「ホラーというものはミステリの文脈で全く新しいものになる」
この信念を持ち、第4回ホラー大賞を受賞するなど、モダンホラー小説で数々のヒット作を生み続ける超人気作家・貴志祐介。
彼の作品は「人間の心が生み出す恐怖」をテーマに描いているため、より身近に恐怖が感じられるものとなっている。
今回はそんな貴志祐介の作品の中でも、特におすすめの10冊をご紹介する。
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・黒い家
・天使の囀り
・鍵のかかった部屋
・クリムゾンの迷宮
・青の炎
『悪の教典』
#伊藤英明主演映画の原作
主人公・蓮見聖司(はすみ せいじ)は、どんな時でも生徒を第一に考えるという精神から、生徒だけでなく教師からも信頼の厚い先生。しかし、蓮見の裏の顔は共感性が全くないサイコパスだった。
その性格は、自分にとって不都合な人物は排除していくというものであり、幼少期には両親までも手にかけていた。ひそかに事を行っていた蓮見だが、ある時生徒たちに勘付かれてしまう。ここから蓮見の暴走が始まるのであった。
優しい笑顔の裏に隠された悪を知ったとき、人は人の恐ろしさを改めて思い知らされる。
2012年、伊藤英明主演で映画化もされており、そちらも衝撃作となっているため、あわせてご覧いただきたい。
『新世界より』
#アニメ化
物語の舞台は1000年後の日本。穢れから身を守るため、注連縄(しめなわ)で周囲を囲ったこの町は「神の力(サイコキネシス)」を得た人間が手にした平和の世界だった。
しかしその平和の裏には、決して知られてはならない残酷で血塗られた歴史が存在した。
1000年後の未来でありながら、通信手段がなく、自然があふれているという不思議な時代背景に興味が湧く。軽い探求心のつもりで、知ってはならないことを知ってしまった者の代償や運命に目が離せない。
アニメ化されているので、時間がある方はあわせてご覧いただきたい。

『クリムゾンの迷宮』
この作品を一言で表すと、「巨大迷宮での死のサバイバルゲーム」である。
主人公・藤木芳彦(ふじき よしひこ)はある日、全く見覚えのない場所で目を覚ます。そこには、あたり一面に広がる深紅に染まった謎の大地と、見知らぬ人たちが立っていた。手元に置いてあった携帯用ゲーム機の電源をおもむろに入れると、こんなメッセージが表示される。
「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された。」
ここから参加者9人の血で血を洗う、ゼロサムゲームが始まるのだった。
これまでの日本ホラー界にはなかった新しいジャンルになっており、背後から静かに迫りくるような恐怖は、貴志祐介の真骨頂だと言える。個人的には、今回紹介した中でも真っ先に読んでほしい作品だ。
『青の炎』
#二宮和也主演映画の原作
平穏な日々を過ごす高校生・櫛森秀一(くしもり しゅういち)にはある悩みがあった。それは、居候の曾根という男が家族に対して横暴な振る舞いをしていることだ。
日々の憎悪が積み重なった秀一は、とうとう曾根を殺すことを決意する。覚悟を決めた秀一が完全犯罪を考え、遂行する過程を描いた物語。
秀一の人一倍の家族愛が引き起こしていく事件。殺人を犯した後の恐怖感や罪悪感の心理描写が非常に引き込まれる作品である。
監督・蜷川幸雄/主演・二宮和也で実写映画化されているので、読了後にあわせてチェックしてほしい。
『十三番目の人格ISORA』
#第3回日本ホラー小説大賞佳作 #木村佳乃主演映画の原作
阪神・淡路大震災を題材にしたホラー小説。
主人公は、人の心を読むことができる加茂由香里(かも ゆかり)。彼女は阪神・淡路大震災のボランティアに参加する中で、12人の人格を持つ千尋(ちひろ)という少女と出会う。
いくつかの人格と会話することで打ち解けていた由香里だが、ふとした時、13番目の人格が誕生してしまう。彼女の名前は「ISOLA」。ここから、凶暴な性格を持つ「ISOLA」を中心として不可解な事件が起き始める…。
多重人格と怨霊をブレンドさせた、見たことのない作品である。物語終盤、「ISOLA」の意味を知ったときの驚きは今でも鮮明に思い出せるほどだ。
一度読み出せば、ページをめくる手が止まらなくなるだろう。
『黒い家』
#第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞 #内野聖陽主演映画の原作
保険会社に務める若月慎二のもとにある日、菰田重徳(こもだ しげのり)という人物から「家に来てくれ」と電話がかかってくる。
家に入ると若槻は、首を吊って死んでいる重徳の子供を発見し驚愕。そんな若槻に対して重徳は声を荒げて、死亡保険金を請求するのであった。
明らかな異変を感じた若槻は事件について独自に調査を始める。これから人間の皮を被った悪魔に命を狙われることになるとも知らずに…。
読者を恐怖のどん底に突き落とすサスペンスホラー。
心霊現象の恐怖とは違った、「人間の欲望」という底が見えない恐怖が、物語の終始に付きまとう。
『鍵のかかった部屋』
#大野智主演ドラマの原作
警備会社に勤める・榎本(えのもと)が、密室事件をことごとく解決していくという物語。
榎本と弁護士の純子の掛け合いが読んでいてとてもおもしろい。他にも個性的なキャラクターが登場し、物語を盛り上げてくれる。ホラーが多い貴志祐介の作品の中では、肩の力を抜いて気軽に読める作品だ。
大野智主演で月9ドラマ化しており、その誰しもが面白いと感じるコミカルな描写から、数ある貴志祐介作品の中でも最も認知度のあるものだろう。
『天使の囀り』
主人公・北島早苗の恋人である高梨が、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加するところから物語は始まる。
極度の死恐怖症(タナトフォビア)であったはずの高梨がアマゾンから帰ってくると、人格が変わったかのように「死」に魅了され、自らがそれを望むように突然自殺してしまう。さらには他の参加者たちも、恐怖の対象であったものが突然として美しく感じるようになり、異常な方法で次々と自殺していくのであった…。
一体、アマゾンで何が起こったのか。また、高梨が言い残した「天使の囀りが聞こえる」とは何を意味しているのか。それらを追求していくストーリー。
映画を見ているような不思議な感覚になり、特に後半はページをめくる手が止まらない。少しグロテスクな描写もあるが、ぜひ読んでみてほしい。



『極悪鳥になる夢を見る』
貴志祐介の「作品に対するこだわり」や「作品へのスタンス・プロセス」が綴られているエッセイ集。ファンには絶対に読んでいただきたい作品だ。
ところどころギャグ要素のようなものもあり、最後まで読者を飽きさせない。個人的には、阪神タイガースへの情熱が凄まじく、とても印象に残っている。
これを読むと、貴志祐介の作品を再読したくなること間違いなし!
『雀蜂』
小説家の安斎智哉は、妻と一緒にある山荘に泊まっていた。朝、ワインを飲んで眠ってしまった安斎が目を覚ますと妻はおらず、代わりに大量の雀蜂が突然襲い掛かってくる。
実は安斎は3年前に一度、雀蜂に刺されており、次刺されると命にかかわると医師から告げられていた。ここから雀蜂と安斎の、薄氷の綱渡りの攻防が始まる!
そして、妻はいったいどこに消えたのか。また、何が目的なのか。
数々の伏線が散りばめられており、特にラストのどんでん返しは誰も予測できないものになっている。
おわりに
貴志祐介のおすすめ10作品を紹介した。
「恐怖」と「推理」を見事に融合させた貴志祐介の作品は、怪談とは違った人間の心が起こすからこその恐怖があり、他にはない唯一無二の感情に襲われる。
ここでおすすめした作品は数ある作品の中の一部であり、ほかにも魅力にあふれる作品はまだまだある。気になるものがあれば、ぜひ手に取っていただきたい。
きっと、貴志祐介の魅力に取りつかれ、他の作品にも興味が出てくるはずだ。
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