非とも、成長した彼との再会を楽しんでほしい。
新たな味方〈アブラ・ストーン〉と、さらなる恐怖〈真結族〉
シルクハットをかぶった女に近づかないこと
今回のもう1人のキーパーソンが、2001年生まれの少女〈アブラ・ストーン〉だろう。
彼女の持つ〈かがやき(シャイニング)〉の力は、ダンのそれよりも更に強力だ。
加えて彼女は、『シャイニング』当時のダンよりも非常に勝気な性格をしている。
年相応に怯える様子を見せながらも果敢に恐怖に挑んでいく彼女。
勇ましさに溢れる彼女の活躍は、見ていて勇気を与えられる。
そして、そんな彼女をつけ狙う新たな恐怖が、人の持つ〈かがやき(シャイニング)〉を食すことで半永久的に生き続けるヴァンパイア集団〈真結族〉だ。
彼らは『シャイニング』で登場した悪霊たちとは根本的に異なる。
肉体を持つために物理的に攻撃を仕掛けてくる上、知恵を用いて襲ってくるために逃亡も困難だ。
そんな彼らが、一際強い〈かがやき(シャイニング)〉を持つアブラを執拗に追い回す様は、纏わり付くような恐怖を楽しませてくれる。
懐かしの〈彼ら〉も登場
外に幽霊みたいな人たちがいる。
今作の舞台となる土地は点々とするが、その中にあの〈オーバールック・ホテル〉跡地も登場する。
ホテルそのものは無くなっているが、そこに潜んでいた悪霊たちは未だにそこに留まり続けているようだ。
ダニーと同じく、彼らとも久々の再開となる。
ホテルに潜む悪霊たちとの懐かしの触れ合いも、今作の大きな楽しみだろう。
また、ホテルに潜む彼らの中には、その地で死んだ者も多い。
〈オーバールック・ホテル〉での最後の死者、〈彼〉らしき存在の登場はきっと、『シャイニング』を読了した読者にとっての1つの救いともなるだろう。
まとめ
ホラー小説の傑作にして、巨匠スタンリー・キューブリックによって映画化もなされた名作『シャイニング』の正統続編である今作。
魅力的なキャラクターや更なる恐怖が新たに登場しつつ、大人になったダンや懐かしの悪霊たちに再開できる本作は、『シャイニング』を楽しんだ読者には必読の1冊だ。
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