いきなりだが、ハブるの語源は村八分らしい。
例外の二分は火事と葬式だが、閉鎖的な村社会でシカトされたらどれほど暮らしにくいことだろうか。
コンビニやスーパーがない、携帯の電波が通じない、交通の便がよくない。
現代人には割と致命的なそれらがごくささいな瑕疵に思えるほど嫌~な村とはどんなところか。
ホラー漫画『ガンニバル』の舞台となる供花村から検証していきたい。
住民全員秘密がある
本作の舞台となる供花村(名前からしてもう怖い)は山間の寒村で、自然林に熊がでるレベルのド田舎だ。
主人公の阿川は妻子を連れてこの村に赴任してきた駐在だが、ある時村の全員に秘密があることに気付く。
一見友好的でニコニコしている村人が、実は表沙汰にできない秘密を抱えているとしたら、一気に見る目が変わってしまわないだろうか。
阿川は仕事上の義務と生来の正義感から村人たちの秘密に分け入るのだが、調査の過程で炙りだされていくのは、よそ者にけっして心を許さない排他的で保守的な村の実情だ。
人間大なり小なり秘密は持っているものだが、村ぐるみで何かを隠蔽しているとあれば穏やかではない。
嗅ぎ回れば村八分?
阿川は供花村で人肉食が行われている事実を突き止めた。
前任の駐在はこの真相に迫ったせいで消息を絶っており、阿川の家族にも魔の手が伸びる。
村八分の怖さとは村人同士が横繋がりで庇い合うため、嫌がらせの犯人を特定できないところにある。
このケースでは加害者と傍観者の区分が曖昧で、犯人に直談判する事さえ不可能だ。
いじめが表面化しにくい理由と一緒で、被害者以外の全員が口裏を合わせて村八分の事実を単なる被害妄想にすりかえてしまうのだから陰湿だ。家に脅迫文を落書きされたり、昨日までにこにこ挨拶してくれたおばちゃんおじちゃんがやけにそっけなかったら危険信号と考えていい。
犯罪まで……。越えてはいけない一線
人肉食だけでも立派に犯罪だが、供花村で権勢を誇る後藤家はさらなる悪事に手を染めていた。
なんと村で産声を上げた新生児を死んだことにし、祭りの生贄にするべく幽閉して育てていたのだ。
牢で飼育される子供たちには名前はおろか戸籍すら与えられないのだから徹底している。
同調圧力とは厄介なもので、良心のある村人が警察に駆けこんだら最後、裏切り者としてリンチを受ける。
密かに育てた大麻で莫大な富を築いて山分けした、ダム建設に反対して爆弾を仕掛けた。
どんな悪質な犯罪も村の内部では正当化され、それを密告する方がおかしい空気が生まれるのだ。
こんな村、絶対に住みたくない。
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