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伊藤計劃おすすめ小説5選【夭折の作家が描いた、個々人の戦争物語】

夭折の作家、伊藤計劃(いとう けいかく)氏。

2007年、『虐殺器官』で鮮烈なデビューを果たした彼は、2009年に肺癌のため逝去した。

しかし、僅か2年ばかりの活動期間中に彼が遺した作品は、日本のSF小説に大きな影響を与え続けている。

彼の名を冠した『伊藤計劃トリビュート』という作品集や、〈伊藤計劃以後〉という言葉が生まれる程だ。

そんな彼の作品の特徴。

それは、人の心の在り方を解体せんとする鋭い視点と、今の社会の姿を見据える姿勢。

そして、それらを表現するための繊細で情緒的な文章と、一人称視点で描かれるハードな世界観。

本記事では、そんな伊藤計劃氏のおすすめ作品を5つ選び、紹介する。

『虐殺器官』

骨太かつ情緒的な、伊藤計劃氏のデビュー作

伊藤計劃氏の、小説家としての初の作品。

9.11を境に大きな転機を迎えた、〈テロとの戦い〉を描いている。

徹底した管理体制により、国内からテロを一掃した先進諸国と、虐殺の吹き荒れる後進諸国の対比が、ウェットな文章で綴られている。

語り部である米軍大尉、クラヴィス・シェパードは、虐殺が起こる直前の国家に頻繁に姿を見せる謎の男、ジョン・ポールを追う。

そしてその過程で、人体に宿る虐殺を司る器官の秘密に迫っていくこととなる。

シェパード大尉の一人称による、情緒的かつ冷静極まる視点で物語が描かれることにより、徹底した個人という存在が、戦争や社会といった巨大なものと対峙する様子を、臨場感たっぷりに描いている。

映画や文学に明るく、ことばにフェティッシュがある、とされたシェパード大尉が語る世界は、非常に繊細。

過度な誇張や脚色のない、彼の目から見たままの世界が語られており、それが悲惨さを際立たせる。

淡々と、しかし繊細に語られる死の連続は、繊細さ故の力強さで、戦争の陰惨さと悲劇性を存分に物語る。

また、死に触れ続けた彼が折に触れて見る、死者の行進の夢も印象深い。

彼が触れてきた、或いは自ら命を奪ってきた、若しくは眼前で命を落とした死人達が、何処かを目指して延々と行進を続ける光景は、陰気な美しさに溢れ、暗澹たる気分になりながらも読む手を止めることを許さない。

そして、今作のもう1人の重要人物である謎の男、ジョン・ポール。

虐殺が起こる国家で度々姿を現し、颯爽と姿を消す彼が、虐殺の器官と、それを呼び覚ます虐殺の文法について語る様子は、読む者の心の中に漠然とした不安を呼び起こす。

読み進めるうちに、読者自身も自らの脳や意識といったものに対して、信頼が置けなくなってくる筈。

読む者の心を掻き乱しながら、しかし読む手を止めることができなくなる伊藤計劃氏の繊細な文章と骨太の物語は、著者の文章や言語に対する真摯な姿勢が窺える。

是非とも、一言一句読み飛ばすことなく満喫してほしい。

『虐殺器官』原作小説あらすじと感想【人体に潜む虐殺を司る器官とは?】『虐殺器官』原作小説あらすじと感想【人体に潜む虐殺を司る器官とは?】

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『虐殺器官』の基本情報
出版社 早川書房
出版日 2014/08/08
ジャンル SF
ページ数 428ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍、オーディオブック

『ハーモニー』

『虐殺器官』に連なる、ユートピアとディストピアの境界線

伊藤計劃氏の第2作にして、最後の長編小説。

大災禍(ザ・メイルストロム)と呼ばれる大混乱の時代の後に築かれた、健康と優しさを最優先とした高度医療社会。

そこで起こる前人未到のテロを通し、人の意識の、心の在り方を問う1作。

ユートピアとディストピアの、その境界線に位置するかの様な社会は、まるで健康と幸福が義務化されているかのよう。

人々の他者に対する〈優しさ〉が満ち溢れており、誰もが夢見るような理想の社会である筈なのに、この理想郷は決して魅力的な社会としては描かれていない。

他者への優しさは、何となく押し付けがましく、それらが折り重なることで社会には様々な自粛が溢れ返る社会。

極め付けに、カフェインの持つ中毒性すらも〈健康を害するもの〉とされて珈琲を飲むことさえままならない窮屈さが,繊細かつシニカル文章に綴られている。

ユートピアを目指した末に人類が辿り着いた地獄郷の有様をまざまざと見せつけられる。

そして、そんな世界を憎む少女・霧慧トァン

同じく世界に違和感を感じる2人の少女、御冷ミァハや零下堂キアンと共に自死を選んだ彼女は、その13年後、WHO螺旋監察事務局の上級監察官として生府の監視が行き届いていない紛争地帯を渡り歩く。

戦場を喫煙所代わりに煙草を嗜み、酒を飲み、社会へのちょっとした反逆を繰り返す彼女が直面するのは,空前絶後のテロ行為。

13年前に共に死を選び、そして生き残ったかつての同志・キアンは、目の前でナイフを自らの首に突き刺して死んだ。

それと同時に世界中で、首吊りや飛び降りから、キアンのように手近な物で自らの肉体を傷つけるといった様々な手法で、大量の人間が自殺を遂げる。

世界を覆う暗雲の中にトァンが見たのは、かつて3人の中で唯一死んでいった少女、ミァハの影。

ウェアラブル機器を通して自殺者の目線で描かれる死の様子には、錯乱した様子など一切なく、まるですぐに死ぬ為の最適解を導き出したかのよう。

それが淡々と語られることで事態の異様さが際立っており、悍ましさが際立つ。

気分が悪くなるような優しさと、それと相反するかのような残酷さの対比が丁寧に描かれた作品だ。

また、謎に包まれたテロ組織の目的や手段、事件を追う中で現れる次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループの存在。

そして事件とミァハの関わりなどを、世界を飛び回りながら探るスペクタクル作品としての側面も強く、読み応えは抜群。

更に、事件の捜査を通してヒトの意識の在り方とその正体を模索する様子などは、前述した『虐殺器官』から連なるテーマが描かれており、やはり自らの意識への不安を掻き立てる。

繊細かつ巧緻な美術品の様でありながら、人の心を強く揺さぶる力強さを持った作品だ。
『ハーモニー』原作小説あらすじと感想【優しさに殺される世界に少女たちは抗う】『ハーモニー』原作小説あらすじと感想【優しさに殺される世界に少女たちは抗う】

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『ハーモニー』の基本情報
出版社 早川書房
出版日 2014/08/08
ジャンル SF
ページ数 398ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍、オーディオブック

『屍者の帝国』

グレート・ゲームを軸とした、壮大なスチーム・パンク

こちらは、近未来の戦争を描いた『虐殺器官』や息苦しいユートピア/ディストピアを描いた『ハーモニー』とは打って変わり、中央アジアを巡って繰り広げられたイギリスとロシアの情報戦、グレート・ゲームを背景に据えた、スチーム・パンク小説。

伊藤計劃氏が生前に書いていた30枚程度の原稿を、円城塔氏が引き継いで完成させた、2人の作家の合作となっている。

その為、純粋に伊藤計劃氏の作品として紹介は出来ないのだが、氏の存在あってこそ成立した作品であること、そして氏の作品を語る点で外せない一作であることから、本記事で紹介させて頂く。

舞台は、ヴィクター・フランケンシュタインが生み出した屍者蘇生技術が発達し、世界中に普及した19世紀末。

軍医を目指していた医学生のワトソンが、大学教授であるセワードや、その恩師ヴァン・ヘルシングからのスカウトを受け、英国の諜報組織であるウォルシンガム機関の諜報員となるところから、物語は始まる。

ウォルシンガム機関の指揮官・Mから下された指令は、アフガニスタンへの潜入。

そして、最新の屍者兵士部隊を引き連れてロシア軍を脱走し、屍者の王国を築いた男・カラマーゾフの動向調査であった。

記録専用屍者・フライデーと、ロシアから派遣された諜報員でありカラマーゾフの友人でもあったニコライ・クラソートキンを引き連れ、アフガニスタンの奥地へと潜入していくワトソン。

たどり着いた屍者の王国で、カラマーゾフから渾身の依頼を受けたワトソンは、フランケンシュタインが残したヴィクターの手記と最初の屍者、ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける。

更にアメリカの民間軍事会社・ピンカートンが参入したことで状況は混迷を極め、やがて彼の旅は英国とロシアが中央アジアの覇権を奪い合うグレート・ゲームの、重要な鍵となっていく。

特筆すべきは、今作の登場人物と舞台設定。

あり得たかもしれない仮想の歴史を記した歴史改変作品であり、同時に実在・架空を問わず様々な有名キャラクターが登場するパスティーシュ小説となっている。

主人公のジョン・H・ワトソンは、世界で最も有名な探偵、シャーロック・ホームズの助手として知られているし、彼の旅の同行者であるクラソートキンや屍者の王国の王であるカラマーゾフは、フョードル・ドストエフスキーの長編『カラマーゾフの兄弟』の登場キャラクター。

また、ウォルシンガム機関に属する諜報員、ヴァン・ヘルシングといえば、ブラム・ストーカーの著作『ドラキュラ』において、吸血鬼と対決を繰り広げるアムステルダム大学の名誉教授のことを指す。

更に映画『007』で、主人公ジェームズ・ボンドに指示を出す指揮官・Mまで登場するほか、日本からは将校・山澤静吾や政治家・寺島宗則といった実在の人物が登場するなど、古今東西の架空のキャラクターや実在の人物が入り乱れており、知っているキャラクターや人物が登場すれば、ニヤリと出来る作風だ。

また、壮大な物語は読み応えが抜群。

屍者復活技術の発達という非現実的な要素と、実在の情報戦、グレート・ゲームを巧みに掛け合わせた今作は、エンターテイメントとしても高い完成度を誇っている。

英露米、それぞれの思惑が交錯する中で、旅を続けるワトソンの道中には、様々な謎と困難が待ち受けており、決して読者を飽きさせることはない。

そして何より、物語のテーマである人の魂の在り処。

屍者復活技術や、それに用いられる僅か21グラムの霊素の存在。

意識がないはずの屍者の、生きているかの様な振る舞い。

それらとの触れ合い、そしてその謎を追う過程で、ワトソン達は人の魂に纏わる領域に、足を踏み入れていく。

『虐殺器官』や『ハーモニー』が、人の意識や心に踏み込んでいったことを考えると、作品を引き継いだ円城塔氏の、伊藤計劃氏の作品への理解度が垣間見える。

また今作の最後には、円城塔氏が伊藤計劃氏について語るあとがきも掲載されている。

同時期に、全く同じ経緯から作家としてデビューした2人の作家は、互いに親交を結び、共作も行うようになっており、どのような想いで作品を引き継いだのかを綴ったあとがきは、両作家のファンには必読のものと言えるだろう。
『屍者の帝国』原作小説あらすじと感想【古今東西の有名キャラクターが織りなす、屍者蘇生とグレート・ゲームの物語】『屍者の帝国』原作小説あらすじと感想【古今東西の有名キャラクターが織りなす、屍者蘇生とグレート・ゲームの物語】

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『屍者の帝国』の基本情報
出版社 河出書房新社
出版日 2014/11/06
ジャンル SF
ページ数 525ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

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