瀬戸内寂聴おすすめ小説10選【愛と悟りに生きる尼僧】

瀬戸内寂聴(出家前は瀬戸内晴美)は、今でこそ説法を説くおばあちゃん僧といった気さくなイメージだ。

しかし、かつては愛に生きただけでなく、不倫したこともある彼女。

その後出家して天台宗の尼僧となっているが、波乱万丈の人生を送ってこられた酸いも甘いも知り尽くした人生の大先輩だ。

そんな彼女の著作は大きく「愛」「仏教」「歴史もの」「生き方」に大別される。

その中でもおすすめの作品を紹介していこう。

『花芯』【愛とは?文壇に干された作品】

瀬戸内晴美として発表し「新潮同人雑誌賞」を受賞した作品。

作中には子宮という言葉が多数使われている事でも有名だ。

内容と過激さから、「子宮作家」と痛烈な批判を受けた伝説的な記録が残っている作品でもある。

きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ

なんて衝撃的なセリフだろう。

単純に一言で言ってしまえば不倫の話と言えるのだが、決してそんな一言で片づけられる話ではない。

誰かをここまで愛したことがある人は、果たしてどれだけいるだろうか。

賛否両論で世間を騒がせたこの小説は必読間違いなしの作品だ。

『花芯』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2005/02/15
ページ数 264ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『祇園女御』【時の権力者に振り回された女】

祇園女御とは、白河上皇の寵愛を受けた女性で平家物語に出てくる女人。

上皇の子を身ごもるが、身ごもったまま、白河上皇の命令で平忠盛(平清盛の父)の妻になるという、平家物語に出てくるストーリーを見てどう思うだろうか。

時の権力者の寵愛を得たからと言って安泰なわけがない。

常に若い綺麗な女人が侍り、後宮はハーレムで女たちの争いはえげつない。

このストーリーを前提にしつつ、独自の創作で話を進めたのがこの作品だ。

権力者である白河上皇が非道に映るかもしれないが、当時の時代背景や女性の立ち位置を考えれば仕方ないのかもしれない。

上皇の側に侍る女性たちは、奔放なものもいれば身持ちの固いものもいる。

当時の恋愛事情を覗き見るようで、興味深い作品だ。

『祇園女御』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2019/01/16
ページ数 512ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『草宴』【中年男女の情愛】

舞台は京都の嵯峨野。

中年男女の性に溺れる姿を描いた作品だが、けっしてイヤらしいものではなく文学的な薫りすら漂う作品になっている。

主人公の渡可能子(わたり かのこ)が本能のまま奔放に生きる様と、振り回される男の姿が鮮やかだ。

一度は出家して剃髪したのに、また男によって還俗を決める可能子。

一般的に考えれば、とんでもない話に聞こえるだろう。

しかし、舞台が京都の自然あふれる嵯峨野であることや、2人の関係が決して生々しいだけではない表現が瀬戸内寂聴らしいものに仕上がっている。

そこまで恋焦がれ、人生を左右するような出会いはそうそうあるものではない。

あなたは、この主人公たちを愚かとみるのか・・・それとも羨ましいと思うのか。

その答えは、読んでみて確認してほしい。

『草宴』の基本情報
出版社 講談社
出版日 1983/12/01
ページ数 300ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『女人源氏物語』【古典を読みやすく】

『源氏物語』と言えば、平安時代の大長編。

学生時代に国語の授業で習った記憶のある人も多いだろうが、「訳が分からない」「面白くない」と言う人が大半かもしれない。

そして、現代までにたくさんの作家などが現代語訳に訳してきた作品でもある。

訳者によって雰囲気が大きく変わるのが面白いのだが、瀬戸内寂聴の訳はとても読みやすく、女性たちが生き生きとしているのだ。

話のあらすじとしては、当代一のモテ男である光源氏の生涯を賭けた恋の数々と、光源氏の実母である桐壺の更衣の面影を探し続ける姿が描かれている。

しかし、現代にも通じる恋愛観(一夫多妻制は当てはまらないが・・・)もあり、粋なやり取りから学ぶことも多いのではないだろうか。

古典なんて難しい、古臭いと言わずぜひ一度読んでみてほしい。

『女人源氏物語』の基本情報
出版社 集英社
出版日 1992/09/18
ページ数 272ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『場所』【瀬戸内寂聴の通過点が詰まった私小説】

野間文芸賞を受賞した作品。

父の故郷「南山」・母の故郷「多々羅川」・そして瀬戸内寂聴が夫と娘を捨てて出奔した「名古屋駅」。

作家としての出発点で、男との複雑な関係が始まった「三鷹下連雀」。

そして「西荻窪」と「野方」、長年の出家したい願いを叶えた「本郷壱岐坂」。

瀬戸内寂聴が様々な人生経験を経てきた場所を80歳になって改めて訪ねて編み上げた私小説だ。

この作品には、瀬戸内寂聴のターニングポイントが詰まっている。

今でこそ、ニコニコしたおしゃべり尼僧といったイメージだが、本当に壮絶な経験をしたことで酸いも甘いも嚙み分ける味わい深い人になっていったことがわかる作品だ。

瀬戸内寂聴の人生を覗き見るのにおすすめの一冊。

『場所』の基本情報
出版社 新潮社
出版日 2004/07/28
ページ数 341ページ
受賞 第54回 野間文芸賞受賞
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『わたしの蜻蛉日記』【歴史作品を独自の目線で】

平安時代に書かれた『蜻蛉日記』と言う作品がある。

これは、藤原道綱の母が書いた元祖私小説ともいえるもので、当時嫉妬に悶える様や、不安などを描いたものだ。

当時は一夫多妻制で、夫や恋人がいつの間にか他の女に乗り換えるなんてことは当たり前のこと。

そんな中で生きた貴族階級の女性が描いたこの日記を、瀬戸内寂聴が独自の目線を加えて書いたこの作品。

単純に女性の苦悩と言う描き方ではなく、当時の時代背景を元にしながらも新しい目線で書いており、必読の一冊となっている。

こちらも、現代の女性が悩みがちな恋愛の悩み事に通じるものがあり、昔も今も人は変わらないと思わせてくれるのが面白い。

『わたしの蜻蛉日記』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2012/11/20
ページ数 376ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

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