「結婚相手が見つからなくても本さえあれば生きていける」と開き直っていた今日この頃。そんな三度の飯より本好きな私に、“夫婦っていいな”と思わせてくれたのが『感謝離 ずっと一緒に』(双葉社)でした。
そもそもみなさんは同作についてどのくらいご存知でしょうか。
はじまりは、朝日新聞に投稿された“あるエッセイ”から。
妻の遺品整理を「感謝離(かんしゃり)」と名づけ、愛妻への想いを綴った新聞投稿が大反響を巻き起こしました。
2020年3月に待望の書籍化を果たし、11月には映画も上映予定(試しに映画の予告編を覗いてみたところ、たった1分の動画に涙が出そうになったのは内緒の話)。
そんな背景もあって本書を手に取ってみたわけですが… 正直、ここ最近で1番感銘を受けたエッセイかもしれません。
え、一体何にそこまで感動したかって?
やはり特筆すべきは、著者・河崎啓一とその妻・和子の夫婦愛でしょう。
巷では離婚、浮気、借金、ワンオペ育児など、夫婦問題ばかりが表立っており、本気で「結婚は人生の墓場」と口にする人も珍しくありません。
しかし河崎夫婦は、そんな昨今の夫婦事情を微塵も感じさせないほど仲良し。
こんな時代だからこそ、より理想的な夫婦に見えるのです。
特に啓一から妻・和子への愛が半端ない。彼女のことが大好きで大好きで仕方ない。
たとえば妻から“ピアノがほしい”と言われて、果たして世の何割の夫がその要望を叶えてくれるでしょうか。
しかも自宅は四畳半二間。月給の何倍もするピアノを、だ。
もちろん啓一も最初は躊躇いつつも、そこは惚れた弱み。
どうしても妻の願いを叶えたくて、月2,000円の月賦でピアノを購入します(ちなみにその後、同じように妻からせびられてマイカーも購入)。
そして彼はこう思うわけです。
無理して月賦で手に入れたものだったけれど、それだけの価値はあったと思う。このピアノがあったおかげで、狭苦しい部屋で、さらに和子とくっついて暮らせたから。物理的にも、気持ちの上でも。
尊すぎません? 愛しすぎません? というか和子のこと大好きすぎません?
男の私が“愛しい”とか言うとちょっと変な感じがしますが、2人を知れば知るほど“愛しい”という言葉がまさにぴったりなのです。
同時に河崎夫婦の在り方に、憧れを抱いたのもまた事実。
結婚後も、出会った頃と同じように愛し抜くってなかなか難しい話じゃないですか。
でもそれを当たり前にやってのける2人。
それを当たり前にできる“最愛のパートナー”を見つけたことに、“羨ましい”を通り越して嫉妬しちゃいましたよ(笑)。
しかも彼女に先立たれた後も、啓一の愛は変わらぬまま。
本当は手放したくないからこそ、妻のぬくもりや魂がこもった遺品に感謝を添えていく。
ありがとう。最愛の人を魅力的に飾ってくれて、と―。
ゆえに“感謝離”。
“私もいつか感謝離するような最愛の人に出会いたい”。独身男子でもそう思える作品でした。
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