芥川賞作家・今村夏子。淡々とした文章の中で徐々に浮かび上がる、不穏な空気や歪な狂気が特徴的。しかし、決して重すぎずある種の滑稽さがあるのも魅力の1つです。
今回は読書好きの方18名に、Twitter上で今村夏子おすすめの1冊を選んでいただきました。その結果をランキング形式でご紹介します。
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・星の子
・むらさきのスカートの女
1位:むらさきのスカートの女
まさみ
主人公の「わたし」は、身近でよく見かけるむらさきのスカートをはいた女が気になっています。それが高じて彼女の観察が日課になり、遂には同じ職場で働き出すように誘導を図るのですが……。
むらさきのスカートの女に異様な執着を見せる主人公の言動が、次第に常軌を逸していくのが見所。全編ブラックユーモアに溢れており、話が進めば進むほど、むらさきのスカートの女をストーキングする「わたし」の方こそおかしいのではと思えて居心地悪くなります。とはいえシリアス一辺倒ではなく、くすっと笑える表現が散りばめられているのにも注目してください。
不条理ホラーなのか日常コメディなのか、読み終わる頃にはどのジャンルにも定義できない奇妙な世界観の虜になっていることでしょう。
Ema
芥川賞受賞作ということで読んだのですが、なかなかの鳥肌モノ。表紙から既に不気味さが出ていたのですが、読んでいるとその表紙にも納得。むらさきのスカート女よりも、実は黄色いカーディガンみたいな女の人って割といるんですよね……。
kasumi-sou
女を影から覗き見する女。読みながらゾクゾクしてページをめくる手が止められなかった。イッキ読み。覗き見している女の正体がだんだんわかってきて、ますますゾクっとした。やみつきになる一冊。
受賞 | 第161回芥川賞受賞 |
ページ数 | 160ページ |

2位:あひる
家であひるを飼っている老夫婦と娘の3人家族。あひる見たさに通い詰める近所の小学生たちを、老夫婦は喜んでもてなすのですが……。
息子夫婦と離れて暮らす寂しさを、あひる目当てに押しかけるよその子どもたちで埋めていた老夫婦。老夫婦の善意に付け込み、好き勝手な遊び場として入り浸る小学生。本当に欲しいものが手に入らないから代替品で妥協しているような、互いのエゴに起因する食い違いがなんとも気持ち悪く、ざらざらした不快感が残りました。
他の収録作にもそこはかとない不穏さが漂い、わざと鈍いをふりをして相手を欺く人間の狡さや、あえて弱みを見せて縛り付けるしたたかさにぞくっとします。ホラー小説を読み飽きた人におすすめしたい、不穏文学の真骨頂です。
ゆっくり音もなく浸食されていく不穏な空気。くせになります。
実家暮らし経験が長い方、生活に閉塞感を覚えている方、田舎で不思議な体験をしたことがある方、ひとつでも当てはまったそこのあなた!どうか、騙されたと思って『あひる』を読んでください(゚∈゚*)( ゚∋゚)。
受賞 | 第5回河合隼雄物語賞受賞 |
ページ数 | 176ページ |



3位:こちらあみ子
あみ子は変わり者の女の子。優しい家族や憧れの同級生に囲まれ幸せに暮らしていましたが、相手の立場を忖度しない言動は、否応なく周囲の人々を苛立たせ……。
発達障害の少女の成長を本人の視点で描いた小説。周りの人たちを想っているのにそれが伝わらず裏目に出る繰り返しで、持て余されるジレンマに胸が痛みます。どうして上手くいかないのか、自分の何が悪いのか?同級生の暴言を真面目に受け止め傷付き、家でも学校でも身の処し方がわからず途方に暮れるあみ子の所在なさが誰にでも届く言葉ですくいあげられ、終始心がざわざわしました。
ハッピーエンドとは言い難い話ですが、不器用にしか生きられないあみ子のこれからを見守りたくなります。
空気を読んで周りに合わせたり、要領よく生きるのが正しいみたいな社会の中で、この本に登場する人たちは異質に思える。あきらかに変、じゃなくて、心がざわっとする違和感を言葉にする作家さんの凄み!
受賞 | 第26回太宰治賞受賞/第24回三島由紀夫賞受賞 |
ページ数 | 237ページ |
4位:星の子
主人公の林ちひろは中学3年生。かつて病弱だった娘を救いたい一心で両親は新興宗教に傾倒し、ちひろの完治後も家族ぐるみで信仰しています。しかし思春期にさしかかったちひろは外の世界とズレを感じ始め……。
宗教二世の視点から親子や友人との関わり方を描いた小説。ちひろが置かれた環境は悲惨かもしれませんが、それを決めるのは本人。安易に宗教を否定せず、どうしようもない不幸に直面した人々の救済装置として機能する側面も取り上げることで、問題の難しさが伝わります。ちひろが宗教二世であることを知りながら偏見を持たず接する友人たちや、実直な伯父一家の存在に希望を感じました。
解釈が分かれるラストは、ぜひご自身の目で確かめてください。
誰かを、何かを、たとえそれが自分の大切な人でも迷わず信じ続けることはとても難しいことだと思いました。
受賞 | 第39回野間文芸新人賞受賞/2018年本屋大賞7位 |
ページ数 | 256ページ |



5位:父と私の桜尾通り商店街
桜尾通り商店街のはずれでパン屋を営む父と、娘の「私」。うまく立ち回ることができず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい…。平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ―見慣れた風景が変容する、書き下ろしを含む全六編。
(Amazon商品説明より)
今村夏子ファンなら必読の6作品収録短編集。
表題作が好き。
とにかく「私」の行動から目が離せなくて最後まで引っ張られる。
いつの間にか応援してる。
最後は涙。
たくさんの名作の中でも特に好きです。
読み終わった後に、不思議な感覚になります 笑
ページ数 | 240ページ |
6位:木になった亜沙
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって、若者と出会った―。奇妙で不穏でうつくしい、三つの愛の物語。(Amazon商品説明より)
子供の頃からなぜか物が当たらない、ドッジボールも当たらないと不思議な能力を持つ七未。
最後はちょっと意味が分からなく何度か読み直したけど何故かよかったねと感動しました!
ページ数 | 155ページ |
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
自分の大好きな1冊、懐かしい1冊、再読してみたくなった1冊、気になってはいたが読めていない1冊などはランクインしていましたか?
この記事が新たな作品との出会いのきっかけになればと願っております。
他にもたくさんの作家さんのまとめ記事があるので、ぜひ覗いてみてください!
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